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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
5章 のんびり田舎生活?
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52 新しい日常



 朝、赤ん坊用のベッドで目を覚ますと、ママンを起こさず外に出る。


 赤ん坊用ベッドを使っているのは、当然夫婦の夜の営みを邪魔しないためだ。


 ビアンカ姉はママンと一緒のベッドに眠っているんだけど全く目を覚まさない。熟睡加減がハンパない。爪の垢を煎じて飲みたくなる。


 父さんはまだまだ元気だ!妹か弟の顔を見る日もそう遠くはないだろう。


 庭に出てトテトテと何週か走って体を温め、地面に座ってストレッチをする。


 でも赤ん坊なので無茶苦茶体は柔らかい。


 ストレッチの意味あるんか?と思うけど一応やっとく。


 今はほとんど身体強化は使っていない。


 LVアップのせいだろう、四頭身ぐらいで手足が小さくバランスが悪いせいか偶によたよたするが、とくに動作に問題なく動ける。と思う。


 腕立て、腹筋、スクワットを十×五セットやって正拳突き五十回、前蹴り、足刀、回し蹴り、ローキック、足払いを左右の足で二十回ずつやっていると夜が明ける。


 手足が短いので誰かに見られたら、赤ん坊がかわいらしく踊っているように見えるんじゃないだろうか?


 とにかく誰にも見られない様に気を付ける。


 手刀や肘打ちを入れた型でもあるといいんだけど、あいにく空手はやってなかったし、高校時代に少林寺拳法をやっていた友達に防具を借りてじゃれ合っていたくらいだからよく覚えとらん。


 柔道の打ち込みなんかもやれるといいんだけど…今度立木に服着せて山下君一号でも作ってみようかしら。


 反復練習して動きの無駄を省くこと、イメージと体の動きを一致させることが大切だと思う。さらに体に動きを覚えさすことも重要だ。


 この世界では努力は裏切らない。格闘スキルがつくかもしれないしね。


 実はヘルタイガー戦で咄嗟に動けなかったことを反省して朝練を始めた。この世界はいつも死と隣り合わせだ。自分の死なら受け入れるが、家族の死は受け入れられない。だから努力する。


 最後に座って息を整えながら魔力を体に循環させ、細かい魔力操作を行なう。最後に魔力を圧縮する練習もしておく。


 そんなことをしていると、朝食の支度をしにオットーやメリザ、サラが動き出すのでこっそり部屋に戻ってママンを起こしてお乳をもらう。


 ◇◇◇


 朝食までは旅に出る前と同じだが、朝食も家族と一緒に離乳食を食べる。


 ママンのお乳も含めて、食事の量は倍以上になっているんじゃないだろうか?


 王都から帰ってから朝食後の剣の稽古も家族に混じって参加している。


 と言っても俺は指が短いからまだ木剣は握れない。握れる太さの棒きれを振り回して型を覚えているところだ。剣術スキルが付くといいな。


 何故かはわからないがニーナも一緒に稽古しているんだけど…不思議だ。


 ◇◇◇


「ジーク相手をするの!」


 掛稽古の時は必ずビアンカ姉が声を掛けてきて、俺に向かって本気で木剣を振り回してくる。流石に毎日型稽古をしているだけあって中々様になっている。というか少しは手加減して欲しい。


 まともに木剣を受けると棒切れが折れてしまう。必死で受け流そうとするのだがビアンカ姉は打ち込みが鋭いので中々難しい。


 足さばきでビアンカ姉を翻弄しようとする。


「ジーク卑怯なの!男なら真正面から討ちあうの!」


 無茶で脳筋なことを言ってくるので困ったものだ。


 こないだリーゼ姉とビアンカ姉のコソコソ話を聴いてしまった。


「ジークは、あたしのライバルなの!強敵と書いてともと呼ぶやつなの!ジークに絶対一本入れてやりたいからリーゼねえさんは稽古の時は手加減抜きで鍛えて欲しいの!」


 なんてことをおっしゃっていた。怖や怖やである。


 ユリウス兄は何をしているかと言うと、ひたすら父さんに相手をして貰っている。


 身体強化を覚えて攻撃に緩急の差を入れ、駆け引きが上手くなった。


 剣で魔物を倒すのが目標らしい。


 兄さんが戦える魔物に駆け引きは要らないんだが…あえて突っ込まないことにする。


 剣術が一通り終わると次は弓の練習になる。


 俺は流石に弓を弾くだけの力はないので、十本だけ身体強化を使って弓を射る。弓術スキルが付くといいなと思ってやっている。


 弓の練習になると、リーゼ姉がハンパない集中力を発揮している。ほとんど的の真ん中に命中させているからすごい。


 旅の間に自分の戦闘スタイルを見つけたのだろう。上達のスピードがハンパない。弓の練習はメリザが見てくれるのだが、それも上達の一助になっているようだ。


 姉兄は旅を終えて一回り大きくなったようだ。


 話は変わるが、メリザはニーナに短剣術を教えている。でもって俺もその横でセバスに貰ったナイフで一緒に練習する。強化は使わないから、かなりナイフが重い。だがいい練習になる。


 其々のメニューで武術の訓練を二時間ぐらいすると体が疲れる。


 皆でお茶を飲んで休憩する。この時、俺はママンにお願いしてお乳を飲ませてもらう。


 その後、姉兄は祖母ちゃんに魔法の練習を見て貰って読み書き算術の座学に突入する。リーゼ姉は別メニューできっちり午前中いっぱいしごかれる。


 俺はというと、ママンと執務室へ行き領内の耕作状況や、今後の開発について相談したり、実際に開拓に行ったりしている。


 ◇◇◇


 今日はオットーと一緒に、三の村予定地に行って開墾する。


 往く道は土魔法を使って道を均しながら向かった。セメントで舗装しながら行けると道がぬかるまなくていいんだけど、今はペンディングだ。材料がそろわない。ママンと相談しなきゃだね。


 三の村予定地に着くと、木の伐採が終わって雑穀を植えてある場所はあるが、村が作れる広さはなかった。


 開墾できている農地を中心に周りの森を切り開くことにする。


 まず、ウインドカッターで下草や雑木を刈って行く。


 もう秋なので下草も枯れ始めているのだがやはり、日本の里山と違って手入れされていない森は手ごわい。よく冒険者は森の中で活動できるなと感心してしまった。


 一時間ぐらいかけて、開墾してある横の二百メートル四方の下草を刈った。


 次もウインドカッタ―で木の枝打ちをする。切り倒した時に枝を残したままだと、材木として保管するのに場所を取って仕方が無いからだ。とにかく一本一本地道に枝打ちをする。


 オットーは大きな枝や使えそうな枝を選別して避けてくれている。


 一時間ぐらい黙々と枝打ちし、やっと目的の木を切り倒せるとこまでこぎつけた。


 ちょうどお昼時でママンとメリザがお昼ご飯を持って来てくれた。


 メインは、まだママンのお乳を「ちゅぱ、ちゅぱ」しているんだが、果物を細かく切ったモノやパンをスープでふやかしたものも食べる。


 お腹いっぱいになると眠くなるのだが我慢してエアサンダーで片っ端から木を切り倒してゆく。十分もしないうちに二百メートル四方の広場ができた。


 土魔法で切り株を掘り起し、小さなトルネードで伐採した余分な枝や灌木、下草を切り刻んで土魔法で混ぜながら耕せば、開墾農地の出来上がりだ。


 但し、今日は切り倒した木を収納魔法でしまって作業はおしまい。お昼寝をしに屋敷へ帰る。


 俺はあくまで赤ん坊、基本寝るのが仕事。寝ている間に成長するのだからきっちり睡眠時間は取らないといけない。さらに、体力も魔力もかなり消耗している。回復は大切だ。


 途中、村の材木置き場によって切り倒した木を置いておくときちんと加工してくれるらしい。


 材木を置いたあたりで眠気の限界が来たので馬車の中で眠りに着いた。


 一時間ぐらい眠ると目が覚める。気が付いたらベッドの中だった。


 屋敷の中をトテトテと歩いているとメリザが期待した目でこっちを見つめている。


「新しいレシピが欲しいんだな。」と当たりを付けてメリザに話しかける。


「メリザなんか用があるの?」


「ジーク、暇なら調理場に来ない?なんか新しい料理とか思いつくかもしれないわよ?」


 やっぱり新しいレシピが欲しいんだ。


 メリザに抱かれて調理場に行く。


 材料は、ニンジン、キノコ、玉ねぎ、ジャガイモ、ニンニク、ハーブに最近いつも煮込んでいる魔物のガラスープ。卵が数個に牛乳、バター、スパイス類。


 まずパスタを作ろう。


 小麦粉、卵、植物油、塩を入れヘラで底から切り混ぜる


 ぼそぼそしたら周りの粉を巻きこみながら押しまとめる。まとまりずらければ水を少し追加。


 板に打ち粉をして手のひらでよく捏ねる。表面が滑らかになるまで。打ち粉で耳たぶ位に固さも調整


 二つに分け濡れた布に包み15分以上休ませる。しっとり伸びやすくなります。


 打ち粉をして手の平で板に押しつける。麺棒で十字にのばす。最後に斜めを麺棒に巻くと四角に。


 1-2mm厚位にしたら麺に打ち粉をする。3つ折りにして6ミリ位に切る。膨張するので細めがよい。ふぞろいでも大丈夫。


 麺をほぐし打ち粉をまぶす。たっぷりの湯と適量の塩で茹でる。最初2~3回だけかきまわす。 1~3分で浮いたらすぐあげる。


 食事直前に茹でましょう


 次はソース作り、植物油をひいたフライパンで玉ねぎを炒めしなしなになったら干し肉をほぐして入れ炒める。


 干し肉と玉ねぎをフライパンの端の方に寄せ、そこでバターを溶かし、小麦粉をダマにならないように振りかける。


 泡立て器等でダマができないように素早くかき混ぜ、牛乳を加え干し肉、玉ねぎともからめながら火をとおす。


 塩、スパイスで味を整える。


 茹で上がったパスタにからめ完成!


 次はホワイトシチュー


 フライパンに油とにんにくのみじん切り、玉ねぎを入れ熱する。香りが立ってきたら肉を入れて炒める。


 玉ねぎがしんなりしてきたら、人参、キノコ、じゃがいも、を入れ、エール(白ワインがあればと思う)とガラスープを加える。


 野菜に火が通ったら小麦粉を振りかけて、上から牛乳、を加えてじゃがいもが柔らかくなるまで煮る。


 最後に塩、スパイス、ハーブで味を整えてできあがり。


 てな感じにメリザに言うと、夕食には十分美味しいクリームパスタとクリームシチューが出来上がっているのだから内のメイドはすごいと思う。


 なんでそんなにレシピを知っているのかって?


 一人暮らしの長い独身男を舐めるな!貧乏だからできることも限られる。


 綺麗なお姉ぇちゃんと個室でキャッキャうふふなことをするには数万円必要なのだ。


 酒だってそうだブランド焼酎なんて店飲みするとすごいことになるが、内飲みだとそこそこで済む。


 さらに、クックパッドさんと言う強い見方もいたのですよ!


 あー旨い芋焼酎が飲みたいです。上手い焼き鳥食いたいです。塩じゃなくてタレが…


 閑話休題


 夕食の美味しさに家族みんなで舌鼓を打ってメイド達を褒め称え、レシピはノーラ姉の所に消えてゆく。


 そして、お腹が膨れると一日の労働の疲れがどっと押し寄せあっという間に眠りに着くのだった。


 くー零歳児から開拓なんて過酷なことやるなよ!


 自分で自分に突っ込みいれることからして悲しすぎる。


『人生はままならないよな。』



読んでくださってありがとうございます。

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