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王子様?は誰part4

「本当に信じらんない……」


 あれからリュートと名乗るあの男性は、私が寸法を測り終える迄部屋から出なかったのだ。

 何とか布で目隠しさせて、後ろを向かせたけれど頑として部屋からは出なかった。

 ドレスを作る職人と侍女の皆さんが退出してもまだ、この部屋にいるのだ。

 まあ、実際には目隠し何て全然意味がなかった事を桜が知ることはこの先も無いのだろうが。


「それにしても、何故貴方の名前もリュート何ですか?」


 諦めて疑問に思っている事を聞いてみる。

 だって、リュート君には聞けないから。

 あんなに小さくて頑張っているリュート君の生い立ちに触れるようで聞けないけど、この大人なリュートには、聞ける。

 いくら美形でも、この人には何故か気を使わない。どうしてかは解らないけど素でいられる。


「この国の王の息子がリュートで、俺も王の息子だからだよ」


 ニッコリと解るような、全然解らない事を言う自称リュート。

 でもこの人は嘘をついてないと信じられる。

 まあ、勘だけど。


「な!!…」


 酷い…と言うのが正しいかは解らない。

 断言できる程、私はまだこの国を知らないから。

 でも、彼の言葉をそのまま受け止めるなら、小さいリュート君と大きなリュートは兄弟と言う事になるだろう。

 大きさからいって、こっちのリュートが兄で、小さいリュート君が弟だとして、表舞台に出られるのが兄で、小さいリュート君は表舞台に出ることが出来ない何て………それなのにあんなに忙しく働かされているなんて!!

 間違ってはいないだろうか!?


「何で貴方よりリュート君の方が働いているんですか!?貴方の方が大人でしょう!!恥ずかしく無いんですか!?」


 彼の仕事量も内容も解らないけど、年齢で考慮される巾だと思う。私はよく知らない人にこんな言葉使いをすることは無いのだけれど、破天荒な彼の行動の性で遠慮が失くなってしまっている。


「……そうだね。俺ももっと頑張らないと」


 彼は、何も知らない癖にと怒るでもなくただ、柳が風を受け流す様にやんわりと、受け止めた。

 だから、これ以上言えなくなってしまう。


「………ごめんなさい、言い過ぎました」


 うつむき、服をギュット掴む。

 いくら言いやすい人だって言って良いことと、悪い事が有るのに。


「いや?…リュートを想ってくれて嬉しいよ。…同じように俺の事も考えてくれると尚嬉しいけどね」


 だから!!

 そんなんだから、扱いが雑になるんでしょう!?

 言えないけど。


「…何故私の住む世界に来たのがリュート君だったんですか?…まだ小さいのに、誰も知らない国に来させる何て危ないのに……」


 そこだけは許せない。

 絶対に心細かった筈だ。


「異世界へは、子供の姿でしか行けなかったんだ。だから、"俺"では無理だった。行きたかったけどね」


 言葉の端々が色々意味ありげだなって思ったけど、それの意味を理解するまで、私はいかなかった。


 リュートの力が弱り成人した本当の姿のままでは力を消費し過ぎる為に子供の姿を取らざる終えなかった。

 一度魔法で子供の姿になると、これは一種の呪いと同じな為、この魔法を解くには運命の番の口付けが必要となる。

 でも子供の姿じゃなければ、魔法力の放出が大きいため生きていられない。押さえコントロールするのに生命力を必要とするから。………でも、例え運命の番の口付けを受けたとしても……それでもずっと大人の姿では要られない。

 力が戻った訳では無いからだ。…まあ、桜が側にいれば多少無理は効くのだが限度がある。

 完全に戻るには、運命の番と本当の意味で結ばれるしか無いのだ。

 これは、王にしか受け継がれていない知識だが、運命の番と王は魔法の元となる力は対極で、陰と楊。

 光と闇。王が光なら、番は闇。

 一見異なるようでそれはひとつの紙の表と裏のように切り離せない程密接に関わり合っている。

 その運命の番の強大な闇の魔力を王に注ぐ事で、元に戻れるのだ。

 力の質が同じでも、分け与える事は出来ない。

 この行為を、言葉を悪くすれば餌とも取れるが、分け与えられた王は運命の番以外見向きもしなくなる。

 ……と言うより出来なくなるのが正解だ。

 歯に衣着せぬ言い方をすれば、立たなくなる。

 だから運命の番以外と跡継ぎは作れない。

 何故こんな残酷な方法を女神が示したのかは解っていないが、運命の番と一緒になった王は幸せになれると伝えられている。

 現にリュートの曾祖父も幸せな一生だった。

 これが愛情なのか、執着なのか、それともそれを超越するから運命なのか?迄はリュートも、そしてそれを伝えたリュートの父である王も知らない。

 それを知るのは番を娶った王と番のみである。

 この事を桜に伝えるにはまだ、愛情が育っていない。

 小さいリュートと桜の間には、母性愛に近い愛情は育っているが、それは男女間にある愛情とは若干異なる。

 リュートは慎重に、だけど弾力的に自分を好きになって貰える努力をしなければならない。


 でも、スマートに慣れない。

 こんな事は初めてだった。

 何時だって、女性をスマートにエスコート出来ていたのに、桜を前にすると、ただの馬鹿な男に成り下がる。

 そしてそれがリュート自身嫌じゃないから困る。

 本当の自分を見て欲しい、解って欲しい、受け入れて欲しいと言う欲求が強すぎるのだ。

 初めて逢った時から……助けたところで何の得もない自分を助けてくれた優しい桜に自分は惚れていたのだから。




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