第二ステージ
朝起きると下腹部の違和感が昨日の出来事が嘘じゃ無かったと教えてくれる。
夢オチに出来るほど記憶が曖昧では無いのだけれど、一部思考が停止していた事もあり、曖昧な部分があるのも本当だ。
桜はベットの中で横たわりながら昨夜の出来事を思い出していた。
一枚ずつ丁寧に服を脱がされた………。
その動作は優しくて、初めのうち指先は震えていた。その全てが、自分が大切にされているのだと言葉よりも教えてくれた。
勿論初めは強い異物感は否めなかったけど、考えていた様な痛みは無かった。絶対に痛いと思っていたのに、嬉しさと気持ち良さしか感じない、そんな行為だった。
リュートの顔が泣きそうで、嬉しそうで、この自分の一大決心が正しかったのだと心から思えた。
恥ずかしさでそれどころでは無かったけれど、終始動作を止めて、身体中見詰められてもいたと思う。
とにかく苦痛は一つも無かった。
これで自分は一生この地でリュートの側で暮らして行くんだと、心が納得した。
もう後戻りは出来ない。
桜は眩しい陽射しで目覚めると自身のお腹を押さえてた後、両手で顔を押さえてのたうち回った。
俗に言う、思い出し笑い…………出はなくて盛大な照れの波が押し寄せては引いていく、そして押し寄せて来ていた。
こうしてみると、リュートが仕事に行っていてくれて良かった。
どんな顔をして良いのか解らない。
桜はこういった事に、とても不馴れだった。
勿論処女だったし、男女間のお付き合いというのもしたことがない。
まあ、半分以上が秋人の性なのだが、桜自身、そういったことは、将来を誓える程好きな人とじゃないと、という気持ちが大きかったのだ。
リュートで後悔はない。リュートが良かった。
でも、人生とは解らない物だと思う。
一生誰も好きに成れず、生きる希望もなく、独りで死んでいく物だと思っていたのに。
自分が幸せにしてあげたいと思える相手に、もう一度出逢えるとは考えても見なかった。
目覚めてすぐサイドテーブルに、綺麗な字で労りの言葉と心配、今日位側に居られない事の嘆き、ゆっくり寝ていて欲しいとの、甘ったらしいラブレターを頂いていたのだ。
散々照れた後、桜は思考が回復した。
「……リュートの身体は、大丈夫かな?」
運命の番についての事は一通り習ったと思うし、王様にしか受け継がれていない伝承もリュートに教えてもらった。
運命の番と(恥ずかしくて私だなんて自分の頭の中でも変換できない)交われば呪い?、なのかな?は解けて、リュートの身体の呪縛は解き放たれる筈………なのだが、勿論桜の身体に変化はないし、当のリュートもここにはいないから、効果の程が解らない。
リュートに逢いに行ってみよう。
桜は思い立ち、ベットから起き上がった。
……立ち上がれたのだ。意図も簡単に。
他人は解らないが、結構激しく抱かれたと思う。
一回では済まなかったし………。
(まあ、リュートは物足りなさそうだったけれど)
桜は元気だった。……それどころか、素晴らしく爽快だ。寧ろ、元気を貰った感じ?だった。
生まれ変わった感じ?
普通は解らないが(二度め)こんな時は立てなくなる物じゃないの?
桜は不思議に思ったが、身体が辛いなら問題だが、元気なのだから、良いだろうと考え直した。
どうも、ポジティブになったと思う。
くよくよしててもしょうがないと言うか、成るようになるさ、というか、そんな感じだ。
桜は取り敢えず服を着替える事にした。
恥ずかしいのは、裸のままで寝ていた訳ではなく、身体が綺麗にされていて、寝間着迄着せられていた事実。
絶対にリュートが着せてくれたのだろうと思うと有り難いし、嬉しいのだけれど居たたまれない。
いや、リュート以外に触られるのは、それもそれで嫌なのだけれど。
着替え終わって扉を開けて部屋を出た。
リュートの執務室の前には、丁度、ユリアとカムイさんが立って話をしている。
「おはようございます!!」
何やら恥ずかしいが、それを払拭する様に元気よく挨拶した。
「おや、桜様。お早う御座います、お元気そうで何よりです。伝承は本当なのですね」
「?…」
意味ありげなカムイさんの言い回し。
「ちょっと、カムイ!…桜おはよう。……身体は大丈夫そうね」
「!!!!」
ユリアに迄言われて初めて桜は昨日の事を二人は言っているのかと解った。
「何で!!(知って!?)」
驚きすぎて最後は声にならなかった。
「ああ、桜様。……誤解の無いようにお伝えしておきますが、リュートは何も言っていませんよ?」
補足する様にユリアが続く。
「何も言っていないけれど、その元気で機嫌が頗る良いのよ。……其に顔色も……」
だから気付いたのだと言っていた。
「……伝承って何ですか?……其に何でカムイさんは敬語何です?」
「……桜様が正式に王太子妃になられたからですよ」
「?…」
桜にはカムイの言っている事が解らなかった。
その時執務室のドアが開き、リュートが廊下に出てきた。
「廊下でする話じゃ無いだろう?……せっかく桜が会いに来てくれたのだから、直ぐに入って来いよ」
リュートはカムイを窘めた後、桜の頬を撫でながら『おはよう桜』と声をかけてきた。
其れ丈ならまあ、撫でる以外は普通なのだが、違いはトロトロな程に表情と雰囲気がベタ甘なのだ。
確かにこれでは何があったのか解ってしまうのも無理はないと桜は実感した。




