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王子さまは、誰?part3

 ◇◇◇

 この日桜が部屋にいると、リュートが言っていた、あの時の男の人が訪ねてきた。


「その節は有り難うございました」


 まだ、付き添ってくれてた時のお礼を伝えていなかったから、桜が丁寧に頭を下げると、青年は『好きでやった事ですから気にしないで下さい…』と笑顔を向けられる。

 成る程、顔がいいだけではなく、私の様な小娘に迄優しいとは 、色男は流石だな。

 と桜は明後日な理解を示していた。

 顔が良くて、女性を差別せず全てに優しい=遊んでいる、プレイボーイと言う方程式が桜のなかにあったから。

 そう言えば、秋人も愛想が良かったな等と嫌な記憶が甦る。


「あの………ご用件は?」


 美形は眺めている分には良いのだが、如何せん二人きりだと緊張が先だってしまい、疲れるのだ。


「桜さん、貴女の体調が良くなったと聞いて改めてお見舞いと、ドレスの打ち合わせに来ました」

「あっ………ドレス」


 忘れてた。

 そう言えば、ドレスを作ると言っていたのだ。

 それにしても、"作る"とは仰々しい。

 もしかしなくても、オーダーメイドと言う奴なのでは?。

 元々兄弟が多かった為、貧乏性な桜だ。

 そうそう着ない服に高いお金をかける何て馬鹿げてる、としか思えなかった。


「やっぱり、作るんですか?…何処からか借りてくる事は出来ないんでしょうか?…一度しか着ないのに、勿体無いです」

「これはリュートからの贈り物として、受け取って頂けませんか?」

「でも、勿体無くないですか?…私、絶対に普段じゃ着ないですよ?…それこそ、Tシャツとジーンズで十分ですし……似合わないですし」


 まあ、この人にジーンズとTシャツがわかるかは別として、ニュアンスは伝わっただろう。

 ヒラヒラした服、子供の頃は憧れたけど秋人にも似合わないって言われたし、自分でも……そう思う。


「似合わないって?…誰に言われたんですか?…そもそも誰の事ですか?もしかしてまさか、桜さんの事では無いですよね?」


 心底解らない、みたいな顔をしないで居たたまれない。


「もしかしなくても、そうです」


 全く、言わせないで欲しい。

 やるせないじゃない。


「桜さんは、女性らしい女性ですよ。似合わない何て事は有りません。……そこまで仰るんでしたら、俺に作らせてもらえませんか?…誰が見ても桜さんに似合うドレスをプレゼントします」


「いえ、悪いので……お返しも出来ませんし……」


 お願いだから、無駄にお金をかけようとしないで欲しい。

 私はここに遊びに来た訳では無いのだから。


「俺のパートナーに俺がプレゼントしたドレスを着て貰う。……こんなに嬉しい事は有りません。……綺麗な貴女をエスコート出来る権利を俺に下さい」


 真面目な顔で美形が甘い言葉を囁く。

 本来なら嬉しい事かも知れないが、慣れないと端正がないため毒されてしまうのだ。


「…………ぐっ…………………はい……」


 駄目だ、歯が浮く。

 これ以上聞いていられなくて頷くしかなかった。


「良かった、じゃあ採寸してもらいましょうね」

「はい?」


 今、何て言った?


「入れ」


 彼が言うとぞろぞろと、でも無音で女性達が入室してくる。

 この人達は誰だろうか?


「桜さん、今から寸法を図ります」


 ニッコリと、いい笑顔で言わないで。


「では、早速ですが採寸しますので、脱いでくさい」


 親玉だと思われる年配の貫禄のある女性が、目をキランっと光らせて私の服を剥ごうとした。


「えっ!?ちょ!!…待って!!」


 剥かれる!!

 そちらにばかり気を取られていたが、ふと気付く。

 彼が此方を見ながらニコニコしている事に。


「貴方は何故まだここにいるんですか?」


 何故に当然に女性が着替える場所に居座ろうとするのか!?


「俺は最後まで見届けますよ?」


 まるで、何言ってんですか?当然でしょ、みたいに言ってくる。


「…何故、女性が採寸するところを!男の貴方が見学するんですか?!」


「男…だからですよ。男なら、見ていたいでしょう??」

「!!!」


 この、このオープンスケベめ!!!

 見た目に騙された!!この人は危険人物だ!!

 美形なら何をしても許されると思うなよ!!


「リュートはどこですか!?…私は一緒にいるなら、付き添ってもらうならリュートが良いです!!」


 リュートが忙しいのは百も承知だが、この人は嫌!!


「桜さん、俺もリュートですよ」


 桜は、大人なリュートがどんな女にでも興味を示すと思っているが、大間違いである。

 あまりにも女性を近付けない為に、男色家だと思われた程なのだ。唯一の例外が幼なじみのユリアだが、そもそもユリアはカムイの妻なので、論外だった。


「私は!!あの、リュートがいいの!!貴方じゃない!!」



 ハラハラしているのは、ドレス職人と侍女の皆さんだ。

 何故なら、この国の王太子様に怒鳴り付けているのだから。

 だが、怒鳴っている相手は運命の乙女。

 その王太子の花嫁となる人物であることは周知の事実であり、知らないのは桜だけだった。

 そして何よりこの採寸は、実はただ単にお披露目様のドレスを採寸しているだけではなく、ウエディングドレスを作る為にも行われていたことを桜が知るのはずっと後の事である。


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