表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/103

初めての訪問と邪魔者達との演舞part3

「そこは偉いけど………」


「偉いんだ…………」


 と突っ込んできたのは、勿論カムイだ。


「でも、何で断りもせずにキスするかな!」


 怒る桜にリュートは


「桜だって勝手にジークに手を握られてただろ」


 と謝る素振りすら見せない。

 しまいにはプイッっと横を向いてしまう始末だ。

 ただし桜がジークと繋いでいた方の手はハンカチでゴシゴシと拭いているのだけど。


「怒られる意味が分かんない!!」


 先程までは顔が下にあったけど、今は上にあるリュートの顔をキッと睨む。


「桜だって俺が知らない女と手を繋いでいたら嫌でしょ」


 なかなか拭く手を止めないリュートだが、少しは納得したんだろう、今度は右手を下に左手を上に真ん中に桜の手を挟み込む様にして左手で撫で出した。


「ジークは知らない人じゃ無いでしょ!!」


 と言っては見たものの、リュートが知らない女と手を繋いでいるところを想像すればムカムカしてくるのだから、何も言えなくなってしまう。


 言えなくなってしまった桜に代わってジークが突っ込む。


「ってか、これ本当にリュート様か!?…別人だろ!?子供の姿から大人の姿になっているだけでもあれっちゃあれだけど、あんなに来るもの拒まず去るもの追わずで執着って!!ムグ!?」


「はーい、ジークはいつからお喋りになったんでしょうねえ?…あまり余計な事ばかり言っていると………いくらユリアの弟でも…………お仕置きですよ?」


 カムイが後ろからジークの口を押さながら耳元で囁く。

 その声は恐ろしく冷たい。


「……………」


「もう、余計な事は言いませんか?」


 カムイが聞くとジークはコクコクと首を上下に振った。それを確認してカムイが押さえていた手を離した。


「怖っ!!」


 ジークはカムイと距離を取った。


「男のお喋りは品格を落とすわよ?」


 いつの間にか背後に立っていたユリアが釘を指す。

 今度こそジークが黙った瞬間だった。


「リュート、取っ替え引っ替えだったんだ……………」


 桜がリュートに握られていた手を振りほどきジークとユリアの後ろに隠れる。


「ちょっ、桜、違うから!!誤解だ!!」


 慌てたリュートだが桜はリュートから距離を置いたままだ。


「……………まあ、私がとやかく言うことじゃ無いけど。……でも、私はそういうの……好きじゃないな」


 止めだ。

 ショックを受けすぎたリュートはそれ以上何も言えなくなっていた。 その姿をみたジークは『何か……本当にごめん……』と謝るが訂正はしないところを見ると本当のことなのだろう。


「まあ、今回は弟がバカでしたけど、身から出た錆ですわね。……」


「ユリア、これ以上傷を増やさないであげてください」


 カムイがユリアに苦言を指す。


「カムイが甘やかすからこんな事になるんです。……でも良いでしょう、桜!」


 いきなり矛先が桜に向いたからビックリしてしまう。


「私と二人でお茶でもしましょう?…男達は置いておいてね?」


「行きます!」


 二つ返事の桜の姿に、又リュートはショックを受けた。

 それもその筈、此処に来るのに徹夜をして迄仕事を頑張ったのだ。それもこれも桜と過ごす為だった。

 何なら、自然豊かなこの土地で二人きりで出掛けたいと期待して来ていた。

 そんな事とは知らずに桜はリュート達を置いて出ていってしまった。


「ジーク………桜様がリュートの運命の乙女だと知っていただろう?…運命の乙女とは生涯を伴にする伴侶のことだ。……扱いには注意しろ」


「まさか、あんなに女に不自由しないリュート様が手を繋いだだけで怒るとは思わなかったんだよ。……それに此処に来るとも聞いてない」


「俺がいてもいなくても、桜には触るな…いくらジーク、お前でも次は無いぞ?…」


 先程まで落ち込んでいたリュートだが、しっかりとジークに釘を指した。

 元々恐ろしく美形なリュートだ。

 怒ればその顔は冷たさを増す。


「本気の女って訳ね。……変われば変わるものだね。畏まりました、リュート様」


 今度は茶化す事をせずに位が上のものに対する礼へと変わる。


「まあ、ちゃんと桜様を口説き落としていないリュート様が一番悪いんですが、ユリアが取りなしてくれますから大丈夫ですよ」


「どうでも良く無いから……迂闊に手が出せないんじゃないか……」


「それでも失いたくなければ、やるんです。……何の為のその無駄に良い顔何ですか!?」


「無駄って言ったよ、この義理兄()


 ◇◇◇


 リュート達を置いといて中庭に設置されている白の丸いテーブルと椅子に座ると、メイドが持ってきた紅茶とお菓子を食べながら桜とユリアが話をしていた。


「桜……リュート様が貴女に向ける想いは本物よそれだけは解ってあげてね。……寄ってくる女が打算的過ぎて…何でも笑顔で当たらず触らずにかわしていたから、変な噂がたってしまっただけなのよね」


「ユリア………」


「それも最近では嫌になったんでしょうね。……氷の様な冷たさで寄せ付けない様になっていたのよ?」


「………何で私なんでしょうか?」


 すがるような想いで桜はユリアに問い掛けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ