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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
5章 のんびり田舎生活?
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60 「お義母さん」て呼ぼうかな? 


 なんだかんだ言って結局、山小屋?は認められ、便利なので扉と窓を付けることが決まった。


 そして夜になる前に、木を切って板に製材して、扉と窓を塞げる用に段取りさせられた。


「もう冬なので風が入ると寒いから」と言う理由だ。


 西の空には大きな夕日が見える。


 ♪夕焼け小焼けで日が暮れて♪ふーふふ、ふふふふ…カラスも一緒に帰りましょう♪


 ん?現実逃避していた。


 もっともな話なのだが野宿するんじゃなかったの?


 とにかく理不尽だけど頑張ろう。風邪をひくのは嫌だもん。


 木を数本倒して扉と窓の大きさに切ろうとしたけどうまい具合の大きさの木がない。


 仕方が無いので丸太を半分に割って何枚かの厚い板を作って並べることで許して貰った。


 流石に製材できる程、魔法をコントロールすることは出来ない。


「ジークでもできないことがあるのね。」


 気楽にノーラ姉が言ってくれる。


「当たり前でしょう。まだ、赤ん坊なんだもん。」


 唇を尖らして言い訳すると、


「「「今更それをいうの?」」」


 何人かの大人にハモられた。


「グスン。いいよ。いいよ。グレてやる。」


 作ってもらった夕飯を食べてすぐ、いつもの移動ベッドにこもってふて寝した。


 ◇◇◇


 次の日は、基本は御者の隣で道を均しながら、探索して地図に書き込む作業を行い、今晩も作る予定の山の宿泊所の材料集めをする。


 石灰岩は量がいるので見つけると補給させて貰った、グスン、文句言われたけど…


 木も大きい物を切って板にしとく。魔力を食うけどサンドブラストを使って強引に板にした。


 休憩中もあんまり出歩かず、鉄の塊を錬成したり、ガラスを錬成したりする。


 鉄の塊で釘と蝶番を作って、ガラスで板ガラスを作る。


 錬成空間で成形すると形状も粘土細工のように作れるから便利すぎる。まさにチートだよ!


 昨日のようなことは嫌なので準備はしっかりやっておく。


『忙しく働いていると一日はあっという間に終わってしまう法則』通り、あっという間に猪を解体した河原に着いた。


 流石に河原に山小屋はまずいので、水場から遠くなるが、河原より一段高い所を均してそこに昨日と同じ要領で家と馬小屋と壁を作る。


 昼間用意しておいた木の板と釘とガラスと蝶番で窓枠、ガラス窓、扉を作って開口部を塞ぐ。


 竈とついでに暖炉に煙突を付けて、切り株のテーブルと椅子を置いて出来上がり。


 不格好だが家らしくなったので満足していると、ガラス窓を見てあっけに取られている大人たちの姿があった。


「「こんなガラス見るのは初めてよ。」」


「「これがガラスなのか?本当に向こうが透けて見えるぞ。」」


 冒険者達が何か騒いでいる。


 うちの家族もジト目で俺を見ている。


 またやってしまったようだ。


「「「ん~ジークに常識を教えないとねぇ~」」」


 くしくも、祖母ちゃん、ママン、メリザにハモられた。


「あ~最近こんな事ばっかり…分ったよ。もう何もしません!」


 隅っこの方で、錬金術の練習に拾ってある薬草を薬にしたり、ガラスのコップを作ったり、鉄や銅などを精製したりして時間を潰すことにした。


 あと、書き写した魔法書もゆっくり見ることが出来るので、この際、旅の間に読みふけろう。


 二泊三日の山道の行程も、最後の一日となり、今までの二日と同じこと繰り返して三日目が終了する。


 無事にケルナー辺境伯領の端の村に辿り着いて、宿を取った。


 考えてみれば、今回は魔物に一切あっていない。


 肉の在庫と小遣いも欲しいので少しぐらい出て来てくれてもいいのにな。


 ◇◇◇


 結局ケルンブルクまでの五日の行程が無事に終った。


 ケルンブルグでは領主邸でお世話になる。


 到着早々ヒルデ小母さんが出迎えてくれた。


 ティーナとイザベルが一緒にお出迎えしてくれた。


 ヨーゼスは魔物退治に行っているらしく、途中の町で合流するとのことだ。


 内の姉二人とティーナとイザベルが集まってなんか話をしている。


 キャッキャと騒いでいるのが微笑ましい。


 前世で姪っ子と遊んでいた頃を思い出し少し寂しくなる。


 姪っ子の笑顔にどれだけ癒されたことだろう…


 そんなことを考えながら、ユリウス兄がいないことにふと気が付く。


 辺りを見回してみると、少し離れたソファーに座って本を読んでいた。


 最近も剣の鍛錬は欠かさないが、それに加えて魔法の本を読んだり、歴史書や戦記物も読んでいるみたいだ。


 俺も忙しいのでよくは知らないが、リーゼ姉さんと読んだ本について意見交換もしているみたい。


 もうじき五歳だが、幼稚園児が剣の修行に、魔法書や歴史書を読むのは英才教育が過ぎる気もする。しかし危険があちこちに転がっているこの世界の貧乏貴族には仕方ないことなのかもしれない。


 一人で納得していたら、近くでヒルデ小母さんとママンが話し込んでいた。


「どうしたの?いつも騒がしいユリウスが本の虫になって?」


「いえね。出発前にジークに模擬戦で負けてかなりショックみたいでね。」


「それでなんで、本の虫になるのよ?」


「『ユリウスは猪突猛進で相手のこと見ていない。じっくり相手のことを見て対策を立てないと勝てるモノも勝てないわよ!』って言ってやったの。そしたらね、ジークのことを観察し始めてあの通り本の虫になっているわけ。」


「えっ、じゃあジークは本の虫なの?」


「そういう訳じゃないんだけど『ジークがやっている事は凄すぎてとてもじゃないが真似できない。だから今自分にできることをするんだ!』ですって…なんか一回り大きくなって嬉しいんだけど少し複雑ね。」


「ユリウスも大変ね。ジークなんて化け物が弟なんですもの、堪ったもんじゃないでしょうに…腐らずに前を見て努力するなんていい男の片鱗見せてるじゃない?」


「でしょ!でしょ!洗礼式とお披露目が今から楽しみなのよ!」


「マリーのとこは子供が優秀ね。内の子もしっかりして欲しいわ。」


「ヨーゼスは魔物退治について行っているんでしょう?」


「そうなのよ。マリー達が王都の帰りに寄ったでしょう。その時にビアンカまで「魔法が使えて魔物も退治したことある。」って聞いて焦っちゃったのよ。自分で志願して、嫌がるローデリヒをお供に出かけちゃったの。」


「あらごめんなさい。うちのせいで迷惑かけるわね。」


「まぁ仕方ないわよ。ジークの側にいる子供には刺激が強すぎるからね。みんなやる気を失くしたりしなければ十分だわ。優秀なことはいいことですもの。」


「そう言って貰えると助かるわ。ジークは相変わらず自重を覚えてくれないし…」


「でもお蔭で開墾がかなり進んだんでしょう?それに山道も均し終わって泊まれる家も作っちゃったんでしょう?」


「そうなのよ。何もかもあの子一人でやっちゃうの。ところで相変わらず情報が早いわね。」


「さっきビアンカが嬉々として自慢していたわよ!『内のジークはすごいんだ!』ってね」


「あっちゃ~秘密にしなきゃなんないのに…ビアンカにはきちんと言っとかなきゃだめね。」


「誰も信じやしないわよ!エリザとピルネの仕業にするんでしょう?旨いこと考えたわね。」


「内の母がね。すぐに呼び寄せろってね…」


「あ~小母様がねぇ~納得したわ。また、ジークの入れ知恵かと思ってた。」


「あらあら、何でもジークのせいね。うふふ。」


「実際そうじゃない?ジークがいなかければ、自重してればあなたも王国もこの世から亡くなっているかもね?」


「それはそうなんだけど…」


「マリーも私もずいぶんあの子には助けられているのよ。もしジークがいなくなったら?あんまり子供に甘えてはいけないんじゃないの?」


「ヒルデ先輩の仰る通りです。私達大人がもっとしっかりすべきですね。」


「そうそう。折角ジークが山道だって整備してくれたんだもの、しっかり運用しなくちゃね!整備状況を詳しく教えて?王都から戻ってきた時にすぐ動けるように準備するわよ!」


「はい、分りました。でも、その前に穀物を現金に換えたいんですが…」


「マリー?ケルンブルクで穀物を売るつもり?あなた情報集めはきちんとした方がいいわよ!王都やキュプフェルトでは穀物が急騰して、とんでもないことになっているの。知らないの?王都で折角ジークが買い占めとけって言っていたの、忘れているんじゃないでしょうね?」


「あっ、そう言えば…セバスとかどうしたのかしら?場合によってはキュプフェルトに下ろした方がいいかもしれませんね。」


「はぁ~当たり前でしょう?あ~これだからジークが自重できないんじゃないの?しっかりしなさい!マリー!」


「すいません。」


 二人に責められているのかと思ったらママンが怒られていた。


 頑張っていれば、解ってもらえる人には解ってもらえるんだ!


 すごく報われた気がして、嬉しかったよ。


 やっぱりお義母さんて呼ぼうかな?


『ママン?人生ってままならないでしょう?』


読んでくださってありがとうございます。

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