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秋人とリュートpart2

「桜さん、この人達は誰です?」


 ずっと隣で大人しくしていたリュート君が私の手を握って訪ねてくる。


「ああ、男の人の方は幼馴染なの。もう一人は、ご免なさい、私にも解らないわ」


 苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

 十中八九彼女だろうが、紹介された訳じゃ無いから、断定するのも、リュート君に説明するのも違うだろうから。


「桜、このガキは誰だよ!?」


 遅れてリュート君の存在に気付いた秋人は、子供相手に私を責める。

 隣なりの彼女は、心なしかリュート君の顔を見て、顔が赤くなっていた。


「あんたがリュート君をガキって、さっきから突っ掛ってきて、何なのよ!?」


 何で秋人がリュート君にもキレているのか解らないが、許せる事じゃない。


「…僕の名前は、リュート・ディアス・アストリア」


 丁寧にお辞儀をしながらリュート君の方が名乗りを上げた。

 これではどちらが年上か解らない。

 後から解った事だが、リュートの世界で同姓に正式名を名乗るときは命を賭けた宣戦布告何だそうだ。

 本当に心臓に悪い。


「何で銀髪のガキが桜といるんだよ?」


「訳あって一緒に暮らしているからですよ」


 あくまでも冷静にリュート君は対応している。

 多分それが余計秋人には面白くないのだろう。


「何だよ!?…訳って!?」


「秘密です」


 文末にハートマークでもついていそうな位、ニッコリとリュート君は言い放った。

 お前に教えるつもりはない、案にそう言っている様にも聞こえるから不思議だ。

 でも確かに訳ありだからリュート君が秘密にしたいと言うなら私も言うわけには行かない。


「桜、秘密って何だよ!?」

「秘密だから、秘密です」

 どう答えて良いのか解らなかったからリュート君の言葉を復唱してしまった。

 秋人には少し悪い気もしたけど、しょうがないよね。秋人に集中していたら、リュート君は私の手を強く握ってきた。


「桜さん、僕もう一ヶ所行きたい場所が有るのですが?」


「ああ、朝も言っていたものね。…じゃあもう行こうか?」


 ああ、そう言えば約束してたよね。

 じゃあまたねと言って歩きだした私の肩を秋人は掴んできた。


「待てよ!!」


「何するのよ!?」


 と言う私の言葉より早くリュート君は秋人の腕をジャンプして掴むとそのままの勢いで捻り上げた。


「痛ってー!!!…何すんだよ、このくそガキ!!!!」


「勝手に桜さんを掴んだ罰です」


 しれっとそんな事を言い、掴んでいた手を離した。

 リュートはボソッと、『俺のなのに…』と言った言葉は誰にも聞こえる事はなかった、まあ聞こえない様に呟いたのだが。


「何でお前にそんな事を言われなきゃいけないんだよ!?」


「秋人、いい加減にしなよ!何だってそんなにリュート君に絡むのよ?…あんたそんなに短気じゃ無かったでしょ?」


「桜さん、自分の事は棚に上げて、自分の者だと思っていた桜さんの隣に違う存在がいるのが許せないのでしょう」


「なっ!!!」


 リュート君の言葉で、秋人は口を押さえて黙ってしまった。


「秋人、何で黙っているのよ?」


 今まで大人しく静観していた彼女は、秋人の袖を引っ張って咎める。

 何だか、私はやるせなくなってしまった。

 だって、向こうは彼女がいるし、私は小さな子供を連れているだけだしで、何でそんなにこんな事になっているのか解らなくなってしまったから。

 まるで修羅場の様ではないか。

 あの時、何で私はあんな思いをしてここを離れようとしたのだろう?

 秋人の隣に居るのは、あの時の彼女じゃ無いしで、もう訳が解らなくなっていた。


「桜さん、行きましょう?」


 考えることを放棄した私は、優しく手を引いてくれるリュート君にしたがって私は歩きだした。


「桜、待って!!…」


 尚も追いかけてこようとする秋人に振り返りながら、リュートは

 冷静に言い放つ。


「大事な者はいつも大事にしなくちゃ駄目ですよ?…当然な物も、当然な様に常にそこに有るわけでは無いんですから」


 秋人はリュート君の言葉で今度こそ押し黙ってしまった。

 本当に子供らしさがない子供だ。

 何より、リュート君の言葉が私にも強く突き刺さった。

 一番大事だった家族を自分の我が儘で亡くした私は、大事に出来ていたのだろうか?


「……桜さんはちゃんと大事に出来てましたよ。あいつとは違う」


「!!!」


 全てを解っていての言葉では無いだろうが、桜の心を少しだけ軽くしてくれた。


 ◇◇◇


 リュート君が来たいと言ったのは何と、意外すぎる場所、私の家族のお墓だった。

 お墓の前に来ると、リュート君は神妙な顔つきで手を合わせてくれた。

 道がてらリュート君から、こちらの形式を聞かれたのだ。

『自分のところは、利き手を胸に当てて頭を下げるのだけれど、桜さんのところはどうするんですか?』と。


 彼は何を思い手を合わせてくれたのだろうか?

 私はまだ、この中に家族がいるなんて信じる事が出来ないでいるのに。

 私が黙ってリュート君を見ていると彼は突然。


「必ず幸せに、命つきるまで大切にすると誰よりも貴殿方に誓います。桜さんを俺にください……」


「な!?」


 これではまるで、結婚の許可を両親に取りに来てる見たいじゃないか!!





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