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桜捜索part6[リュート編]

 そもそもリュートの魔剣は、リュートの母親が自身の来世への転生と引換に女神に頼みリュートを護るべく剣に転生した姿だ。

 リュートの母親は魔剣の守護精霊に転生した、だからこそ誰よりもリュートの身を護る。

 伝説上魔剣は主と意思の疎通ができるが、リュートに魔剣が渡った経緯が経緯なだけに、今はまだ意思の疎通は行われてはいなかった。そんな事をしなくとも精神が通じ合っている事も理由なのだが………。


 いくら魔剣がリュートに伝えようとしてもリュートの側がまだ、それを受け入れるだけの準備が整ってはいなかった。

 精一杯リュートに伝えようとしても、妨害が入り異音としてしかリュートには聞こえない。

 最もそれはリュートにだけしか伝わらないので、目の前の王女には聞こえていなかった。

 リュートは苛立ちを抑え、優先事項を冷静に選択していく。たとえ国益を損なったとしても、今大事なのは彼女じゃない。その辺は、馬鹿な女を政略的に必要だったからとはいえ娶った父が対処すればいい。

 あの女が招いた災だ。あの女の一族に尻拭いさせればいい。

 リュートが尻拭いするのはお門違いだ。


「回りくどいのは性に合わない。それに貴女にも失礼だから、ハッキリ伝えさせて頂くが、迷惑だ」


 その言葉を聞いた王女は酷く傷付いた表情を一瞬見せたが、直ぐにそれを隠したのは流石だ。


「リュート様がわたくしを不快に思っているのは存じております」


 真っ直ぐにリュートを見つめる眼差しは美しく正に王女に相応しい表情だろう。万人が見ればその容姿に強く惹かれて焦がれたとしての不思議はない。

 だが、リュートにとっては綺麗な花の一つでしか無い。

 目の前の花は唯一無二ではないのだ。

 桜という花を見つけてしまったリュートにとっては、何の意味もなかった。


「不快ついでに言っておくが、貴女に名前を呼ぶ事を許した覚えもない」


「……王太子殿下、桜様を捜索するのを手伝わせてください。お願い致します!」


 桜が行方不明なのは一部の人間を除き箝口令をひいている。この王女が知っている事自体がおかしな事だった。

 王女に情報を渡している者がいる。

 それもこの国の人間が関与していると見て先ず間違いないのだ。

 王太子としてなら、王女を泳がせて黒幕を吐かせるべきなのだろうが、どうしてもリュートは今は桜を探したかった。


「断る……」


 最後は吐き捨てる様に王女を見ることなく、リュートは馬屋迄向かった。

 それでこの件は片付いた筈だったのだ。それがまさか王女がリュートの後を追って来れるとは思わなかった。

 それもリュートに気付かれる事なくついてきた。

 男の鍛えられた速さに遅れる事なく、気配に鋭いリュートに気付かれる事なく。


「王太子様」


 自身にかけられた声の主に、リュートは驚きで鍛え上げられた仮面を剥がしそうになってしまった。


「そなたは……何者何だ?……」


 リュートのこの問い掛けには王女は口を噤んで答えない。

 魔法が使えるとは聞いてない。使えるはずがない、とは言わないが、今回の王女の情報には無かったことだ。

 情報が改ざんされた?

 誰の手によって?

 これで置いていく事は出来なくなった。王女が魔法を使えるかも知れないという事実がある以上、対応出来るのはリュートと国王のみ。

 今回、国王は王女の応対に一切関わらないスタンスを貫いている。初日の挨拶も簡易な物になったくらいだ。


 そうすることで国内外に今回の王女の訪問が国王の意志に反すると、自身の対応を持って伝えているのだ。

 その国王には王女の対応を頼めない。

 頼むわけにはいかない。


「静止を聞かずに強引に来た、貴女がどうなろうと私が優先するのは私の妃のみ。理解したなら勝手にしろ」


 リュートは自身の愛馬に跨るとカムイが消えた食堂に急いだ。

 王女が馬に乗りリュートの後を遅れることなくついてこれる事実にも、もう驚かない。

 彼女は魔法使いかも知れない以上、何があっても不思議では無いからだ。


 リュートがカムイが消えた食堂に到着して馬から下りると、その場に待機していた騎士がすかさず手綱を受け取り手短に報告してくる。


「状況は?」


「カムイ様がこの食堂に入り1時間後に我々が中に入った時には、既にカムイ様の姿はなく、又店の住人の姿もありませんでした」


 カムイの指示でカムイが入店し、1時間して戻らなければ中に潜入する部隊と、リュートに知らせる部隊に別れて行動する様に指示されていた。

 中を確認した後はリュートが到着するまで現場をそのまま維持するように指示されたのだ。

 裏口も念の為に騎士が配置されていた。何処からも逃げられるはずなど無いのに、神隠しにあったかの様にカムイが消えてしまった。

 だとするのであれば、それは人外の力が働いたからに他ならない。

 リュートは桜が神殿で消えてしまった時の事を思い出していた。

 どうすることも出来ずに目の前で見失ってしまった大切な存在。カムイがこの食堂に来た事を考えると桜と関連している事は間違いないのだろう。

 残してくれた手掛かりと可能性を見す見す無くす訳にはいかなかった。

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