拗れた感情の行先は?part2
王宮の自身の執務室に急ぎ戻ったリュートとカムイ、そしてサーキュスは今後の対策を講じるべく集まっていた。 正しこの集まりには王女の姿はない。王太子妃宮よりサーキュスによって準備されていた離宮に自ら進んで入り大人しくしている。
「私の留守の間の対応感謝する」
リュートが声をかけると、サーキュスは軍人らしく機敏な動きで頭を下げた。
「私の勝手な判断で王女の滞在場所を変更致しましたが宜しかったでしょうか?」
「カムイが、そなたに権限を与えたのであろう?そのカムイに権限を与えたのは私だ。問題ない。それに設定した場所も最善だ。良く動いてくれた」
「はっ‼」
今度はガバっと頭を下げたサーキュス。嬉しさを隠す行為だとリュートもカムイも見抜いており、二人は目配せし、サーキュスを登用したことはやはり間違いではなかったと、暖かい目で彼を見ていた。
元々サーキュスはその整った見た目通り、人形の様に感情を余り見せることはないのだが、それは育った環境がそうさせただけであり、本当の彼はとても熱い男だった。 自身の行動が正当に評価され、指示される内容も国民の為となるならばサーキュス自身こんなに嬉しい事はない。
「しかし、良くあの場所に設定しましたね。 まさか、元第一側妃の宮殿とは。 これでリュート様が、王女を后として招く意思がないと周囲に知らしめる事ができる」
感心したように、自身の身内を褒める様な表情で、カムイは王女が滞在してい場所の報告書を見ていた。
そうなのだ。 サーキュスが王女の滞在場所に設定した場所は、今は居ない元第一側妃の宮殿だった。 その場所は、あの女狐の住居だった事もあり警備面は万全で、内部は豪華絢爛。本来なら大事な客を持て成すのにこれ程良い場所はないのだが、何せ王太子であるリュートを殺害しようと企てていた元第一側妃の住処だ。だからこそ、妃を迎えるのには誰もその場所を設定しなかった。 再利用方法を模索していたところだった。その場所に王女を滞在させる事でリュートは王女を娶るつもりはないという意思表示にもなるし、リュート以外にとってはただの城の一部なので国賓の顔を潰す事もない。
勿論、カムイもその案を考えなかった訳では無い。
ただ、リュートの一番の側近として内部の声をあからさまに潰す事も出来なかったのだ。 桜が王太子妃である事実は変わらない上で、利益ある隣国との繋がりも強固できる今回の王女との婚姻は力のある貴族の支持が強かった。 未だに一枚岩ではない国内のパワーバランスを考えると無下にも出来ず、使用していない王太子妃宮殿を使用するという案を受け入れざるおえなかった。
一度は案を受け入れた事で、顔を潰す事はない上で、桜以外と婚姻する意思はないと周囲に知らしめる事も出来た。 しかも元第一側妃派のサーキュスが行ったと云うことにも意味がある。
まさに絶妙な匙加減だったのだ。
反面、サーキュス自身の一部貴族達からの風当たりは強くなってしまったが、サーキュスはそれすらも問題としていなかった。 主のために挽いては大事な国民の為に為るならば自分の悪評等何も問題ない。
「それで?…これからどうするつもりだ?」
カムイが臣下としてではなく幼馴染みとしてリュートに訪ねた。
「ああ、母様と対話して見ようと思う。マルタ殿が示してくれたヒントを一つも取り零す事は出来ないからな」
「そうだな。 なら俺達は席を外そう」
そう言ってサーキュスの方に視線を移すとサーキュスは無言で頷いた。 未だ詳しくサーキュスに説明されてはいなかったが、それがこの場での最善と心得ていたからだ。
「いや、この場に居てくれ」
「良いのか?」
「構わない。この場にいるのは俺の腹心だけだ、寧ろ聴いていて欲しい。 サーキュス」
「はっ‼」
急にリュートから話を振られたサーキュスだが、軍人らしく返答する。
「母上様が桜を通して俺に預けた魔剣は、どうやら母上様ご自身だった様でな。今回、知り合う事ができた魔女のマルタ殿に母上と対話する事が出来るようにして頂いたんだ」
「え?」
サーキュスが間抜けな声を出してしまっても仕方がない事だろう。 驚いた顔のサーキュスは珍しい。
いくら魔法が存在する世界だとはいえ異例なことなのだから。だが、逸早く感情を整えるとサーキュスは尚も困惑して訪ねた。 何故ならトップシークレットに近い案件だ。カムイは兎も角サーキュスが聞いて良い内容じゃない。
「私がここにいても宜しいのですか?」
「ここにいてくれ。 お前も俺の大事な友だ」
「‼」
今回、桜捜索の糸口を作っただけでなく滞在場所変更も大きな手柄だ。何より実直な人柄をリュートは好ましく思っていた。
それを聴いていたカムイには感慨深いものがあった。 何故なら、リュートはその過酷な生い立ちから人を信用せず、常に一線を引いていたから。
これも桜の恩恵だと、カムイは今度こそ桜の事は最優先事項として行動しようと心に決めた。




