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初めましてから始めましょう

「リュートお前、もう少しスマートに行動しろよ?…ガキの初恋じゃ無いんだからさ。………ドアを開けて入室しても気付かない何てお前らしく無いぞ?」


 気配を消して音も立てずドアを開けて入るなどと言う行動を取ったのはユリアだが、ノックにも気付かない程に憔悴していたのは、リュートだ。

 何時も気配に敏感なリュートなら考えられない。

 子供の頃から敵の多いリュートだ。

 これが外敵ならと考えれば、どれ程危険な行為だったか?

 まあ、私室に続く通路入り口には護衛の兵士がいたのだが。

 それをリュート自身解っていたから、押し黙るしかなかった。


「……お前、何処から聞いてたんだよ?…………それに、俺にとっては…………初恋なんだ……」


 余程恥ずかしいのか、最後の方は聞こえるか、聞こえないか、位の声の小ささだった。

 カムイとすればリュートの気持ちも解るから比較的同情的だ。

 それに突っ込んだのはユリア。


「はあ、男らしくないったら…………。貴方がヘタレなのは別に私としてはどうでも良いことですが、可愛い桜が困るから、責めて元服迄は成長してくださいます?」


 因みにこの国の元服、成人の儀は13歳だ。

 容赦がないが、それも気心知れたユリアならではの激励だった。

 この国に知り合いのいない桜の味方でいてくれようとする姿勢は正直、リュートとしては有難い。


「……」


 リュートは返す言葉もなく、そっぽを向いてしまった。

 昔から、ユリアとカムイには弱いのだ。


「断りもせずキスするのは、……ダメだと思います」

 話が桜をおいて進んでいきそうだったから、納得できない部分を伝える。

 一見そうとは見えないが、桜は自分の意見を意見として言える娘だった。


「そうね、桜の言うとおりだわ。……でもね、リュートの方を持つわけじゃ無いけれど、リュートは今魔力が底を付きつつ合って、運命の乙女から口付けして貰わなければ………正直、命も危なかったのよ。……だからと言って、桜に許せと言うのは違うけれど…」


「え………何の事ですか?」


 命とは?…一体何の事だ?

 ユリアは何の事を言っているのだろうか?


「………もしかしなくても、リュートは説明して無いんですね?」


 桜の表情から突っ込んだのはカムイ。

 呆れて物が言えない、といった風に溜め息をつきながら。


「……だからあれほど説明しろと言っただろう?」


 日頃穏やかなカムイからは想像出来ない程、背後からゴゴゴゴゴゴゴッッオオオオ!!!と言う擬音が見えてしまうほど怒っている。


「!!!!」

「!!!」


 ユリアもリュートもどう見てもビビっている。

 桜はパワーバランスのトップにいるのが誰か?を理解した瞬間だった。

 怒らせちゃいけない人、カムイはそう言った人物だ。


「貴方がヘタレだから、カムイが怒っちゃったじゃない!!何とかしなさいよ!?」

「カムイはお前の夫だろう!?お前が宥めろよ!!」


 二人は小声で言い合っているが、全部聴こえてくる。


「二人とも煩いです。……桜様。失礼致しました。さぞ困惑なされた事でしょう、心中お察し致します。……全てご説明致します。……ねえ?」


 最後のねえ?だけ視線をリュートに向けた。


「……………嫌だ」


 まさかの嫌だがリュートから出た。


「ああ?」


 あれ?カムイさん、ガラが悪い……。

 桜はビクッと身震いし少しだけ後方に後退りしてしまった。


「リュート?」


 あんた、何言っちゃってくれてるんです?と視線だけで言っている。


「理由を説明したら、桜は優しいから嫌とは言い辛くなるじゃないか。……それに、そんな理由を無しにして、俺自身を桜に選んで欲しいんだ」


「そんな綺麗事は、ヘタレを克服してからにしなさいな。……それで、寝ているうちに手を出してたら、本末転倒でしょうに」


 とは、今まで黙って静観していたユリアの言葉だ。


「はあ、リュート。……良いから教えてくれる?その上でどうするかは私が決めることよ」


 頭に来た桜は啖呵を切る。

 私を、私以外の人が決めてほしくない。

 それは誰であってもだ。

 桜に言われたリュートは、今度こそ覚悟を決めて自身の生い立ちについて………話し始めた。


◇◇◇


 リュートに促され桜はソファーに腰を掛けた。

 一緒に話に交ざるのかと思ったがリュートだけが目の前に座り、カムイとユリアはお茶の用意だけすると部屋を出ていった。

 リュートにしっかり伝えろよ?と言い残して。


「この国の直系の王族は総じて強大な魔力を有している。……その力でこの国を守り、人々が住みやすい土地へと換えているんだ。……でも、俺は生まれながらに力が無かった。何代かに一度、そう言った事が起きるのは史実として知っていた。……でも、力がないと国を守れない。守れない王は王として認められないんだ」

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