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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
6章 王都に行くのに戦の準備?
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78 転移部屋を作る前に

 

 その夜の宴会は賑やかに続いた。女三人寄れば姦しいどころではない。ミュラー家ご婦人方にヒルデ小母さんが加わってもう収拾がつかなくなっている。メリザも同席しているからすごいよね。


 婿殿達は婿殿達で魔物退治と酒の話で盛り上がっている。


 子供たちは子供たちで仲良くヨーゼフの魔物退治の話に聞き入っている。


 前世も今瀬も何ら変わりがなかった。


 俺は食事が終わってこっそり抜け出そうとする。ところが、ヒルデ小母さんに見つかって声を掛けられた。


「ジーク、明日の朝食の時にまた三人でミーティングね。今晩は疲れているでしょうから見逃してあげるけど、これから大人たちで緊急会議を開くの。結果は明日にでも話すわ。でもあっちこっち王国中を飛び廻って貰うと思うの。体調が悪いときは遠慮なく言ってね。あなたに倒れられると本当に困るのよ。だから、夜はゆっくり休んでね。」


「わかったよ。無理はしないでのんびりさせてもらうね。それじゃあお休みなさい。」


 そう言って一人で寝室に行こうとするとママンが優しく抱き上げてベッドまで連れて行ってくれる。


 それだけで安心してゆっくり眠れた。


 ◇◇◇


 目覚めて日課をこなす。前世から体を動かした方が頭の回転もいい気がする。体調を崩すときは余裕がなくて体を動かせない時だったかもしれない。


 生まれ変わって認識する自分の特性。


 目の色も肌の色も髪の色も多分骨格も違うんじゃないかな?それでも自分の変わらない特性ってあるのかもしれない。性格なんかも変わってないように思う。魂に刻まれた特性ってやつ?


 体と会話しながら思索にふける。早朝の肌を刺すような冷たい空気が心地よいと感じるのは、赤ん坊で体温が高いからなのか?


 マゾだから?ではないと信じよう。


 体を動かし終え、寝室に戻るといつもより早くママンが起きていた。


 早速お乳を飲ませてもらってメリザに身支度をしてもらう。


 そうこうしているとヒルデ小母さんがやってきて食堂に連れて行かれた。


 パンとスープを食べながら昨夜の大人会議の話を聞く。ベーコンエッグとかあるとうれしいんだけどな。


「昨夜の会議、結構紛糾しちゃった。転移門を開いている間ジークはその場にいないと不味いでしょう?ジークの秘密が他の貴族にばれちゃうのは困るとか。ジークに危険が及ぶとか。ジークの体に負担が掛かるとか。色々ね。結局ジークのことを皆が心配しているの。もちろん私も含めてね。」


 ヒルデ小母さんは、そう言ってにっこり微笑んだ。


「それで、対策なんだけど、まずエリザとピルネによる偽装工作。当然魔導士としても有名なマリーも偽装に参加するわ。ついでに内のお抱え魔導士筆頭にも参加してもらう。転移門を開いているのはこの四人ということにしてもらってジークは衝立の裏でこっそり隠れて本を読むなり、錬金術の練習をするなり好きにしてちょうだい。」


「それから移動速度を上げようと思うの。大人は馬に乗って、子供は馬車で移動して、荷物はのんびり従者に任せることにしたわ。魔物退治の時の要領ね。」


「荷物なら僕が運ぶよ。収納量は無限にあるからね。」


「あーそうね。ジークの収納を忘れていたわ。直ぐ段取りさせるからちょっと待ってね。」


 そう言ってヒルデ小母さんは部屋の外に出て五分後かえってきた。


「出発前に準備させるからお願いね。」


「それで重要なのが転移門を何処に開くかなんだけど、できるだけ多くの西側国境の領主が住む町に繋ぎたいの。だけどほとんどの領主が信じないと思うのよね。」


 そう言って言いよどむヒルデ小母さんに確認する。


「でも、念のため繋げるようにはしておきたい?だったら僕がそこまで行って転移できる場所を見繕っとかなきゃね。東国境まで確認が終わったらそっちを潰しておくよ。大体の位置と領地名がわかる地図を用意してもらいたいんだ。そうしたら移動中に集めた情報も書き込めるしね。あっそうだ!ティーネ叔母さんとこ先に行かなきゃね。昨夜ティーネ叔母さん達にも話したんでしょう?」


 ママンが口を開いた。


「ごめんね。話しちゃったの。かなりビックリしていたわ。テオがケルンブルグである程度の指示を出しているし、国境から少し離れているから優先度は低くていいって言ってくれたの。だから気にしないでいいわ。」


「僕としては身内を優先したいんだけどそういう事ならわかったよ。ヒルデ小母さん指示をお願いね。」


 ヒルデ小母さんが頷いて、


「分かったわ。決まったら順次指示させてもらうわ。それで今日は王都邸の昨日の部屋、王城、ノルトシュタットをつないでもらえるかしら?」


「了解。まずはエリザとピルネを迎えに行かなきゃ。モース達には何してもらう?」


 ヒルデ小母さんにモース達の予定を聞いてみる。


「全員一緒に王都邸に連れてきてもらえる?そこで私から依頼を出す形にするわ。モース達も一応騎士爵とはいえ貴族になるのだから常識を学ばせないといけないわね。ちょうどいいわ。情報収集も一通り終わったみたいだし、ジーク達にはついて行けないから王都で執事に教育させるわ。」


 少しモース達が気の毒に思ったが今後を考えると必要なことだろう。


 謁見の際の準備も必要だろうしいい機会だよね。


 ◇◇◇


 朝飯が終わった俺は、キュプフェルトに跳んでモース達を拾う。


 キュプフェルトに移動して暫くするとモース達がやって来た。


 王都の辺境伯邸に跳んでも良かったのだが、どの途ヒルデ小母さんを迎えに行かなければならないので、宿泊先に跳ぶことにした。


 ノーラ姉さんもいないし、跳んだ先もどこかの街の宿屋の裏庭なのでモース達が聞いてくる。


「ジーク今度は何をさせる気なんだ?」


 胡乱な目で俺を見つめる冒険者達を代表してモースが尋ねてくる。


「ごめんよ。いつも、いつも。モース達を振り回して…」


「侘びはいいや。状況を教えて欲しいんだわ。」


 謝る俺に対してアストが呟く。


「これから辺境伯と一緒に王都の辺境伯邸に跳びます。そこで僕は朝夕各地に転移門を繋いで帝国侵攻に対応する手伝いをします。魔道士の二人は一緒に転移部屋で待機してもらい、他の人は辺境伯から指示があります。昨日の話では王都にて貴族教育を行うようなことを言っていたので辺境伯から直接聞いてください。」


 諦めたように肩をすくめる者、苦虫を噛み潰したように顔を顰める者、口を開けて呆ける者と反応の仕方も様々だ。


「もしかして私達転移魔法まで使えることになっちゃうの?」


 エリザは顰めた顔で聞いてきた。


「偽装工作?」


 ピルネは呆けた顔で訪ねてくる。


 俺は無言でこくりと頷く。


「ふーもう好きにしてくれ」


 モースの呟き。


 項垂れるエリザ。


 んー罪悪感がハンパない。


 ちょうどそこへヒルデ小母さんがやってくる。


「早いわね、ジーク。ああ冒険者達も連れてきたの?ちょうどいいわ。王都邸に転移門を開いてもらえる?私と冒険者達で先に王都に行って準備をするから。あと、荷物を運んでもらう準備が出来たみたい。執事に聞いてくれる。」


 開口一番支持をだされたのでその通りに動くことにする。


「じゃあ、王都に転移門を開くね」


 そう言って転移門を開くとヒルデ小母さんはそそくさと転移門をくぐって行く。


「さあ、あなた達も行くわよ!時間がないからちゃっちゃとしてね!それからジークはマリーの準備が出来たら王都に来てね。待ってるわ。」


 転移門をくぐる際にそんな言葉を残していった。


 冒険者達も不承不承ヒルデ小母さんの後に続き転移していった。


 なんか、モース達には迷惑ばかりかけている気がする。


 でも仕方ないよね。


『人生ままならないんだから。』


 自由業の冒険者と言えども、その辺は俺と一緒さ。


 モース達にも迫られる選択肢の中で精々頑張って欲しい。


読んでくださってありがとうございます。

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