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 こんなにも驚く事ばかりな人生を歩む人間は何れくらいいるだろう?

 そんな事を考えてしまった。

 ええ、解ってる。現実逃避だって事くらい。


「………えっと、聞き間違いかな?」


 そもそも私、何も聞いてないし。

 今のそれも私に言った言葉じゃないし。


「聞き間違いじゃないです。…俺の決意を先ずは、桜さんの一番大切な人達に伝えたかったんです」


「待って、だってリュート君はまだ子供で……」

「人を想うのに年齢は関係ありません」

「だって出会ってまだ一週間もたってない」

「時間も関係ありません」


 何だろう?段々追い込まれている気がしてきた。

 だって、何で私なの?

 そもそも、リュート君が何者なのかすら解っていないのに。

 話をするとしたら、先ずはそこからじゃないの?

 あれ?私間違ってる?

 段々自分の考えていることが解らなくなってきた。

 しかも、お墓でプロポーズってどうなの?

 そもそも、これはプロポーズなのかすら解らなくなっている。


「どうして?………ここでそんな事を急に言うの?」

「急に……そうですね。俺は桜さんに出会う前から決めていた事だけど、桜さんにとっては急だったかも知れませんね」

「出逢う前って……?どういう意味なの?」


 真っ直ぐに此方を見詰めるリュート君は真剣そのものだった。


「勿論、順を追って説明しますが。すみません、時間が無いんです。…先ずは俺と一緒に来ては頂けませんか?……貴女の事は必ず守ると誓うから」


 見た目は小学生の低学年なのに。

 不思議に子供に見えなかった。

 時間が無いって……それでも来てほしいって、普通なら絶対に頷かないけれど、真剣なその目が切実さを物語っているようで直ぐには否定出来ないでいた。


「これだけは教えて?…時間が無いってどういう事なの?」


 あまり働いていたい頭で、それでも聞きたいことを模索する。


「俺の暮らしている国は……今建国以来の危機に陥っています。桜さんの力がどうしても必要何です」


 何で私なの?とか、私の力が必要ってどういう事なの?とか、色々な事が頭を過ったけど、ただ純粋に力になりたかった。

 目の前で困っている人がいる。自分に出来ることなら、助けてあげなさい。そう親に教育をされてきた。

 その親が眠る場所で、その教えを破る事も憚られた。

 それに、もう私には待っていてくれる人もいないのだから、一時リュート君を助ける事に何の不都合が有るだろうか?

 欲しい物も、帰りたい場所も何も無いのだから。


「いいよ。…私でよければ力に」


 衝動的だと言われればそれまでかも知れないけれど、でも何かを決めるときは勢いがないと決められないものかも知れない。


 私がそう伝えた時の嬉しそうなリュート君の顔を私は生涯忘れる事は無いだろう。


「有難う御座います!!!…では行きましょう!」


「えっ?…」


 リュート君は私の手を強く握ると、行きましょうと言ったのだ。

 どうやって?…そんな疑問が頭を過るまも無いまま、私とリュート君は眩い光に包まれてしまった。

 その強い衝撃で一週間近くも意識が戻らなくなるなんて思っても見なかった。

 次に目を覚ました私は、見知らぬ天井をボーッとする頭で眺めていた。


「私……どうして?」


 私は、目覚めたばかりで訳が解らなっていた。

 心なしか頭も重い。

 上しか見ていなかった目を視線だけ動かしみる。

 人の気配がする。


「リュート………君?」


 一緒にいたのがリュート君だけだった筈で、だから側にいてくれるならリュート君だと思い込んでいた。

 桜の現状把握率は低く、解っている事は少ない。

 今はまだ、自分がどんな場所に寝ているのか何て目覚めたばかりで解らないが、寝心地の良いベットだと言うこと位は解った。


「桜さん、目覚めたんだね!」


 嬉しそうに、それでいて心底ほっとした様な表情の美形が目の前にいるではないか。

 あまりにも驚くと何も言えなくなるらしい。


「桜さん、どうしたの?…具合が悪い?」


「貴方は誰ですか?…あの………リュート君は?……」

「えっ?…………」


 目の前の美しい男性は、口に手を当てて考えんでしまった。


「あの………?」


「ああ、ごめんね。リュートは今席を外していて……ずっと側に居たんだけれど、用事が出来てしまってね。用事が済んだら必ず貴女の元に戻ると思うよ。…だから、もう少し眠って、体が回復したら一緒に食事をとるといい」


 そう言うと、頭を優しく撫でてくれた。

 あまりにも気持ち良くて、私はまた眠りについてしまった。


 ◇◇◇

 桜に美形と呼ばれた男はそっと眠りについた桜の唇にキスをすると、その姿は成人した男性から、幼い子供へと変わっていった。

 現れたのは、リュート。

 実は、この部屋にいたのは、桜と大人になったリュートの他にもう一人いたのだが、桜は気付くことが出来なかった。


「リュート様。もしかしなくても、このお嬢様をまさか何も伝えずにかっさらって来たのですか?」


 側に控えていたのは、執事服をきた大人なリュートよりも少し年上位の年齢に見える青年だ。


「うるさい……」

「知ってます?…人拐いは犯罪ですよ」

「黙れと言っている」


「何やってんですか貴方は………運命の番を探して連れ帰ってくるんじゃ無かったんですか?」

「だから連れ帰って来ただろうが……」


 イライラしながら、頭に手をやりくしゃくしと頭をかいた。


「何で本当の姿を、その運命の乙女は知らないんですか?…まさか、……!!!………幼児趣味?」


 ハッとした様な表情で驚きをわざと表現する。


「桜は変態じゃない!!」


 その言動を許せなかったのはリュート。


「リュート様?」


 本当の事を早く言えや?と言わんばかりの表情で、執事服の男、カムイは主を問い詰めた。

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