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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
5章 のんびり田舎生活?
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56 冒険者達の事情

少し不快になる表現があります。

ご注意ください。

 


「あー、やだ、やだ、ゴブリンやオークの巣穴潰しは気が滅入るわ。」


 エリザが心底げんなりした様子で愚痴を漏らす。


 スタンピートの撃ち漏らしを、軍と連携して討伐して回っていたんだが、ゴブリンやオークなんてのは質が悪い。巣穴作って女攫って孕み袋にして数を増やす。


 数を増やしては村を襲って男は甚振りながら食い殺し、女は甚振りながら孕み袋だ。


 とにかくゴブリンとオークを見かけたらすぐに討伐が常識だ。


 ただ、集団の危険度の割に個体の戦闘力が低いのでランクは駆け出しでも狩れるFとEだ。


 なもんで単価が安い。十匹以下の群れならミュラー家の子供達でも狩っていたくらいだからなんてことないんだ。


 ただ、巣潰しともなると話は別だ。上位種に統率されているは、地の利はあるは、最悪痛めつけて弱り切った女を肉の壁に使うは、とてもじゃねーがCランクの冒険者でも手に余る。


 A、Bランクの討伐が終わったと思ったら、次はその手のいやらしい依頼がこっちに回ってくる。それも指名依頼とくれば断るわけにもいかない。


 Bランクになったらもっといい思いが出来るのかと思っていたがとんだ貧乏くじだ。


「男の俺でもあの光景は見たくないぜ、真っ裸にひん剥かれて、散々弄ばれて肥溜めみたいな所に転がされ…助けるたびに殺してと縋り付かれるのは精神的にもたねぇぜ。」


 顔を顰めてエリザに首肯する。


「あーもう!ギルドに報告にも行きたくない!Bランクに上がったら、もっといい生活できると思ったのに!また、いるのかしら?ボンクラ貴族のお使いは?」


 さらに、うちには魔導士が二人もいる。インフェルノやエクスプリュージョン、トルネード等の上級魔法を使える上に回復魔法も使えることになっちまった。


 俺たち前衛も十五人にも満たない人数でAランク魔物を片っ端から討伐したパーティに参加したというだけで英雄扱いされちまっている。


 アストなんかは調子に乗っちまってチヤホヤされるのを楽しんでいるが、俺とイリスは罰が悪くて仕方ない。


 ギルドでもてはやされ、酒場でもてはやされ、気が休まるときがない。


 さらに悪い話が(飛びついて喜ぶ奴らもいるが…)キュプフェルト救出作戦の噂を聞いた貴族どもがお抱えにしたいと言い寄ってくる。


 一流の魔導士に英雄級の戦士パーティを抱え込むと貴族としての格も上がり、いざという時戦争にも借り出せる。


 貴族としては非常にメリットがあるのだが、冒険者としてのモース達には微妙なところだ。


 確かに生活は安定するし、命の危険度も格段に下がる。貴族の威光を笠に着てやりたい放題やる冒険者もいる。


 モース達はできるだけ自由に稼ぎたかった。戦争に駆り出されるのも嫌だし、面倒な貴族との関りもできるだけ避けたい。


 ギルマスを通して断って貰っているが余りにも多くてうんざりしているのだ。


 あのクソガキのせいだが、今更いってもしかたない。


「なんにしても、討伐報告行かない訳にはいかんだろう。さっさと終わらせて報酬もらっちまおうぜ。その方がすっきりする。」


 色々考えても仕方ないとエリザを促す。


「そうよね。モース。お金には困ってないんだし…普通はお貴族様に手柄もお金も殆ど取られてしまうのよね。あの人達ったら、たいして役に立ってない冒険者に人数均等割りの山分けだって云うんだからホントお人好しよね。ふふふ」


 何がおかしいんだか妙に機嫌よさそうに話すエリザに釘を刺す。


「おかげで立てても無い手柄譲られて、騒がれているんだからいい迷惑だ。」


「それもそうね。ほとぼりが冷めるまで、どこかの田舎でのんびりしようかしら?」


 もうすぐギルドに着くという所でエリザが何となく呟く。


「いい所知っているわよ。陸の孤島であなた達が行っても全然騒がれない所。ちょうどお誘いも来ているから行って来れば?」


 不意に後ろから声を掛けられ、俺とエリサはギョッとして振り返る。


 そこには胡散臭そうな微笑みを浮かべた、この街のギルマス、アンナが立っていた。


「あら、驚かせちゃったかしら?討伐の報告でしょう?中で聞くからどうぞ。」


 そう言ってつかつかと俺達を先導し、自分の執務室まで案内する。


 秘書がやってきてお茶を出し、報告を聞いてくれた。


「それでね。相変わらずいくつもの貴族から召し抱えの話が来ているんだけどね。」


 徐にギルマスが話し始める。ここまではいつものことだ。


「その中にあなた達もよく知っている貴族があるのよ。」


「あんまり、お貴族様とは面識ないんですがね。」


「一番よく存じているのでシュタート男爵様なのですが、まさか?」


「あらエリザさん勘がいいわね。そのまさかよ。と言ってもあそこ貧乏貴族でしょう?そんなに資金的な余裕もないから条件面で色々相談したいんだって。すぐに従士として来てくれてもいいんだけど、不安なら暫く冒険者としての依頼ってことで受けてもらえると助かるらしいわ。」


「依頼って何ですか?」


「ジークのお目付け役に、領内の調査依頼ってことよ。あそこの領地無駄に広いんだよね。でもってどこに何があるかも不明なのよ。竜の森があるのは分っているんだけど何処から魔物の領域かも不明。そこで腕のいい冒険者に調査して欲しいってことなの。」


「また、坊主のお守ですかい。っていうかお守なんていらんでしょう?」


「あら。勘違いは困るわよ。お目付け役よ。お目付け役!」


「なおさら。悪ぃですよ。あの坊主言うこと聞かねぇは、調子に乗るはで手が付けられねぇ」


「でも、あなた達も生き残っているでしょう?」


「そりょあ、そうですが…」


「それにね、今は里から少し離れた場所で黙々と開墾やらされているらしいわ。そのお手伝いも兼ねてってことかしら?」


「まぁ、命のやり取りなしに、のんびりできるんならいいんですけどね。」


 少しほっとした表情になるモースにアンナは畳み掛ける。


「ある程度調査が進んだら、あの村に本腰入れてギルドを開かないとなんないのよ。だから、ギルドからも調査依頼は出そうと思っていたの。ちょうど渡りに船なのよ。お願いだから調査依頼だけでも受けてきて頂戴。どの途王都に一緒に行くんでしょう?いいじゃない?一度南西の果てを見に行って来れば?」


「わたしは、いいと思うわよ。しばらく田舎でのんびり調査と土いじりしても。」


 エリザが何故かニコニコと了承しようとするので慌てて言葉をかぶせ気味に発した。


「そういうが、あの坊主だぞ!のんびりさせてもらえるかわからねぇ。とにかく一度持ち帰って皆で相談させてくだせぇ。」


 アンナが面倒臭そうに顔を顰めながら聞いてきた。


「取り敢えず他の貴族の件は断っとけばいいのよね?ガイエス辺境伯なんてとこからも来ているんだけど?これ断るのも大変なのよね。いっそシュタート領のお抱えになったって噂流しちゃおうかしら?そうすれば面倒臭い仕事が一つ減るし…」


 ニコニコと矢継ぎ早に断った場合の話もしてくる。


「それからケルンブルグにいるんなら、まだまだ巣穴つぶしあるからよろしくね!助かるのよBランク下位の冒険者ってこういう雑用で信頼度稼いでもらえるから…」


「げぇっ」


 思わず声を漏らしちまった俺にニコニコとエリザが言ってきた。


「退路を断たれちゃったわね。」


 話が一段落ついたのでギルマスがさっさと話を切り上げた。


「帰る時、受付で報酬受け取ってね。返事期待しているわ!」


 ◇◇◇


 拠点の宿に帰りギルマスとの話を仲間に丁寧に説明する。


 ピルネ:「了解!」


 イリス:「巣潰しも、周りが五月蠅いのも、もううんざり」


 アスト:「田舎はいやだなぁ~酒は少ないし、女もいない。巣潰しよりかはマシだがな。」


 と言うことで全員一致でシュタート領に向かうことになった。


 何故か知らんがギルマスの注文でワインやエールなどの酒をしこたま運ばされることになった。



読んでくださってありがとうございます。

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