50 サクッと討伐!サクッと帰郷?
翌朝キュプフェルトへ向かって出発する。
メンバーは王都へやって来た時のメンバー+ノーラ姉さん+バルト一家+ヒルデ小母さんだ。
馬車は箱馬車二台と幌馬車一台。
出来るだけ急ぎたいので、大人は馬車の御者以外、全員馬に騎乗している。
宿場町によれば、飼葉と馬のお世話の段取りは出来ているらしい。
見つけた魔物を狩りながら最速で移動できるようにしてあるそうだ。
できる女はすごい!ヒルデおばさんを、真剣にお義母様と呼ぶことを検討したくなる。
◇◇◇
キュプフェルトまではあっという間に到着した。
近衛騎士団によって制圧され、魔物にもあわなかった。
キュプフェルトに到着すると街のみんなの歓迎がすごかった。
街に入るとユヅ様のパレード状態だ!父さん達、手を振るのガンバ!
完全に英雄の凱旋だ。
早速、領主館に案内され元家宰が引き継ぎを行なう。
領軍関係者は祖父ちゃんとは一緒に戦った仲なので、早速魔物の状況を報告されている。
バルト一家はすごく忙しそうだ。
◇◇◇
キュプフェルトで歓待を受け一泊して西へ進む。
ここからはヒルデ小母さんが情報収集して、効率よく魔物を狩れるルートを通って行く。
きちんとした魔物の位置を示した最新の地図が、立ち寄った宿場町や村に用意され、地図の通りに動く。
動いた先で、俺の索敵範囲に魔物を捉える。
魔物の位置を告げて、倒して、血抜きをして、収納して、次立ち寄った町で受け渡す。
すると解体するなり、運搬するなりの段取りが出来ているのだからすごい。
領軍や冒険者の配置や使い方がすごくうまいのだ。
誰が差配しているのか気になるが、とても勉強になった。
◇◇◇
まず、ヘルタイガーさんが現れた。
現れたというよりおびき出されたという方が正解。
ブラウンボアを捕まえて檻に入れて開けた場所に放置。
ヘルターガーが気付いて狩りに来たところを包囲殲滅する予定。
きっちり準備すれば効率よく、安全に物事が進む見本だよね。
ということでボアを食べているヘルタイガーの目の前に光魔法のフラッシュを使う。
閃光で目をくらませて、エアーサンダーで首チョンパ。
血抜きが終わると収納魔法に入れてすぐ移動する。
ブラックウルフの群れは十匹未満の群れは皆さんに任せて、十匹以上の時はエアーカッターでリーダーの首チョンパした後、適当に数を減らして後はお任せした。
レッドグリズリーやファングボアもお任せしている。
魔物の狩りに慣れたのか皆危なげなく倒している。
困った事に、Cランク以下の魔物の時はリーゼ姉やユリウス兄、ビアンカ姉まで参戦しているのだから内の家族ってすごいよね。
「Aランク魔物の討伐も見学させて…」やっぱりうちの姉兄はごねた。
「ジークが側にいるんだからいいでしょう?」と言う理屈付きだ。
渋々ママンが折れてしまったが、見せてしまってよかったのだろうか?
ヘルタイガー討伐後、ショックが大きくて暫く凍り付いていた。
ホント武闘派の姉兄やだー
サーベルタイガーの群れが居たのと、ブラディーグリズリーが二匹居たのには驚いた。
両方ともすんなり首チョンパできたので問題なく魔物の討伐を終えケルンブルグに到着した。
まずはギルドに立ち寄り、狩った魔物の報奨金を受け取る。
魔物の素材も受け渡しお金に替える。
モース達冒険者とはここでお別れだ。
積もる話もあるだろうに話題は俺の話。
「くれぐれもジークのことは内密にしてくれ。」
父さんが言うと、モースが答える。
「坊ちゃんの話をしても信じる奴はいませんよ!ただ、旦那様や奥様、騎士団長の英雄譚を聴かせろと五月蠅いでしょうけどね!」
「それは適当に頼む。次は冬の王都行きになるな。」
「へい、またよろしくお願いします。」
そんな話をしてお別れした。
辺境伯邸では歓待され、家族みんなで和やかに会食が行われ、ゆっくりとベッドで眠ることが出来た。
◇◇◇
翌朝、ケルンブルグを出発する。
王都から借りてた馬たちはお返しして、二台の箱馬車で移動だ。
ノーラ姉さんも久しぶりの里帰りをするらしく非常に機嫌がいい。
来るときは眠っていたため、初めて見る風景を楽しみながら馬車に揺られる。
休憩中は家族以外いないので、好き放題魔法を使いまくってた。
みんなもう慣れたせいか、地形を変えても怒られなくなった(笑)
ケルンブルグを出て二泊し、いよいよギラン山脈の山道である。
オットーにお願いして先頭の馬車の御者席の隣に乗せてもらった。
馬車が走りやすいように山道を土魔法で均しながら走って行く。
人が歩くのより少し速いくらいなのだが、集中しないと遅れてしまう。
使う魔力量も結構必要なので、全部均すことはできない。
ちょっと悔しいが、要所を押さえて何回か往復すれば大分ましな道になるだろう。
ブラッディ―グリズリーを倒した森を過ぎ、ファングボアを解体した川辺で一泊する。
懐かしい光景だがもう一年以上経つような錯覚に陥った。
夜が無茶苦茶寒かった。
王都からの帰りは宿場町や道中の村をヒルデ小母さんが段取ってくれていたので、きちんと宿に泊まれていた。
野営は三週間ぶりぐらいになるのか?
周りの風景も完全に秋だし、山を登っているのだから寒いのは当たり前だよね。
仕事に追われて季節を感じる余裕がなかったときの感じに似ているのかな?
仕事の山が終わってふっと季節の移り変わりを感じて愕然とするあれだ!
くっ赤ん坊なのになんで?なんで?と頭を抱えてしまう。
とにかく村まであと二日頑張ろう!
そして、オイラの山道均しの旅は続き、集中している時の時間は早く過ぎる法則であっというまに、狼に夜襲された所に着く。
昨夜の反省を込めて今日はママンの毛布の中に潜り込む。
暖かくていい匂いがして安心する。
でも、ふと空を見上げて思い出す。
魔物との戦いを思い出しながらふと想う。
また、生き残ってしまったな…
いや、転生したんだから死んでいるのだけど…
『死ねなかった』の方がいいのかな?
悲しそうにママンが呟いた。
「ジークお願いその目はやめて、あなたが生まれてきた時と同じ目をしているの。今にも消えてしまいそうな。とても悲しくて寂しい目。あなたの色の違うきれいな目が台無しよ。」
そう言って俺のおでこにキスをする。
「前にも言ったでしょう。あなたは死なないは!私が守るから…」
あーママンには全てお見通しなんだな。
ママンは続ける。
「ジーク。あなた達は、私の希望なの。命を粗末にしないで。無茶をしないで。お願い!」
心の中で呟く。
僕の希望はママンなんだ。ママンがいないとダメなんだ。だから…
死にたがりの僕はまだ心の中で蠢いているけど、死にそうになった時に思い浮かべたママンの笑顔がある限りまだ頑張れる。
そして一言つぶやいた。
「ママン、ありがとう。大好き!」
ギュッとママンの胸に抱きついて、そのまま暖かい夢を見た。
翌朝起きて村を目指す。土魔法を使って道を均しながら。
周りの景色が変わってゆく。
遠くの方に村が見えてくる。
ガタゴト、ガタゴト。
ドンドン村が近づいてくる。
ガタゴト、ガタゴト。
僕達の屋敷が近づいてくる。
赤ん坊には、長くて過酷な旅だったなぁ~
「もう二度とこんな旅は嫌だよ。」
ふと、声に出してしまった。
隣で御者をしていた、オットーがニヤニヤしながら返してきた。
「そりゃー無理ですぜ、坊ちゃん!坊ちゃんが、トラブルを呼んでいるんですから…付き合わされるこっちの身が持ちませんよ!」
オットーのくせに言いたい事を言ってくれる。
大事なことなので二度言うことにした。
「もう二度と、こんな過酷な旅は嫌だよ!」
相変わらずオットーは生暖かい目でこっちを見ながらニタニタ笑っている
ふと屋敷を見るとサラと祖母ちゃんが玄関の前で手を振っている。
『僕にも帰れる所があるんだ。こんな嬉しいことはない。』
何処かで見たセリフを心の中で呟きながら、初めての旅が終わったことを実感するのだった。
拙い文章を読んでいただきありがとうございま。
とりあえずジーク君が帰郷してひと段落です。
普通の転生ものなら10話ぐらいで済むことを57話まで引っ張ってしまいましたorz
書くのってホント難しいですね。
知識のなさを、語彙力のなさを痛感します。
ところで、GW頭で「がんばりゃ期間中、1日2話掲載して区切りがいいんじゃね?」
とか思っちまいまして、調子にのって全部出しちゃいましたw
とりあえずストック切れです。
と言うことで、また、掲載は少しお休みさせてください。
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ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。




