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初めましてから始めましょうpart2

 リュートは辛そうに、膝の上で拳を握り締めた。

 余程、悔しい思いをしてきたのだろう。

 夜の戸張が薄暗く部屋を覆い隠す。日頃なら部屋の主を讃えるよう光輝くシャンデリアも、今は敢えて灯りは最小限だった。

 もしかしたら……苦痛に歪む顔を見られたくないのかも知れない。


「リュート………」


「桜、ごめん。感情的になってしまったね」


 見るに耐えきれずに桜が声を掛けた。

 そんな顔をさせたかった訳じゃない。


「異世界、私の住んでいる世界に来たから子供の姿だったの?…それとも元から?」

 私があの日、生きる事に疲れはてていた、あの日に出逢った天使。……あの時確かに私は彼の存在に救われたから、今度は私出来る事をしようと思った。

 だから、この世界に来たのだ。


「正解には両方かな。俺は最小限の力で過ごす事で生きながら得来た。……女神の力で異世界から飛ばして貰うときも、異動の際に受ける衝撃を押さえる為にも体は小さい方が都合が良かったんだ。俺には防御魔法は使えないし、異世界に飛んで直ぐに動けなくなっても困るし、服も弾け飛ぶから、大人の姿では何かと困るし……」


 確かに、リュート君はあちらの世界に着てすぐが、私と出会った時なら、産まれたままの姿だったから。

 大人ななら…………うん、ポルノだわね。

 それにしても………。



「毎回吹き飛ぶの?」


 不謹慎だけど興味がある。

 じゃあ、私の服も消し飛んだの?昔のアニメの変身シーンの様に?……だとしたら、かなり恥ずかしいのだが。


「俺が知っている限りでは行き帰りで二回は衣服は何処かにいってしまったよ?…でもそもそもが、女神だから出来たことで、通常の人間では出来ないことだから、知っている者は少ないね。異世界に行ったものも、俺のような存在だけだから王族の人間だけだろうし、限られて来るよね」


「………もしかして、私の服も消し飛んだの?」


「いや、運命の番は女神の守護を受けているからそんな事はないよ」


「でも王族も加護を受けてるのよね?」



「女神は女性だから、女性の味方で男には厳しいのさ」


 リュートがやっと笑った。

 良かった。


 だがそんな物だろうか?まあ、でも全裸を披露したのでなければ良かった。気付いた時にはベットの上で寝ていたし、洋服は着替えさせられていたしで、不安だったのよね。

 リュート君から着替えは侍女が行ったと言っていたから安心していたのだけれど。


「それで、運命の番とは?どんな事をするの?…話の流れでいくと、異世界から来た女性の事よね?」


「正解には、異世界に自分の花嫁を自ら探しにいく儀式のようなものだけどね」


「え?…」


 今何と?


「だから、番何だよ。……自分と一番相性の良い人を恐ろしく遠い場所から探し出して、お嫁に来て下さいと頼むのさ」


「……それって、プロポーズなんじゃ?」


「そうだよ、求婚だ。……此方に来る前に、俺も桜に言ったよね?…桜は信じてくれなかったけど」


「だってまさか、合って間もない子供に求婚される何て思わないもの…!!」


「まあそうだよね。……俺は一目惚れだったから、真剣そのものだったけど」


 苦笑しながらリュートは顔を片方の指でポリポリと掻いた。


「何か、ごめん?」


「謝らないで良いよ。……ちょっと泣きたくなるから。……俺だって産まれて初めてのプロポーズだったからさ。……ガッチガチに緊張していたし、桜が秋人を選んでしまわないかと焦ってもいたしね」


「何で秋人……」


「好きだったんでしょう?…まあ、秋人が女を見る目が無いアホでたすかったけど……」


 酷い言われようだ。

 まあ、正直コロコロ彼女が代わったから庇わないけど。


「ごめんなさい、話を反らしちゃったね。…それで、役目とは?」


 うん、プロポーズ何て青天の霹靂で、頭が沸騰しそうだから、取り敢えず考えない様にしよう。


「………生命エネルギーを分けて貰うんだ」


 生命……………何て言った?


「生命エネルギー?」


「桜の世界で言うところの、気功って有るだろ?魔力も似たような物で、それを口付けで分け与えて貰う事で生命を維持するんだ。……お姫様の魔法のキスで、呪いは解けるんだ。運命的だろう?」


 若干違うし、ホントの事も全て伝えた訳じゃ無いが全て真実を伝えている。

 リュートは異世界に少しの間いただけで恐ろしい速さで学習していたった。

 それこそが魔力が無くとも王太子として認めさせた能力だった。

 抜群の記憶力と理解力に、体力。

 魔力以外は全て規格外に有能。……そのスキルで会得した異世界の常識。

 きっと今、本当に事実だけを伝えたら…………きっと、桜は自分を餌だと思うだろう。

 それだけは、どうしても避けたい。彼女を好きな気持ちまで疑われたらと思うと、俺は生まれて初めて恐かった。


それが、この先自分自身と何より桜を傷つける事になるなんて、この時の俺には想像も出来なかった。

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