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ご機嫌な理由は…

 部屋から出てきたリュートは桜の頬を片手で撫でながら、もう片方の手は桜の腰に回してきた。

 周りからすればきっと、抱き締められている様に見える事だろう。

 まるで桜以外が見えていないような行動にしか見えないのは、消して自意識過剰では無いと思う。


「おはよう桜……ごめんね、側にいてあげられなくて。大丈夫だった?」


 その間も桜の頬を撫で続けた。

 何が?……と聞くほど鈍いのは自覚しているけど、察しの悪い方じゃない。

 大丈夫だった?の前には、きっと身体は、が付くのだろうな、等と考えて……その後、思考を停止する様に『今日はいい天気だな』とか考えたのは、きっと現実逃避したかったから。

 だって、ここにはカムイさんとユリアがいる。恥ずかしいったらありはしない。

 其におはようと言える時間帯でも無かった。


 恥ずかしい…逃げたい………でも何処に?


「おはようございます?……」


 だから、言葉遣いが変になっても仕方がないじゃないか。


「どうしたの?……」


 言動が可笑しくなっている桜を案じる様に、リュートは高い身長を屈めて、顔を近付けてくる。

 絶対に解っててやってるでしょう!と言いたいが墓穴を掘りそうだから、桜は黙った。

 助け船を出してくれたのは、ユリア。


「桜が可哀想だから、せめて執務室に入れてからにしてあげたらどうなの?」


 呆れた様なユリア。

 その態度は王太子に対してするものではなく、幼なじみの行動を諌める物だった。


「そうですよ可哀想に、桜様顔が真っ赤じゃないですか。貴方と違って桜様は純真なのですから考えた方が良いですよ?……逃げられて泣きを見たくなければね」


 どうしよう、居たたまれない。

 止めを差す様にリュートが追い討ちを掛けてくる。


「カムイ………俺が桜を逃がすとでも思っているのか?」


「まあ、逃がさないでしょうね………でも嫌われたくは無いでしょう?」


 リュートは想像したのだろう、何時にも増して血色が良かった顔色を青白く変化させた。


「………もしも桜に嫌われたら、軽く死ねるな………」


 リュートは腰に回した手に力を入れてきた。

 そのまま促されるままに、リュートの執務室に四人は入ってドアを閉めた。


 部屋には大きな黒塗りの執務机や、難しそうな本がびっしり詰まった天井迄の本棚がまるで壁の様に設置されている。

 部屋の中央付近には三人掛けのソファーが二組テーブルを挟む様に設置されており、左右には一人掛け様のソファーがあるから、計四組のソファーが執務室にはあるのだが、当然の様に三人掛けに桜とリュート、ユリアとカムイがペアで座った。


 それも寄り添う様にだ。

 いや、嫌じゃないけど、でも………。


「……リュート、ここに座るの?」


 恥ずかしくて、少し離れたくて、……嬉しいのに可愛げの無いことをつい、言ってしまった。

 でもそんな事は、リュートは良く解っていて気を悪くした様子はない事に、桜はホッと安堵した。


 膝と膝がくっつく程に近くに座ったリュートは、膝に置いた桜の手を自らの手で重ねると、


「そちら(一人掛け)のソファーに座って桜を膝の上に乗せる方が俺の好みだけどね、まあ今は二人きりじゃ無いからしょうがないよね……」


 色気駄々漏れでにっこりと微笑まれる。

 いや、そんな事を言いたいんでも聞きたいんでも無いんだけどね。

 成る程、リュートにしては我慢している方だと……そう言いたい訳か。

 傍目には、バカップルだけどね。

 美形はどんな事をしていても絵になるから悔しい。

 カッコ悪くさせたい!!、と言う変な感情迄考えてしまう。其にしても、リュートはこんなキャラだったか?

 聞いた話では、知的でクールで氷の様な冷たさの男では無かったのか?


「いい加減にして頂けます?……話が進まない。イチャつきたいのなら、話が終わってからにしてくださいよ。1~2時間位なら時間があるでしょう、あなた恐ろしいスピードで仕事を片付けていたから」


 その間ユリアは何故か嬉しそうにその後様子を見ていた。


「しょうがないな…」


 リュートは握っていた桜の手を離すとあろうことか肩に回してきた。

 ホントに解っているのだろうか?

 だが、カムイはそれを華麗にスルーして話を進めた。


「ご理解頂けて何よりです。………それで?お二人は、

 番になったと思って相違無いですね?」


「ああ……間違いない。儀式は滞りなく済ませた」


「儀式って?」


 口を挟んじゃダメだと思ったけど、聴かずにはいられなかった。

 だって昨日の事でしょう?……何もされた覚えはない。


「ん?……ああ、桜には後でちゃんと教えるからね」


 リュートは肩に回した手を桜の頭に移動させ自身の顔と桜の顔を近付けると、チュッとおでこにキスをしてまた手を肩に戻した。

 ホントにいちいち甘い。


「宜しい……先程は身体の安定は確認しましたが、魔力は?」


「自分でも、驚く程に力が溢れて来ている。今ならどんな敵にも勝てそうだ」


「何よりです。………では婚約式や成婚式の準備も同時に進めるとして…国王様には、いつお伝えに?」


「もうご存知だと思うが、今日中に二人でお伝えするから、ご都合を確認して欲しい」


「今日中…………まあ良いでしょう。確認の件はお任せください。………ですがお早めにお願いしますよ?」


 1~2時間余裕があるんじゃ無かったのか?

 桜はそんなことを考えていたが、敢えて突っ込む事をしなかった。

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