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王子様?は誰

 ◇◇◇


 まさか自分のいた地球から、異世界に来るとこんなにも大変だとは思わなかった。

 いや、異世界に自分が来ることになるなんて思っても見なかった、が正しいのだけれど……。

 それにしても、私も思いきったものだ。こんな半信半疑な事を決断する何て…。違うな…そうゃじゃない。

 私は、100%リュート君を信じてた。ただ、私の予想が追い付いていなかっただけで。

 あれから一週間も寝たきりになるとは、予測なんて出来ないだろう。

 私がベットとお友達になっている間も、毎日リュート君は時間を見付けては会いに来てくれた。

 それだけで、ここに来た不安が無くなるのだから不思議だ。

 この日も来てくれていて……。


「忙しいのに………無理すること無いからね?」


 私は、このままじゃ、リュート君の方が倒れちゃうと思った。

 こんなに小さくても仕事量は、大人より多いなんて、この国の労働環境は間違っている。

 リュート君がとても忙しい事は、侍女のサラさんからも聞いていた。初めて聞いたときは、嘘だと思ったほどだ。

 でも、王子さまだから仕方がないのだろうか?

 だから、余計に無理はしてほしくなかった。

 私にまで、気を使って欲しくなかった。


「いえ、僕が来たくて来てるんです。……桜さんを充電出来なきゃ、頑張れません」


 何て事を言うのだ、この子は。本当に心臓に悪い。小さくても、なまじ顔が恐ろしく綺麗だから様になっている。

 子供だと解っていても、ドキドキしてしまうではないか。


 そんな私も、起きれるようになってからは、先生についてこの国の歴学ぶ日々を送っていた。

 先生はカムイさんの幼なじみで、女性の学者さん。名前はユリアさんといって、とてもグラマラスなクール系美人。

 髪を短めなショートカットにしているから、余計にクーリッシュさが引き立っているのかもしれない。


 そう、この日も私は先生と二人で勉強をしていた。


「桜さん…この国の創設は覚えましたね?」

「はい、元々この土地は草ひとつ生えない、生き物の住めない土地だった所に、この国を創設した王が、自身の魔力で生き物が住める土地へと変えました」

「そうですね。……でも、いくら力が強大な王でも魔力は無限ではない。……身を呈して人々を守る王に女神は祝福を与えた、とここまでは教えましたね」

「はい」


「あの………ユリアさん」

「どうしました?」

「その、呼び方何ですけど……」


 う~、言いづらい。図々しいと思われるだろうか?


「すみませんでした。……桜様とお呼びするべきでした」


 は?何でそうなるのか!?…何故様をつけようなんて考え方になるのかが解らない。もしかして、異世界から来た人間にはすべからく様をつける、とか?


「違います!!…寧ろ逆です!!…私はユリアさんに"桜"と呼んで欲しいんです!!」


 あまりの驚きに、つい演説口調で捲し立ててしまった。

 どうしよう、ユリアさん、引いてないかな?


「……解りました、では桜とお呼びします」

「敬語も嫌です。……我儘かも知れないけど、私はユリアさんには普通に接して貰いたいです」


 ユリアさんは驚いた様な顔をしていた。

 だってこんなに美人だし、どうみても自分より大人な女性だし、で敬語は嫌だった。何より、一線引かれているようで寂しいと言うのが正しい。

 はっきり言って、私はこの女性が大好きである。それはもう、一目惚れの域だ。


「解ったわ、じゃあ桜。私の事もユリアで良いわ。それでウィンね?……それが条件よ」

「う~、ユリアさんはさん付けで呼びたい!!…………でも、それが条件なら、解りました」

「ふふ、桜は可愛いわね~」


 頬杖を付く姿が様になってます。

 ユリアさん頬杖をついて、こちらを面白そうに見ている。ちょっと恥ずかしいけど、美人に見詰められる何て役得である。

 だから、我慢我慢。

 それにしても、この国には美人しかいないのだろうか?

 リュート君といい、カムイさんといい、このユリアだ。

 そして、お見舞いに来てくれた、あの男性。

 群を抜いて、断トツの一位だろう。

 芸能人でもいないレベルだった。……また会えるかな?


「ユリアが美人です」


 随分お馬鹿な発言をしてしまった。


「有り難う、桜にそう言ってもらえると嬉しいわ。……私は桜が一押しね」

「?…一押し、ですか?」


 はて、何の事だろう?


「何でも無いのよ、こちらの事」『…ったく、リュートの奴、だから余計な嘘を付かなきゃ良かったのよ』


「え?」

「桜は可愛い!って思って」


 何かを言っていた様だったけど、聞き取れなかった。

 まあ、ユリアが気にしていないのだから、良いだろう。


 何故、こんなにユリアが好きなのか?

 この世界が心地好いのか?…その理由を考えてみた。

 きっと、向こうでは甘えられる人がいなかったからだろう。

 物心ついた時には下に弟がいたし、家族が亡くなってからは、気が張っていて、感情に余裕がなかった。

 もしかしなくても、この世界に来て体調を崩したのは張り付けた緊張の糸が切れたからかも知れない。

 ここは、良くも悪くも今までの自分が関係ない世界だから。

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