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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
6章 王都に行くのに戦の準備?
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77 濃すぎる一日

暑い日が続きます。

夏バテにはご注意を……



 のんびりシロと東の国境を目指す。待ち合わせの時間までシロと走ると景色は峻険な山岳地帯に変わっていた。


 うん、ここから先は万の軍勢を行軍させるのは難しいだろうな。でも国境までは見に行くけど…


 そして王都の屋敷に転移門を開いて移動する。シロは子狼形態だ。


 屋敷にはノーラ姉さんとヒルデ小母さんが待っていた。


 いきなり、ヒルデ小母さんに抱き上げられて箱馬車に拉致され、ケルナー辺境伯の王都屋敷に連行された。


 流石に辺境伯の王都邸だけあって、やたらにデカくて威厳がある。調度品も重厚且つ優美で洗練されている。主の趣味の良さがうかがえた。


 そんな屋敷の部屋の一室に通される。かなり大きい部屋だが調度品は殆ど置いてない。


 部屋に入るなりヒルデ小母さんがお願いしてきた。


「ジークお願い。しばらくこの部屋を転移部屋にして欲しいの。ケルンブルグ、移動中の宿泊地、ノルトシュタット、王城、あと、西派閥の信用できる領主邸。朝と夕の二回でいいの。帝国の狙いが西側なら対策を至急練らなきゃ間に合わないのよ。」


「うん、いいよ!この後王城に行くんでしょう?早く行こうよ。」


「ジークのモノわかりが早くて助かるわ。ありがとう。」


 お礼を言われてしまった。なんだか照れくさい。


 急いで王城に行くと女王陛下自ら迎えてくれた。言葉少なに、


「ジークすまぬ。助かる。この礼は落ち着いたらすぐに。」


「身内に遠慮はいりません。存分に使ってください。只できないことはできないと女王陛下であっても言わせてもらいます。」


「うむ、お主はぶれんな!おぬしらしくて清々しい。して、もしかするとこちらが神獣様か?」


 シロ子狼バージョンを見つめながら女王陛下が聞いてきた。


「そうです。フェンリルのシロです。よろしくお願いします。」


 シロが口を開いた。


「ぬしがこの国の王か?我はジークの使い魔のシロ。堅苦しい挨拶などは不要だ。」


「お初にお目にかかる。神獣殿。予がルンベルク王国女王、ユリアーナ・ウル・ヘルメスベルガ―・ルンベルク。よろしく頼む。」


「うむ」


「しかるに神獣殿、此度の戦―」


「王よ!それ以上申すな!我は人の戦には干渉せん。」


「ジークが絡んでもか?」


「ジークは己が死んでも我に戦に加われとは言わぬ。」


 女王陛下がこっちを見る。


 俺は黙って頷く。


「王国が滅んでもか?」


 俺はもう一度頷く。


「これは、あくまで人族の問題。人族で解決すべきかと…」


「しかし、此度は危ういのだぞ!」


「それは陛下の、王国貴族の怠慢です。安易な方法で逃げず、責務を全うしてください。」


「ぐぬぬ!ジーク、予に意見するか?」


「ここで逃げればより大きな災いが待っていますよ!」


 陛下に言ったあと、シロに確認する。


「シロ、ヨルムンガンドもこっちに来たがっているの?」


「我の弟か?多分来たがっておる。我が暴れると混沌が押し寄せるかもな?それはそれで楽しいかもしれんが、さて、その時に神は人族を救ってくれるかの?」


「ちなみにヨルムンガンドはシロの弟で海に巻き付く大きな蛇だよ。」


「陛下私達で頑張りましょう。余にも大事過ぎます。人族の将来を左右するわけにはいきません。」


 側に控えていた人が陛下に耳打ちする。肩を落とした陛下が次の注文を投げてきた。


「仕方ないのう。では、王城に各所に転移できる転移部屋を作ってくれ。」


「女王陛下、転移部屋はケルナー辺境伯邸に設置いたします。それでどうかご容赦を…王城では秘密が守れません。あっという間に敵に情報が知られてしまいます。信用のおける数人で運用してください。」


「なにもかも出来ぬ。出来ぬ。ではないか!予は女王だぞ!」


「陛下の周りに本当に信用できる臣は何人いるのですか?有象無象のボンクラ王国貴族に転移門を良い様に使われた上、私の命まで危険にさらされたら堪った物ではありません。」


「ぐぬぬ。しかし…確かにそうじゃが…」


 何か言いたそうだがそれをぐっと押さえてくれた陛下。


 ヒルデ小母さんが助け船を出してくれる。


「しばらくの間、朝夕に我が邸宅の一室に各所への転移門を纏めて設置します。その部屋と王城も転移門を繋ぎます。王城の安全を考慮すると、王城と各所を直接つなぐよりよろしいかと思います。」


 また、控えていた人が陛下に耳打ちする。


「ジークフリードも転移部屋設置には基本反対していないものと思われます。ただその運用が王城では危険だと申しているのです。事実ケルナー邸と王城を転移門で繋ぎ隠密性を守るためにここまで来ております。ここはご寛容を持って接するべきかと具申いたします。」


「宰相がそういうのであればしかたなかろう。ジーク、ケルナー邸に転移部屋を作り王城とつなげよ。」


「畏まりました。陛下。」


 俺の返事を聞いて少しニンマリした陛下。


「ふむ、やっということを聞いてくれた。ジークは赤子のくせにずけずけ意見するから余計にいじめたくなる。」


 口の中でぼそぼそと小さく呟いた陛下の言葉を俺は聞かなかったことにした。


 運用方法は宰相、ヒルデ小母さん、近衛騎士団長、とりあえずスーザンさんで話し合うそうだ。


 早速王城内の極秘の小部屋に案内されたので辺境伯邸に転移門を開いた。


 そして、ノルトシュタットのスーザンさんの家に転移門を開く。


 当然王城の転移門も開きっぱなしだ。


 陛下、宰相、騎士団長が王城とノルトシュタットを行ったり来たりする。なんだか三人とも呆けている。


 スーザンさんの顔も引き攣っている。自分家に王国のトップがいきなり来たらそうなるよね。


「ヒルデ小母さんそろそろ次の宿泊地に向かわないといけない時間なんだけど、どうしよう?」


「そうね!急いで向かわなきゃね。」


「ヒルデ小母さんは王城に行って馬車で戻ってこないとまずいでしょう?その間にスーザンさんを送って、ノーラ姉さんと一緒にノルトシュタットからモース達と一緒に引き上げて来るよ。」


「分ったわ。また、ここで落ち合いましょう。」


「了解。」


 ヒルデ小母さんは陛下と宰相、騎士団長を伴って王城へ向かい、俺とスーザンさんノーラ姉さんはノルトシュタットのスーザンさんの家に転移した。


 スーザンさんの家でモース達が待っていた。


「さっき騎士団長と身分の高そうな女の人が来ていたんだけどあれって王都からなの?」


 エリザが聞いてきた。


「女王陛下と宰相と騎士団長だよ。会ったんだ?」


「「「「………」」」」


「騎士団長が気を使って『何も言わずに跪け』と言ってくれた。おかげで助かった。」


 そんな話をしているとスーザンがあたふたしている。


 これから上司に報告に行かなきゃだもんね。大変だ。


 モース達と合流してノルトシュタットの街の外に出てキュプフェルトの領主邸裏庭に馬を連れて転移する。続けて今日の宿泊予定地にノーラ姉さんを送り出し、王都の辺境伯邸に跳んだ。


 暫く待つと、ヒルデ小母さんが帰って来たので宿泊予定地の近くに跳ぶと馬車が待っていた。


 ママンとノーラ姉さんに出迎えられ宿泊地に入ると父さんやローデリヒさん達が合流していた。無茶苦茶賑やかで前世の盆と正月を思い出す。


 今日は色々濃い一日だったから疲れた。親類一同集まっているみたいだけど逃げてもいいよね。


『でも、人生ままならないから逃がしてもらえるかどうか…』


読んでくださってありがとうございます。

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