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宮殿での生活part2

 リュートとの押し問答の末どうなったかというと、何故か前に抱っこされながらお風呂に入るという恥ずかしいスタイルでの入浴だった。


「これ…………絶対に一人で入った方が疲れがとれるやつじゃない?」


「ん~?…そんな事はないよ」


 そう答える間もリュートは桜を自身の膝の上に乗せて、柔らかな胸の下辺りを抱き締めて首筋に唇を押し当てている。

 何とも気持ち良さそうなご機嫌な声だ。


「………ゆっくりして欲しいのに…」


 『はあ……』と溜め息をつき首を下に落としながら桜が呟いた。


「俺は独りより、桜が側にいた方が安らぐんだ。…桜がいないのなら息をするのも面倒になる」


 急に真面目な声になったかと言うと怖い発言をしてくるリュート。誰よりも孤独で……辛い幼少期を過ごした彼は活きることに執着していない様に見えた。

 死に急いでいる…そんな表現が似合ってしまうから………冗談に聞こえなくて困る。


「息はしてください……後ご飯も睡眠も取らないと嫌いになります」


 願いを込めて抱き締められた手を自分の手で覆いながら桜は言った。

 もう、一人で私のいる世界に来た貴方じゃないから。私が側にいるから、一人ではないのだと、長生きして欲しいのだと伝われば良い。


「ん~、桜に嫌われるのは嫌だから、言われた事はなるべくするよ」


 また先程の何とも気の抜けた声音にちょっと苛立ちを覚える。此方がどれだけ真剣に言っているのかまるで伝わっていない。


「仕事よりも最優先事項です!」


 だからついつい大声になる。


「俺の最優先事項は桜です」


 ああ言えばこう言う。

 でも取り敢えず言うことを聞こうとしているから黙っている事にした。


「あ~桜の肌は気持ちいい」


「それ、マリアにも言われたけど、別に普通でしょ?」


 背中越しにでも、リュートがピクッと反応したのが解った。


「は!?……俺のなのにアイツ、何桜を堪能してんだよ」


 怒ってる……………。


「アイツって言わない。…それにマリアは肌の手入れをしてくれていただけです。リュート見たいにエッチな意味合いではないでしょう?!」


「いいや、絶対にアイツは俺と同じ人種だ。…くそ、女だからと安心していたが思わぬ伏兵がいたものだ」


 ぶつぶつと文句を言うものだから、リュートの腕の中で、桜はくるっと身体を回転させるとその唇を己の唇で塞いだ。


 私だってこれくらいは出来るんだから!!

 唇をゆっくりと離しちょっとドヤ顔でリュートを見ると、真っ赤な顔をしたリュートが口を片手で覆っていた。

 どうやら攻められる事には弱いみたいだ。


「俺の奥さんは、いつの間にそんな小悪魔みたいな魅惑的な攻めが出来るようになったの?」


 リュートは、真っ赤な顔を素早く戻すと、挑戦的な顔をして桜の顔を、先程まで自身の口を覆っていた手で掴んだ。

 二人の距離にしてゼロ距離メートル迄近付くと噛み付く様な口付けを落とした。


「これは桜が悪いからね。…夫をこんな場所で煽る何て、困った奥さんだ」


 その一見責める様な口調は何故か嬉しそうに聞こえてくる。

 だが、妙な言い掛かりはやめて欲しい。

 元はと言えば、リュートが悪いのではないか?と桜は思うのだが、どちらもどちらだ。

 その後、リュートが納得するまで風呂場で貪り尽くされた桜が、納得し解放された頃には意識を失っていた。気が付いたのはベットの上で、ネグリジェを着せられて横たわった状態だった。

 誰が着せてくれたのか?何て考えない様にしよう。


「リュート?…」


「ああ、桜良かった。………気が付いたんだね。今レモン水を持ってくるよ」


 リュートはテーブルに準備されていた水差しからコップにレモン水を注ぐと桜の背中に手を回して起こし、水を飲む手助けをしてくれた。


「ごめんね………侍医から、お湯辺りだと聞いたから身体を少し冷ましていたんだ」


 目線を移すと扇がベットの上に置かれていた。

 きっとこれで扇いでくれていたのだろう。


「もう………お風呂場では嫌です」


「うっ!!………加減します」


 やらないとは、消して言わないところを正直と思うかどうかだ。

 それでもそんなところを可愛いと思ってしまうのだから、きっと桜も重症なのだろう。



「まだ水を飲むかい?」


「有り難う、もう大丈夫だよ」


 その桜の言葉で、リュートはコップをサイドテーブルに置いて、桜の後ろに自分の身体を滑り込ませて寄り掛からせてくれた。

 柔らかくて上等な座椅子に座っているみたいだなと桜は自身の考えに笑ってしまった。

 きっと彼をこんな風に思う人間はこの国で私だけであろう事実も、二人の距離の近さの成せる技に嬉しく思ってしまうのだから、困ったものだ。


 桜の身体を思ってリュートはこの夜、泉の様に沸き上がってくる欲望を抑え込んで腕枕をするに留めて眠りに付いた。まさか、その我慢の反動で翌朝から求められるとは桜は思っても見なかった。



 ◇◇◇


 朝リュートを見送ると、妙に疲れて重い身体を何とか言い聞かせて、着替えた。

 着替えを手伝ってくれたマリアに、身体中の痕を見られて恥ずかしい思いをしたのは言うまでもない。

 何故かマリアは私の身体の痕を見て(傍目に見ては解らない程の表現だが)不機嫌になっていた。


 そのマリアが『あのバカ王子……桜様の綺麗な肌に下品な痕なんて残すなんて!!……痕を着けないのがマナーだろうが!?』と声に出さず文句を言っていた事は誰も知らない。

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