第一側妃part2
ジン将軍とリュートの部隊は河口まで敵を追い込む事に成功していた。
逃げざるおえないように追い込んだのだから当然と言えば当然だが、桜が戻った事とリュートの意外な力と言うおまけがついた物だから、本来の予定より早く作戦が遂行してしまっているのが、凶とでるか、吉とでるか?は未だ解らない。
まあ、ジンの息子が率いる部隊には伝達してい為、大きな作戦変更には至っていないのだが……。
「……このまま行けば圧勝ですかな?」
ジンはリュートに近付くと馬ノ上から話しかけてきた。
「……そうだな」
敵を何故この加工口迄追い込んだか?
それは、この地は第一側妃派の貴族が治める土地であり、今まさにこの地に第一側妃が来ている為に他ならなかった。
事前に話し、王にもこの領土に来てもらえる様手配済みだ。
ジンの息子は王を守る護衛騎士の部隊長をしている。本来のこの戦に出陣した部隊ではないのだ。
本来なら、第一側妃と言えど、護衛騎士団長自ら護衛につき、あまつさえ一個騎士団が護衛に着くこと等有り得ない。
今回この作戦を考えるに辺り、国王が動いてくれたからに他ならなかった。
リュートはこの地形と第一側妃が今回この地に来ていた事を利用したのだ。
ただ殲滅するだけならこんな面倒な事はしない。……今回は第一側妃と言う膿を出す為に立てられた作戦だった。
「彼の女帝はボロを出しますかな…」
真っ直ぐ前を向いてジンは独り言を言っている様に呟く。
「……出させる様にするさ…何時までも好き勝手させはしない。……」
答えたのはリュートだ。
運河があるこの領地は王都からも近い、同じように国境からも近い。このまま行けば何れこの国にとって致命傷となるのは火を見るより明らかだった。
アキレス腱であるこの領地。
国の忠臣が治めていた筈だった……。息子の代に代替わりするまでは。今回この戦を裏から手引きしている事が表沙汰になれば、領地を没収し、家は取り潰しに出来る。第一側妃を潰せない迄も
そうすれば、この国での第一側妃の力を大きく削り取る事が出来る。……気掛かりなのは、弟達の後ろ楯が無くなる事だけだった。
兄妹は消して嫌いでも憎くもない。
潰したい訳じゃない。……でも、この国の王太子である以上国民の安全を脅かす様な行動は見過ごす訳にはいかなかった。
「敵は上手く第一側妃を頼ってくれればいいが……」
◇◇◇
ユリアと桜は別ルートから戦場と成りつつあるこの領地に向かっていた。
リュートとしてはジンの部隊と合流した後、護衛をつけて王太子宮に戻って欲しがっていたが、桜が頑として譲らなかった。
リュートとしても、力の源である桜が側にいてくれる事は実質的に有難い事でも有るし、何よりリュート自身が嬉しいので強くも出れない。なら、何より安全な王の側に居てくれるならと渋々許可を出したのだった。
ユリアが操る馬の背に乗せてもらうと領地に急いだ。
馬の背から見るこの街は白の石畳に白の屏、赤や青の屋根とドアだとても美しい。
港があるからか、普段は賑わっているのだろうと用意に想像も出来た。それに潮風が懐かしさを運んでくれる。
それが言い様のない緊張した雰囲気を出していた。
何故、この美しい街を戦場にしなければならないのか?
ユリアから今回の戦争を引き起こしたのがリュートの義理のお母様だと聞いた桜は人知れず怒りを覚えていた。
桜は未だ面と向かってあったことがないリュートの義理の母親が嫌いになってしまった。
桜は戦争が嫌いだ。だから、私利私欲の為に戦争を引き起こした義理の母親である第一側妃が許せなかった。
リュート自身が戦争を望んでない事は桜は痛いほど良く解っている。戦争を終わらせる為に戦わなければならないなんて、何て皮肉な事だろう。
元々真っ直ぐな気性の桜は自分が見て初めて判断する。
でも、未だあったことがない第一側妃だけは好きには慣れなかった。
桜は怒りを抑えるためにユリアの背中におでこをくっ付けていると、ふと目についた風景に違和感を覚えた。
「ユリア、有れって何かしら?」
「何がです?」
「あれよ、港に停まっている船、ちょっとおかしくない?」
桜は伝えた方向に目を向けたユリアは慌てた様に馬を止めた。
「あれは!!…」
「有れって何を積み込んでいるのかしら?」
何がおかしいかと言うと、皆戦争を感じとり避難している。
そう、誰もこの港にはいないのに、この非常事態に急いで積み込みをしている事がおかしい。
この港は、王都から近いためか、港にも検問がある。
それが非常事態のため閉じているのに出向の準備を慌ただしく行っている事がそもそも有り得ないのだ。
ユリアから聞いた桜は防止しようとユリアに提案した。
「………ですが…」
一番は桜を安全に送り届ける事が最重要だ。
なら、今は先を急いだ方がいい。
良いのだが、ユリアは決断を迫られていた。




