婚約破棄
社交界で高嶺の花の語源とまで言われ令嬢の中の令嬢とまで言われたアイナ・クラフト公爵令嬢、見た目はもちろん中身全てにおいて非の打ち所がないとその眼差しは男女問わず全て視線をさらうと…
しかし、本日は美しさではない形で視線をさらうこととなる。
希望の春学園での生活も一年を迎え二回生として新入生を迎えた10日目。
私はなぜ婚約者であるはずの王子に罵声を浴びさせれれながら、お昼の食堂でたくさんの生徒達の前で婚約破棄を告げられ上に手袋を投げつけられたのであろうか、意味が分からない。
「ケリー王子、私はこのような事をされる覚えはありませんが理由を聞いてもよろしいでしょうか?」
「理由だと!貴様がリリアナを陰でいじめていたのは調べがついているのだ。」
再度告げよう、意味が分からない。
この色ボケ王子は自分が惚れた女を私がいじめたと本気で思っているらしい、自意識過剰にも程がある。
大切な事なので二度言おう、自意識過剰にも程がある。
確かに彼女は本当にいじめられた私の取り巻き以外者たちに、私は私のご機嫌を取りたい取り巻きがリリアナにちょっかいを出そうとした者たちに対して「自分の品位を落とすようなことはやめなさい」と諌めたことはあれどもいじめに加担したことはない。
恐らくこの色ボケ王子は私が嫉妬に狂って彼女をいじめたと解釈してこのような行為に及んだのだろう、気分はさながら姫を助ける騎士のつもりで。
そうして本当に彼女をいじめていた者たちは自分に酔っている色ボケ王子にこれ良しとしてあることないことを吹き込み私に罪を被せたのだろう。
王国の貴族には三つの派閥がある
一つ目は穏健派私の父を中心とする開拓政策を推し進める派閥。
二つ目は強硬派オルロン公爵家を中心とする戦争して他国の領地資産を奪って豊かに成ろうとする派閥。
三つ目は中立派通称こと流れ主義と言われるどっちに付かず。リリアナ男爵令嬢の家はここに属している。
今からちょうど一年前入学と同時にケリー王子と私アイナ・ソレーユは婚約を結んだ。その結果王妃と成るために学ばなければならないことが多いし婚約をしたという事実が油断を誘っていた。
気付けばケリー王子取り巻き達は全員が強硬派に属する貴族や商人の子供達で埋め尽くされていた。
なるほどコイツらのいれ知恵か、私は小さく決めた理詰めでフルボッコにしようと。
「ケリー王子、私がいつリリアナ様をいじめたと?そして内容は?」
「貴様は彼女の教科書を破り罵詈雑言を浴びせ果には外を歩くリリアナに二階の教室から水をかかる全て調べがついている。」
「だから、いつですか?」
「放課後とかだろう?」
なんで疑問形ないんだよ色ボケ、私は好機キターーーと全力で揚げ足を取りにかかる。
「王子、私は領地経営や王家の歴史について学ぶために放課後は終了の鐘がなると直ぐに帰宅しております、それに私に家庭教師を付けたのは前国王の妃であるアルテナ様つまり貴方の御婆様ですが?」
「だから…そう!お前じゃなくて他のものにさせたにだろが!」
王子は名案が思い付いたように勢い良く言う。
「でしたら私に指示されてやった者たちの名前を挙げていただけますでしょうか?」
「それは出来ない、公爵令嬢の貴様に指示されたら断ることが出来なかった者たちだ!そんなかわいそうな者たちをこの場で吊るし上げるとは…」
絶賛今吊るし上げられてますけど私は…などと思いつつも
「ならば私は失礼します。この件に関しましては学園と王家に報告の上再度調査していただきます。」
退出しようとした私に王子は焦りながら言う。
「わかった。名前は言うコラーダ海運商会のピニャ・コラーダ令嬢とマリナ・リータ男爵令嬢だ」
私は海戦と成ればコラーダ海運商会は大儲けだなどと思いつつ
「私はそのお二人と交流はありませんが?お二人ならよくマリー・ヒーズ伯爵令嬢とよく御一緒されてるところみますが…」
生徒の視線が食堂の端にいるマリー伯爵令嬢に集まる。彼女の家は強硬派のナンバー3と言える家系だ。
「わた…わ、た、私では御座いません。リリアナ様いじめていたのはアイナ様でしょーが!」
その焦りすぎてしどろもどろな態度に食堂の全員が、あ、コイツやったなって顔になる。よし後は取り敢えずマリーは無視してこっちだ。
「ケリー王子、穏健派の父を持つ私と強硬派の父を持つマリー様たちお三方は立場が違います。娘同士でさえ付き合いは制限とまでは言わずとも必要以上の接触は避ける物なのですよ。王子もそれは理解していると思いますが?」
ここで私は気付いた、この色ボケ王子は自分がリリアナ男爵令嬢と結婚するために私を悪者に仕立て挙げたのだと。
詰まる所、リリアナをいじめていた婚約者を民衆の前で成敗して正義の味方になり勢いでリリアナ婚約までこぎつけると。
大方取り巻き達にこれを利用してとでもそそのかされたのだろう、だから真犯人を分かった上で愛する女と婚約するために乗ったのだ。後から起こる悲劇を考えずにこのバカ王子は…
仮にもし成功して結婚なんかしたら愛するリリアナ様をいじめていた強硬派に大きな貸しを作って戦争一直線だ、そうなれば多くの国民の命が散る事になる。なに考えてんだ色ボケ!
全て察した私は更なる怒りがこみ上げてきた。王子に向かっていう。
「王子は私達の婚約にどんな意味があるかお分かりになりってまして?」
「親同士の決めた婚約以上の意味はない!」
「確かに貴方がただの貴族ならそうでしょが、残念ながらあなたは王位継承権第一位の王子なのですよ。国王陛下が認めた婚約なのです。いくら王子とは言え勝手に同行できる話ではないのです。
私もあなたがリリアナ様想っているのは分かってました。だから、形式的に私が王妃と成ったのちにはあなた方がリリアナ様第二王妃として迎えても文句はありませんのに…」
私の言葉に黙ってばつの悪そうな顔した王子の表情がみるみる怒りの表情に変わる。
「だから、お前と結婚したくないんだ!お前は俺を愛していない貴族としてお前が正しいのは分かる。
いかにお前が高嶺の花で令嬢の中の令嬢であろうとそれは貴族としての魅力であって人としての魅力じゃない!」
私はまるで、刃が胸に刺さった様な衝撃を受けた。
正直この王子のやり方にはは腹が立ってしょうがないが、私自身彼を一切見ていなかった。
厳格で尊敬する父は常に私の指針だった、貴族たしなみ領主としての立ち振舞い、そんな父に認められたくて更なる地位を求めケリー王子との婚約を了承した経緯がある…
気付けは自分がケリー王子ではなく王妃の地位だけを見ていたことに気づく、もちろん穏健派の王妃になって国民の生活を豊かにしたいと思ってはいたが、私は私自身の功績為に人を愛することを捨てていた事に…
内心色ボケと見下しいたはずケリー王子の方が純粋に人を愛しているその真実は何より私には堪えた。
自分が急に矮小な人間に思えて私は彼の投げた手袋を拾うことを決意する。
穏健派の為に全て罪と罰は私の命と共に持って行こう国民の為に…