55 かいこんと混沌?
領政会談の後、オットーも忙しいと言うことで、古株のケインとアナベルが俺のお世話役に抜擢された。
会談後の二日で五百メートル四方を開墾して、快適に過ごせるように、簡単な井戸を掘って、土魔法で壁と屋根のある十メートル四方の簡単な小屋を作った。
テーブルとイス代わりに切り株をちょっと加工したものを据え付けて、土魔法で簡単な竈も作ってある。移動式籠ベッドを置けば宿泊も出来てしまう。
調子に乗ったのがまずかった。
お蔭で、開拓地にいる時間は伸びるし、差し入れにママン達が来なくなるわで、寂しい毎日が続いている。
御飯はどうしているのかって?
ケインとアナベルが俺の為に、肉入り野菜スープと麦粥を作ってくれているのさ。
二人には悪いんだけど少し癒しが欲しいのよ。
開墾初めて二週間経つが大体仕事もルーチン化した。
朝、下草を刈り取る前に探査魔法を使ってキノコや、薬草、木の実や果物がなる木がないか確認する。
あった場合は、ケインとアナベルに知らせて採取してもらう。
偶に、マツタケやトリュフがある時があるのでそういう時は林のまま残しておく。
採取をしてもらいながら、下草を刈っていき、終われば木の枝打ちをする。
果物や木の実がなる木はケインやアナベルと相談して置いておく。
枝打ちをしているとケインとアナベルが使えそうな枝の仕分けをしてくれる。
枝打ちが終わる頃に一度休憩を入れて牛乳の入った水袋に吸い付きご飯を食べる。
木を伐採して収納して、広場になっているところにまとめておく。
切り株を土魔法で引っこ抜き。岩や大きな石を掘り出して広場に持っていく。
最後に小さいトルネードで枝葉や灌木、下草を切り刻みながら土魔法で土を耕して出来上がり。
ここまでやってお昼ご飯を食べる。牛乳とケインかアナベルが作った昼ごはんだ。
昼ごはんの後、ベッドで一時間ぐらいお昼寝して、昼から同じ作業をして終わったら屋敷に帰る。
移動は馬車だと時間がもったいないので馬に乗せて貰っている。
本当に効率優先で、前世の現場仕事を思い出してしまう。
ただ、前世は監督だったので、体を動かしている今の方がストレスは掛かってないのかもしれない。
ただ、赤ん坊が肉体労働って有りなの?
1日8ヘクタールの土地を開墾してるので2週間で112ヘクタール。
USJが54ヘクタールなので大体USJの二倍くらいを開墾したことになる。
と言ってもUSJなんて行ったことないから広さ的にピンとこない。
とにかく後、一か月は頑張るのですよ。はぁ~
◇◇◇
いつの間にか物の鑑定時に詳細が表示されて、二重鑑定もできるようになっていた。
さらに、現在地の情報が(W,X,Y、Z)の四軸表示で表されている。
(X,Y,Z,)は縦横高さなのだが、Wはどうも収納魔法に使っている空間だというのが判明した。
偶然だけど…
座標軸が分かれば転移や転移門を開けるんじゃないだろうか?
W軸基準でその他の(X,Y,Z)軸を平行移動させればいいんだから…
本当にそうなのか?空間魔法の本は写本したから目を通さなきゃいけない。
多分解釈は間違っていないと思う。
さらに、さらに鑑定スキルで自分を鑑定すると加護の項目が増えていた。
人族 ジークフリード・フォン・ミュラー LV38
神の加護
光、闇、水、火、風、土、命、混沌?
神の加護が増えた。良く分らない混沌の加護も…
混沌の神って邪神じゃなかったけ?
もしかして俺、魔王とか?取り敢えずこれは思考停止で…
やっぱりこの世界に神様いるんだね。
転生したときに会ってないけど、もしかしたら俺がイレギュラー?
それとも、記憶を残しているのがイレギュラーで異世界転生はあたり前?
とにかく鑑定レベルが上がるのはいい事だ。夢が広がる。
◇◇◇
王都から戻ってからサラとあんまり話してない!
生まれてすぐのころは、サラが色々お世話してくれていた。
ママン、メリザ、サラの順だけど何かあればすぐ飛んできてくれたのはサラだし、初めて魔法を見せてくれたのもサラだ。よくお散歩に抱いて連れて行ってくれたのもサラだ。
前世で見慣れた黒髪に一見無口でクールな印象だが、実は優しくちょっとドジっ子キャラのサラは俺の癒しだった。
ギラン山脈で野営している時、若い従士がサラの話を肴にして飲んでいる時は「俺のサラを汚すなぁ」と内心で叫んだものだ。
おっさんのくせに意外と青い所がある。
と言うのも最近は開墾と言う名の単調な労働に明け暮れているため心が荒んでいるのだ。
サラはサラで新しいレシピの研究に忙しく、他にも糖蜜から砂糖を析出させようと創意工夫しているそうだ。
一緒に研究したいのだが開墾でそんな余裕はない。
何故なのかメリザ発案のメイドの戦闘力アップ計画も発動し、メイドたちも武術の鍛錬に魔法の鍛錬に忙しいようだ。だれのせいだ?
◇◇◇
村の鎮守の神様の今日は楽しいおー祭りだ♪
ドンドン♪ヒャッララ♪ドンヒャララ♪
作物の収穫も終わってひと段落し周りはお祭りの準備に忙しいようだ。
特に成人した未婚の男女はそわそわしている。
恒例のダンス時に、カップルが出来てそのままゴールインすることが多いらしい。
今年の男たちの獲物は内のメイドのサラのようで、用もないのに領主館周辺をうろつく輩が増えている。僕のサラに手を出そうとするとはいい度胸である。
ふとサラのことを思ったのも、周りの雰囲気に当てられている影響なのだろう。
当人のサラは村のお祭りは賑やかで、ご馳走も出るので大好きなイベントらしいのだが、男っ気は全くない。
「誰と誰がくっついた。」「あの子は片思いのつもりだけど実は両思いだ。」「あの三人三角関係で修羅場なの!」もっぱらニーナと二人でキャッキャと噂話に興じている。
心配したメリザとママンが尋ねたら、どうも王都に幼馴染がいて、年に一度王都に帰るのを楽しみにしているらしいのだ。
村の男たちの死屍累々と積み上げられた屍が幻視される。
俺もその一人?orz
娯楽で綱引き大会の催しでもやったらどうかと提案してみれば採用されて賞金も用意するようだ。
他にリバーシ大会も行われて、秋祭りの準備段階から住人の盛り上がりも例年以上らしい。
お祭り直近に肉が大量に欲しいので狩りに連れて行かれることになっている。
完全に便利屋あつかいだ。orz
領主一家は貴賓席で座って飲み食いしていればいいだけなので特に問題はないようだ。
俺もお披露目されるらしいが、ママンに抱かれていればいいだけ。
変なトラブルに巻き込まれ、秘密にしている事がばれないように気をつけなきゃね。
◇◇◇
そういえば、モース達冒険者チームは来ないのだろうか?
一緒に命を掛けた仲って、かなり打ち解けるよね?
というよりエリザ、ピルネ、イリスの女の子たちに癒されたいだけ、とも言う。
何にしても一日も早く開墾修行を終わらせたい。
いっそのこと最大魔力のインフェルノで焼き尽くしてしまいたくなる。
そんなことできないのは重々承知なのだが…
『くっそー、人生ままならないやんけー』
読んでくださってありがとうございます。




