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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
6章 王都に行くのに戦の準備?
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71 神獣の弱点?



 リビングに戻ると、幼女4人に弄り回されているシロが、俺を見つけて逃げてきた。


「我を放って置いて何処にいっていた?」


「シロどうかしたの?ちょっとメリザに頼みごとに…あーメリザのこと知らないかな?メイドに頼みごとを…」


 俺とシロが話しているとリーゼ姉がすごい勢いで俺に迫ってくる。


「ジークこの子犬はシロというのですか?あなたが飼っているの?」


「え?え?子犬?えっと子狼ね。飼っていると言うか、相棒って感じ?」


 シロを見ながら答えると、シロもコクコクと頷く。


「「「すごーい!人の言葉がわかるぅ~」」」


 ティーナとビアンカ姉、あとイザベルがリーゼ姉の後ろで騒いでいる。


「シロを私たちに寄越しなさい!これは姉の命令です!」


 いつもは優しく穏やかなリーゼ姉の強権発動に圧倒されそう。


 シロは俺の袖を噛んでひっぱり、首を横にブンブン振っている。


 これは俺がいない間弄り回されたかな?


「リーゼ姉さん、シロは一日頑張ってお仕事して疲れているんだよぉ。かまって貰えるのは嬉しいけど疲れている時はゆっくりしたいよね!」


 ここは理詰めで説き伏せることにする。


「むむ!しかしジークは一日シロちゃんと、もふもふしているのではなくて?」


「「「もっふもふ!うらやましいの~」」」


 なんか勘違いされている?俺が子狼のシロと草原を転げまわって遊んでいるように聞こえた。


「リーゼ姉さん勘違いしてない?今日シロは帝国との国境まで僕を乗せて移動してくれたんだよ!疲れているんだ。」


「ふぎゃ~国境までですか?そんな遠いところまでシロちゃんはすごいのですねぇ~」


「「「すごいのですねぇ~」」」


 リーゼ姉含めて四人の幼女が心底驚いた表情をみせて感心している。


 シロはどや顔をしながらブンブン尻尾を振ている。もっふもふの尻尾がブンブン揺れているのだ。


 すごく気持ちよさそうで、それを見て幼女たち、尻尾に合わせて首を揺らしている。今にも手が伸びそうだ。


 シロが慌てて俺の背中に隠れるように回る。


「やっぱりジークずるい!シロちゃん独り占めして…」


 リーゼ姉の抗議の声が響き渡る。


「そんなこと言われても…」


 俺はほとほと困り果てた。そしてさらにリーゼ姉が発した言葉に慄いてしまう。


「ジークはいつもお母様やお父様と一緒に旅をしたり、お話したりずるいのです。シロちゃんは、小さくて私たちと遊んでいる方が危険がなくていいのです。だからジークはシロちゃんの所有権をわたしに譲るのです。」


 なんかリーゼ姉が無理やりな理屈を言い始めた。それにキュプフェルト行きの旅を少し勘違いしているのかな?大人たちに混ざって会議に参加していることに嫉妬しているとか?リーゼ姉もなんか拗らせているっぽい。


 いつも優しく面倒見のいいリーゼ姉もやっぱり両親が恋しい子供なんだな。一生懸命我慢しているからその感情のはけ口を、シロをかわいがることに求めているのかもしれない。


 それが分かってしまうとなんだか切なくなる。思わずシロに念話でお願いしてしまった。


(シロ様もう少しでいいので私の姉達と遊んでやってはもらえないでしょうか?魔物ベーコンの量を二倍にして、エールも二樽出しますのでどうか良しなに…)


(むむむ!いつもの二倍か!くぅー惹かれるがお主の姉たちは容赦がないのだ。毛を逆さまにもふり倒すから痛くてかなわんのじゃ!それをどうにかしてくれぬか?)


「リーゼ姉さんシロをなでる時毛の流れに逆らって撫でていない?シロが痛いからやめて欲しいって言っているよ!」


 ハッとした顔でシロを見つめる幼女達。そして


「「「「ごめんなさい。」」」」


 幼女四人の謝る声がそろった。


「気持ちいいからみんなで『フワッフワッ』とか言って毛を立たせちゃった。シロちゃん痛かったの?」


 リーゼ姉が代表してシロに聞く。


「クゥーン」上目づかいで幼女達を見つめて悲しそうな声で抗議の泣き声をあげる。


 あざとい!やっぱりこいつ邪神の使いだ!


 再び幼女達反省して小さくなる。


「「「「ごめんなさい。」」」」


 しょげ返る姉達を見るのは忍びなく、再びシロに交渉してしまった。


(ねえシロ、反省しているみたいだから、ブラッシングぐらいさせてあげてもいいんじゃない?)


(優しくだぞ!)


(分った!優しくしてってちゃんと言うよ。)


「あのね。シロが優しくブラッシングしてくれるならいいって言っているよ!メリザかサラに教えて貰いながら優しくしてあげてね。」


 しょぼんとしていた幼女達がにわかに活気を取り戻す。


「「「「ホントにいいの?」」」」


 また声がそろった。


 シロも胸を張って頷く。


「「「「やったー」」」」


 幼女達の歓声が響き渡ったところでママンの声がした。


「楽しそうにしているところ悪いんだけど、そろそろ夕御飯ですよ。準備して下さい。」


「「「「はーい」」」」


 四人の幼女が残念そうに離れていった。


 それを見ながらママンがすまし顔で呟いた。


「神獣様にも弱点があったみたいね?」


「そうは言うが奴ら遠慮を知らんぞ!揉みくちゃにされる我の身にもなってみろ!」


 疲れ果てながら反論するが、ママンは肩を竦めて取り合わなかった。


 ◇◇◇


 ママンは俺を抱き上げ連れて行きながら話をする。


「ティーネも一緒に食事をとるの、紹介するので大人しくしていてね。」


「俺のことは秘密にするのね?」


「一応ね。直ぐボロを出すんでしょうけどね。」


 半分諦めた顔でこっちを睨んで来るが、俺もどうしようもない。


 黙って抱かれていることにした。


 これ以上厄介ごとを増やされても堪ったもんじゃないからね。


 クリスティーネ叔母さんはおっとりした人だった。


 一見するとママンに似ている。しかし、ママン程武闘派ではなさそうだ。


 本当に優しく穏やかでのんびりした陽だまりの様な人だった。


 対して夫のテオドール・フォン・マイスター次期アルムント男爵領領主は「がっはっはっは」とよく笑う、筋骨隆々でよく日に焼けた若者だ。貴族と云うよりどう見ても海人?と言う言葉がよく似合う好青年だ。


 アルムント男爵領はケルンブルクの北西に位置する海に面した土地で漁が主産業の小さな町らしい。


 現領主のティーネ叔母さんのお義母様には娘がいない。息子が三人いるが長男であるテオドール叔父さんが後を継ぐことに内定している。


 ティーネ叔母さんとテオドール叔父さんの間には来年二才になる娘がいるので、順調にいけば次期領主はテオドール叔父さんか、娘さんになるそうだ。


 現領主のお義母さんも、うちの祖母ちゃん同様元気なのでまだまだ先の話らしい。


 しかし、ヒルデ小母さんから帝国進軍の情報を聴くと、テオドール叔父さんの雰囲気が一変した。


 側に控えた執事に何か呟く。一通り指示が終わるといきなり話題を変え、冗談を言って「がっはっはっは。」と笑う。


 テオドール叔父さんは、予想外の物事にすぐに手を打つ柔軟性と、内面を表に出さない強かさを併せ持つこれぞ貴族と思わせる行動を目の前で取ってみせた。


 俺は舌を巻いて感心し、自分の粗忽さに呆れてしまった。


 その後も、食事は和やかに進み、祖母ちゃんの近況やスタンピートの話などで盛り上がった。


 テオドール叔父さんは父さんと話ができないのを残念がったが、


「合流すれば直ぐに聞けるわよ!」とティーネ叔母さんに宥められ。


「そうだな!」ニカッと笑った白い歯がキラッと光った。あんた三鷹さんかよ!突っ込みを入れたかったが自重した。


 和やかな会食も終わり、子供はおねむの時間。当然俺も引き上げる。


 大人たちはまだ何か相談するみたいだけど…


 ベッドの中で俺は昼から引っ掛かってる違和感について考える。


 戦が近いと言うのに国境に近い街はなんだかのんびりしていた。戦は他人事のように普段通りの生活を送るメンフィスベルの人々が異常に感じられて仕方が無い。


 明日、国境沿いをノルトシュタットまで行けば判ることなんだけど、どうもしっくりこない。


 お蔭で中々寝付けなかった。


 考えすぎるのは、前世からの悪い癖だ。できるだけ楽天的になりたいんだけど…


『自分の性格もままならないね!』



読んでくださってありがとうございます。

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