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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
6章 王都に行くのに戦の準備?
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68 冒険者達の選択



 俺達冒険者パーティも辺境伯から食事に誘われたが辞退した。目立つのはまずいが、さすがに貴族様と一緒に食事をとれる精神状態ではない。


 晩飯を目立たない様に行きつけとは違う酒場で取っているとエリザが口火を切った。


「モースは知っていた?辺境伯に庇って貰っていたこと。」


 エリザに問われたが、俺も寝耳に水だ。


「知るわけねーだろう。全部ギルマスのアンナさんに『おんぶにだっこだ。』と思っていた。」


 俺は、素直に答えた。するとアストとイリスも納得したのか相槌を入れてくれた。


「ギルドと言ってもBランクの冒険者パーティにそこまで深入りはしないわな。」


「ギルドはいつも自己責任だもんね。ちょっとおかしいと思っていたんだ。」


「辺境伯には感謝?」


「うん、感謝だね。でも思う所は色々あるけどね。」


 ピルネの言葉に相槌を打ちながら複雑な表情をするイリス。


「しかし、俺達が騎士爵とは言え貴族様とはね。一生で使いきれない額の金ってどんだけだよ!」


「騎士爵の年金で年に金貨五枚。素材を売った金額だけで金貨三千枚以上。人数で割っても百八十七枚以上。」


 アストが自嘲気味に呟くがピルネには通じなかったみたいだ。


 神の声(日本円に換算すると貴族年金が年五百万円支給され、今回のヘルタイガーとブラックバイソンの素材を売った代金だけで一人頭で一億八千七百万円以上になる。田舎ではまだ物々交換が成り立っている世界であるから一概に比較することは出来ないが一生分の稼ぎと言っても過言ではない。)


「確かにあくせく働く必要はなくなるけど、そういうモノでもないしね。」


 エリザが真面目な顔でつぶやく。


 俺は今後のことも含めて仲間には考える時間が必要だと思った。そして言葉を発する。


「それぞれ、王都に着くまでに身の振り方を考えて置いた方がいいかもしれないな。」


「モースはどうするの?」


 エリザが聞いてきた。参考にするのだろう。古い付き合いだ。折角だから俺の気持ちを伝えておこう。


「俺か?シュタート領は悪くない。あそこの魔物は中々狩り応えがある。ジークのお目付け役は面倒だが、面白いと思う。洗礼式が終わる頃には遥か高みに至っているかもしれねぇし、それをそばで見守るのも楽しそうだ。俺は結構あいつのことを気に入っているみたいなんだ。だからお前たちは自由にしていいぞ。取り敢えず、俺は受けるからな。」


「そうなんだ?ブー足れて受けないって言うのかと思っていたわ。魔道士は必要だから私も受けるわ。結構いいと思うのよ。暫くは何処の街でも騒がれそうだし、シュタート領にギルドが出来るんならそこを拠点にすればいいだけですもの。あそこのお貴族様は底抜けにお人好しだから嫌いじゃないのよね。」


 するとエリザもあっさり受けると言う。


「ジークと一緒なら魔法の深淵に近づきやすい。そばで観察する。」


 訳わかんね~がピルネも一緒だ。


「私はジーク君のお守好きだよ。って言うか危なっかしくて放っておけない。だから受けるつもりだよ。」


 まーな。イリスは本当にジークのことを気に入っている。


「あーなんだよぉー残っているのは俺一人か?ど田舎だからなぁ~しかし美味いんだよなぁ~ジークの酒は…後は女なんだが…ケルンブルグとの行き来もあるし、山道も整備されれば馬なら三日で行けそうだ。どの途、王都に呼ばれることも多いかもしれねえしな。結局全員で受けることになりそうだな。」


 アストは意外だったが、確かにあの酒は十分魅力的だ。


 皆で受けることが決まって。一番の本心を口にする。


「実の所一番癪なのは、赤ん坊一人に金も、名誉も譲られた気がして我慢なんねーんだわ。きっちり返すもんは返してすっきりしたい、ってのが本心なんだがな。」


「俺も!」「「「私も!」」」


 結局全員同じ気もちだったってことかよ。話が一段落したところでジーク大好きのイストが心配そうにつぶやいた。


「でも、かなり無理していたんだね。ジーク君。」


「全然そんな風には見えないけどねぇ。」


 エリザは意外そうだが顔が心配している。


「しっかり、守ってやろうぜ。」


 そんな二人を見て思わず呟いてしまう。


「えぇ~私たちが守られる方じゃないの?」


 それを聞いて、すかさずエリザが突っ込んでくる。言いたいことは判るよ。でもちったぁ~深く考えてくれ。しかたないので言葉で説明する。


「だから、無理させらんねぇって言っていただろう。無理するような状況にしない様に気を付けるってことだよ。」


「「なるほど~」」


 魔道士二人は納得したが…


「「歩くトラブルメーカーだから難しいよねぇ~」よなぁ~」


 あとの二人は納得しなかった。


「貴族様ってすごいわね。」


 いきなりエリザが呟いた。言葉足らずだったことに気付いて話を続ける。


「すべての神様の加護持ちのことなんて教会のお話でしか知らなかったわ。」


「あんな裏話が在ったとはな。それも貴族様の中では常識っぽい言い方だったよなぁ」


 俺もエリザに同意見だ。


「ボンクラ貴族はどうだか知らないが、裏では結構有名な話みたいな感じだったな。」


 アストも気になったようだ。


「貴族の末席に加わるのなら、ある程度情報集めしといた方がいいんじゃない?」


 エリザが危機感を持ったのか情報取集を言い出した。しかし俺たちは平民の単なる冒険者だ。そんなつてはねぇ。


「そう言えばアンナさんて、元ケルナー辺境伯家のお抱えじゃなかったっけ?」


 イリスがふと思い出したように行った。


「そう言えばそうかも、私たちにしたら一番身近よね。」


 エリザも思い当たる節があるのだろう直ぐに同意した。


「ちょっとこっそり会ってくらぁ~」


 善は急げ、とにかくギルマスに会いに行ってみよう


「私も行くわ!」


 するとうちの知恵袋のエリザも一緒に行くと言う。他の連中の予定も指示をだす。


「分った。アストとイリスは明日の準備をしていてくれ。ピルネは…」


「ジークに借りた魔法書を読む。情報収集は王都の魔法学園でする。」


 ピルネは良く分んねぇが、心当たりを当たるのだろう。


 大体の話と食事も終わったので、それぞれが動くことにする。


 ちょっとワクワクしているのが不思議な感じだ。


 ジークに毒されちまったかなぁ?


読んでくださってありがとうございます。

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