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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
6章 王都に行くのに戦の準備?
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76 濃過ぎる人

遅くなってすいません。


 


 ノーラ姉さんがどう思う?って顔でこっちを見ている。


 スーザンさんに見えない様に手招きするとノーラ姉さんは席を外し、俺もエリザに連れられてノーラ姉さんの後を追った。


「ねえ、ジーク今回は楽勝っぽいね。」


 開口一番楽観論を口にしたノーラ姉さんに俺は大きく溜め息をついた。


「はぁーノーラ姉さん!出兵する前に敵対国にスタンピートを仕掛けて消耗を狙う相手が、自国でスタンピートを起こすと思う?これじゃあ西側国境は帝国に掠め取られて領主は降伏の上人質を取られて、帝国の属領になっちゃうね。」


「へ?だって主力はここに来るんでしょ?」


 鳩が豆鉄砲くらって口をパクパクさせたようにノーラ姉さんが反論する。


「主力は魔物討伐に託けて西に向かった二万。国境を越えて領主を脅して降伏させ、領主や家族を人質に取って、西辺境伯領もしくはここを攻める算段をしているはずだよ。」


「そんなことできるはずがないわ!」


 ノーラ姉さんが思わず叫ぶが放っておいて続きを話す。


「悪辣なのが、王国人同士で戦わせようとすること。さらに辺境伯領もしくは、ここノルトシュタットを落とせなくても西側国境に面した多くの所領を手に入れられること。さらに、さらに西側緒領を手に入れられなくても王国内で王国人同士が血を流し合って戦った事実が拭い去れない亀裂を生むこと。さらに、さらに、さらに最悪の場合でも撤兵時に領民が生きていく最低限を残して物資を徴発すれば今後の王国貴族に大きな不和をもたらした上で最も重要な『物資』と言う戦果も挙げることが出来ること。」


「だって、皇帝の初親征でしょう?勝たなきゃなんないんじゃないの?」


 ノーラ姉さんが必死で反論する。


「だから勝って帰るんだよ。皇帝は王国に攻め込んで戦果となる物資を持って帰れば勝ちになるの。」


「だって領地を奪わないと…相当な物資や奴隷を得ないと恩賞が出せないじゃない。」


「もうあるんだよ。と言うか皇帝がいない間に兄派だった貴族が反乱でも起こすんじゃないかな?それを早々に鎮圧して恩賞にするつもりでしょう。まあ、兄を倒した時点で一財産手に入れているはずだし、反乱が起こらなくても問題ないんだろうけどね。」


「そんな馬鹿なこと…」


 唖然とするノーラ姉さん顔が真っ青だ。ちなみに側で話を聞いていたエリザの顔も真っ青だ。


「騎士団長級の化け物を謀略で葬って皇帝になっただけの事はあるよね。勝利条件を複数用意できる柔軟性と、緻密な計画を実行に移せる行動力。人材もそろっているんだろうね。本当に並大抵の皇帝じゃないよね。下手すると婚姻政策まで使って王国を併呑しようとするんじゃないかな?大義は『不毛の大地である東の荒野を人族が取り戻すために!』とか言ってね。うん、いい大義名分だ。教皇には宗教権威を与えて、共和国には経済の実利を与えれば四国統一も夢じゃないかもね。女王陛下も大変だ。ふふふふ。」


 俺は思わず感心してしまい、笑ってしまった。


「笑っている場合じゃないでしょう!」


 ノーラ姉がヒステリックに叫ぶ。


「でもね。この仮定をどれだけの人が信じられる?まあ、王国貴族には一笑に付されて終わりだろうね。」


 俺は肩をすくめて見せるがノーラ姉さんは取り合わない。


「でも、でも、ヒルデや陛下には伝えないと…」


「確かにそうだね!スーザンさんにもきちんと話をして、直ぐに王都に向かおうか?ちょうどヒルデ小母さん王都にいるしね。」


 早速、管を巻いているスーザンさんにノーラ姉さんが話をする。


 ◇◇◇


「ノーラ?あなた本当にノーラなの?」


「失礼ね。何が言いたいの?」


「いやいや。目から鱗がぽろぽろと落ちて…まず皇帝は親征することで帝都を空け兄派の炙り出しをしようとしている。うん納得だわ!次に南辺境伯が起こしたスタンピートも帝国の陰謀で、この時期に出兵する下準備だったと!さらに納得!そしてスタンピートをある程度コントロールできる帝国が自国でスタンピートを起こすはずがない、これは擬態だと!ふむふむ、筋は通っている。さらに兵力を分散させ寡兵でノルトシュタットに侵攻するのは第三師団及び第二師団を足止めするためで、本命は西の国境周辺の王国国土を併呑するため、見せ兵として二万を配置し、降伏を勧告する。弱小領、特に子爵以下の領主はすぐに降伏するわね。命を保証し、略奪・暴行しない制約があれば従軍もやむなしと考えるかも…そして悪辣なのが王国人同士で戦わせようとすること。血が流れれば同じ王国人であっても不和になってしまう。さらに従軍させられた方も王国に刃を向けたとなればもう王国には戻れない。辛辣すぎて反吐が出そう。まさに味方同士の地獄絵図ね。ここに帝国と繋がっているかもしれない南辺境勢が加わると混乱の極致でノルトシュタットが落ちる可能性も出てくる。絵を描いた人間に恐怖するわ。それを看破するノーラあなたにもね!」


 さわやかな笑顔の飲んだくれが、長々と解説してくれた。そして最後のフレーズ何か関係あるの?


 ノーラ姉さんあなたが謎解きしたんだから、手を叩いて納得顔しない!


「そう言う事も考えられるからスーザンも頑張ってね。信じて貰えないかもしれないけどね。」


「ええ、できるだけ頑張ってみるわ。ところでさっきそこのエリザさんと赤ん坊と一緒に席を外していたみたいだけど何をしていたの?この冒険者さん達ってスタンピートの時に活躍した人達よね?」


「ちょっとお花摘みにね。それからモース達はキュプフェルトに同行した冒険者よ。今はシュタート男爵の依頼で私に付き合ってくれているの。」


「お噂はかねがねお聞きしているわ。インフェルノ、エクスプロージョン、トルネードを使う凄腕の魔導士とか?それからどうしてこんなところに赤ん坊がいるの?ノーラの子供じゃないわよね?」


「まさかぁ~姉のシュタート男爵の次男坊よ。ちょっと訳が有って連れているの。」


「確か魔物退治の時にシュタート男爵は赤ん坊を連れていたとか?その子がそうですか?」


「そうよ。ジークフリードって云うの。かわいいでしょう?」


「そうですね。見た目はかわいいですが実に恐ろしい子ですね。ノーラ少し油断しましたね。私にも近衛に目と耳はあるんですよ。実は女王陛下の近くにもね。」


 不敵な笑みを浮かべるスーザンさん。


 こりゃあバレテーラー諦めて情報収取に切り替える。


「それじゃあ、南辺境には耳はあるの?共和国に良い様に使われているみたいだけど?女王陛下も共和国に伝手があるはずなのに情報がないのはどうしてなの?」


「ほう、そこを突いてきますか?良いでしょうお礼に少し教えてあげます。女王陛下の伝手は共和国の代表です。昔から懇意にしている清廉潔白な方ですよ。」


「なるほどね。南と帝国に繋がっているのは代表を追い落としたい反対勢力ですか?それも闇ギルドも関わっていそうですね?」


「はぁ~そこまで読めちゃいますか?全く恐ろしいですね。この場で葬っておくのが王国のための様な気もしますが…勿体ないですね。もう少し様子を見させていただきましょうか?」


 あ~印象通りのドSキャラみたいだ。


「それはどうも…助かります。如何せん何もできない赤ん坊ですので…スーザンさんの三味線も上手だったですよ。コロッと騙されてしまいました。」


「またまたご謙遜を…Aランク魔物を瞬殺する人が何をおっしゃいます…誤解があるようなので訂正しますが、どちらも地です騙すつもりはないのですよ。一応今はお仕事モードです。飲んでいた時はオフモードなだけですよ。さて、色々収穫もありましたしお互い上司に報告に行きましょうか?」


「女王陛下への報告はどうしますか?」


「何時くらいに報告できるのですか?」


「急ぎならば今日中に。遅くてもケルナー辺境伯伝手で明日には報告できるでしょう。ただ、そちらの情報収集の賜物ですので手柄を奪っては申し訳ありませんので…」


 開いた口が塞がらないとはこのことだろうか?顎が外れそうなくらい大きな口を開いてスーザンさんはフリーズしてしまった。


 約二分後再起動したスーザンさん。開口一番リクルートを始める。


「ねえ、内に来ない?お給料弾むからさぁ。週一のバイトでもいいからきてよ?なんだったら私の体で払うから。結構脱ぐとすごいのよ!」


 何を言うとんじゃい?この姉ちゃん!赤ん坊に色仕掛けとか潔すぎて勢いで乗ってしまいそうになる。しかし心を鬼にして一言。


「残念ですが僕はママン…シュタート男爵のモノですからお断りします。」


「なんだ、マザコンか!仕方ないわね。気が変ったらいつでも言って短期バイトも募集しているからね。」


 そう言ってウインクする。うわー残念臭がプンプンするよ。


 呆れ果ててノーラ姉さんが割って入った。


「ところで陛下への報告どうするの?」


「この際仕方ないのでそちらでお願いします。でもきちんと伝えてくださいよ。こちらも報告書でお送りしますので齟齬がないようにお願いしますね。」


「分ったわ。伝えとく。それから、情報収集に偶に来るから相手してね。」


「周期はどれくらいですか?」


 ノーラ姉さんがこっちを見たので答える。


「週一くらいかな?必要があれば毎日でも来るけど忙しいしね。」


 あ、また固まった。そして再起動。


「どうやって移動しているの?」


 酒場中に響く大声で叫ぶスーザンさんを、ノーラ姉さんが腹パン一発で黙らせ。


「あー面倒臭い。」


 一言唸ってスーザンさんを埒ってスーザンさんの家に押しかけた。


 開いている部屋を見繕い。


「ジーク。転移門!」


「はいな!がってんだ!」


 王都の屋敷に転移門を開いた。


「モース達は引き続き街で情報収集しといて。二時間?いえ三時間後にここに集合。」


「ジークは二時間後に王都の屋敷に迎えに来てね。」


 そう言うと、スーザンさんを引きずって王都の屋敷に転移していった。


「濃い人だったなぁ。」


 モースがぼそりと呟く。


「でも、気持ちは判る。」


 エリザもぼそりと呟く。


 そして、全員が俺を見て溜め息。


 お、俺が悪いっていうの?


『あ~人生ままなんないよ。』









読んでくださってありがとうございます。


気が付けば総合評価1000ptを突破していました。

ありがとうございます。

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