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真実とこれからと

 人が住める場所ではなかったこの地に国を造った初代国王と、それを支えた妻たる女神。


 何故そんな恵まれない土地に国を作らざるおえなかったのか?

 それは神々に追放されたから。だから自分達で住む場所を作らざる終えなかった。

 だが、彼らだけでは国を作るなど出来得ない。それを補ったのが、創世神である姉神だった。

 一重に妹のため、妹が愛した男のため……。


 蓋を開けてみれば何とも苦い歴史だった。

 魔力が強いのは元々その男が強いのもあるが、女神の力もあったのだろう。

 力が弱くなってしまった時、補うようにまた女神の生まれ変わり(運命の番)と巡り逢う様になっているのも理由があるのだろうか?

 母はそこまでは知らないようだった。


 リュートとカムイ、思い掛けず国の秘密に触れたサーキュスは暫し立ち尽くした。

 王族であるリュートにもそこまでの歴史は語られていなかった。多分、国王になって初めて口伝えされるものなのだろう。


「参りましたね……」


 開口一番口を開いたのはカムイだ。

 サーキュスは未だ黙ったまま。魔剣になった母は役目を終えたとばかりにスウウウっと消えていってしまった。


「桜を好きなのは、運命の番なだけだからじゃない。俺自身が今の彼女を愛しているんだ」


 カムイやサーキュスに言っている様で、自分の決意を口にしたようなリュートに返答したのは以外にもサーキュスだった。


「今更ですが、王女の件はこの国にとってマイナスにしかなりませんでしたね」

「こんなことなら突っぱねて送り返していれば良かった、何て後の祭りですね」

「俺がちゃんと伝えていれば良かったんだ。俺は第2妃を持つ気がなかったから、伝えることで嫌な気持ちにさせたくなかった、何て俺の驕りでしかなかったな……」

「全くですわね!」


 3人は声がしたドアの方を一斉に振り返った。

 そこにいたのはいつの間にかドアを開けて仁王立ちしているカムイの妻事、ユリアだった。


「全く大の男が3人も雁首揃えてこんな場所でイジイジと情けない」


 ユリアは美人だ。

 その美人の剣幕に、初めてまともに見たサーキュスは呆然とし、カムイは何やら薄暗い恋心を宿した瞳で見つめ、リュートは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「ユリアお前、いつの間に……というか何時から?」

「気付かない貴方が間抜けなのです。おば様はお気づきな上、私にも聴こえる様にしてくださってましたよ?それに気配を消すくらい我が家では子どもでもできます」


 いくら衝撃的な話を聞いていたとはいえ、またユリアが達人だったとはいえ、リュートが気配を感じ取れない、なんてことは今までになかったのだ。

 十中八九母が手助けしたのだろう。


「そうだとして、立ち聞き何て淑女のすることじゃないだろう?」

「負け犬の遠吠えは結構、今は桜様です。既に愚弟を向かわせていますが、私は桜様が戻りたくないと言ったら、それでも良いと思っています」


「なっ⁉」

「なっ、ではありません。そんな役にも立たない思いやりもどき何て丸めてグシャグシャにした上でゴミ箱にでも捨てておしまいなさい!」


『役にも立たない…』ブツブツ言いながらも返す言葉がないリュートはユリアをまともに見れなかった。


「故郷を出て、戻ることも出来ず1人。それがどれ程心細いか、言われなければ解らないの⁉」


 段々と言葉遣いが崩れていくユリアに、カムイだけが微笑ましい者を見る目で見つめている。

 そんな中でもドアを閉めて声が漏れない様にするところは流石だった。

 まあ、事前に人払いはしてあったので聞かれる心配は無いのだが、念の為というやつだ。


「そんな事は解ってるさ!」

「分かってないから言ってるのよ!桜はこの国では貴方だけが頼りなのよ⁉貴方が一番味方でなくてどうするの⁉」

「桜が一番大事に決まってるだろう‼」

「それを私に言ってどうするのよ‼桜にちゃんと伝えて態度で見せたかって言ってるの!何も言わなくてもわかってくれる何て絵空事も良いとこだわ‼」

「政治絡みで即断出来ない事がある……」

「何のために私の夫やそこの男がいるのよ‼ぶん投げなさいよ!何とか出来ない程無能じゃない事くらい知っているでしょ⁉」


 リュートの言い訳をユリアが言葉を被せる様に潰してくる。

 いっそ清々しい程の言葉に、リュートは頭を鈍器で殴られる位の衝撃を受けた。

 何でも一人でどうにかしようと考えていた。

 完全な味方などいないこの王宮で生き残るには、そうするしか仕方がなかったからだ。

 でも、今は違う。

 頼って良いのだとユリアは言う。

 カムイはリュートが気付くまで、ギリギリ迄黙っているつもりだったのだろうが、ユリアと同じ気持ちなのはよく判る。


「俺………桜を迎えに行って良いか?」


 カムイとサーキュスに向かって問われた言葉に二人は大きく頷いた。

 今王宮を離れるのは立場的には痛手でしか無い。

 でも、きっと二人はは、いや三人は乗り切ってくれると今なら信じられた。

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