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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
4章王都は怖い?怖い!
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49 写本はつらいよ

 



 翌日女王陛下から図書の閲覧を認める書状が届いた。


 陛下は意外に仕事が早い?


 命じるだけだからね。周りの文官が優秀なのか?はたまたブラックか?


 なんかブラック臭がぷんぷんするのだが気のせいにしておこう。


 ついでに父さんとママンにも呼び出しがあった。


 魔物討伐作戦の作戦会議をするそうだ。


 その間に折角だから図書館廻りをしたいと言ったらノーラ姉さんが連れて行ってくれることになった。


 ノーラ姉さんは今回の旅と次に西に魔物討伐に行くため出発までの間休暇と準備期間となるらしい。


 作戦が決まったら近衛騎士団に辞令をもらいに行くそうだが、今日が作戦会議なのだから全くの空きの様だ。


 デートする相手がいれば良いのに…と思ったが、折角機嫌よく付き添ってくれるのだ、当然口にはださない。


 姉兄達はメリザと一緒に闘技場に行くらしい。


 新年とかお祭りに武闘大会が開かれるらしく、貴族の若い男は数年に一度参加しなければいけないらしい。


 今は時期外れで大会はないが、最近王都周辺にも魔物が増えているので対応策として、捕まえた魔物を冒険者に相手させて、娯楽として倒し方を学ばせようとしているらしい。


 当然見物料を取られるのだが娯楽の少ないこの世界では人気があるらしく、何時も人で一杯だそうだ。


 リーゼ姉は図書館に非常に惹かれていたが弟妹のお世話を選択したようだ。


 流石である。ただ、俺は知っている。


 弓と魔法に目覚めたリーゼ姉が後衛としての援護の仕方や魔物の弱点になる属性を研究していつでも魔物と戦えるようにしていることを…


 剣の訓練に加えて弓の訓練と、攻撃魔法の訓練も加えた事も…


 実戦を見るのが一番勉強になるので闘技場観戦を選択したのだろう。


 Aランク魔物の討伐を見たいと言い出さないことを心から祈るのだった。


 閑話休題


 ノーラ姉は王立図書館に連れてきてくれた。


 もっとも蔵書数が多く殆どの本はここにあるそうだ。


 但し、禁書や史書、軍事記録や戦術記録などは王宮の書庫や軍務局の書庫にあり、最新の魔法書や錬金書はそれぞれの研究機関やギルドにて秘蔵してあるそうだ。


 まあ、そりゃーそうだわな。


 とにかく、一般公開されている最も大きな知識の殿堂が、ここ王立図書館らしい。


 中に入ると受付があり、入るのに身分証明が必要らしい。


 取り敢えず女王陛下から頂いた書状を見せると、対応が完全に変わってしまった。


 まず、応接室に通され用向きを聞かれた。


 ノーラ姉さんが魔導書を調べに来たことを伝えると、紅茶を出してくれる。


 その間に魔導書について一番詳しい司書さんを呼んできてくれて、早速必要な本の検索を行ってくれるようだ。


 家に有った魔導書以外で同じレベルの魔法が載っている魔導書と、空間、転移魔法について書かれている魔導書をお願いすると、立派な個室に案内され、持ってきてくれるそうだ。


 魔導書が集まった場所を教えて貰えれば適当に探すと言ったのだが、初見の人では迷ってしまって迷子になると言われたので黙って言うことを聞くことにした。


 早速持ってきてくれた本は台車二台分にも上り三十冊ぐらいあった。それも百科事典並みに分厚いものだ。


 かなり面食らったが転移魔法、空間魔法の本から調べることにした。


 重要そうな所や詠唱文を片端から書き写す。


 しかし、こんなに文字を書くのが辛いとは思ってもいなかった。


 前世で字が汚かったのでワープロにばかり頼っていたから、もうかれこれ三十年近くノートを取る作業なんてしていない。


 羊皮紙にペンなので、間違っても消しゴムが使えないし、罫線が入ってないので文字列が歪んでしまう。


「お願い、ノーラ姉さん写本手伝ってぇ~今日中に終わんない~」


 堪らずノーラ姉に泣きついてみる。


「仕方ないわね。ジークには世話になりっぱなしだしね。手伝ってあげる!」


 そう言いながら空間魔法の本を写本し始めてくれた。


「詠唱文と重要なところだけでいいからね。」


「こんな難しい本内容なんて分んないから適当に書き写しとくわ。」


「OK、ありがとね。ところでノーラ姉さんのお世話した覚えなんてないんだけど。」


「あんたね~これだから常識はずれなのよ!今回のことでわたしは男爵に陞爵されるのよ!新しく家を興せるの!子供に爵位を継がせることが出来るようになったの!これがどんなに凄いことかあなた分ってないでしょう?ほっといても男が群がってくるんだから、ふふふ。あ~顔がにやけちゃう!」


 なるほど納得した。ノーラ姉が気を使ってくれるはずだ。


 遠慮なくその日は夕方までノーラ姉に写本を手伝ってもらって、当面必要そうな知識を書き写した。


「ジーク人使い荒すぎる!」


 ノーラ姉が手を擦りながら文句を言ったが、いつ出発するか分らないのでこっちも切羽詰っているのだ。


「ごめんごめん」取り敢えず謝った。


 確かに、俺も右手が腱鞘炎になりそうだ。


 屋敷に帰るとすぐ夕食の時間だった。


 その席で、今後の予定が発表された。


 明日、一日旅の準備をして明後日、ヒルデ小母さん達と一緒にキュプナー子爵領を通ってケルナー辺境伯領に向かい魔物を狩りながら進んで行く。


 メインはAランク魔物のブラディーグリズリーとヘルタイガー、後は会うたびに倒せばいいとのことだ。


 情報は領軍から逐一、ヒルデ小母さんに入ってくるので進路はお任せする。


 子供達も連れて行くが領軍のサポートで、危険のない様にきちんと配慮してくれるそうだ。


 王都ギルドでの魔物の素材の買取りはどうなったか聞くと、量が多すぎて時間が掛かるらしいので祖父ちゃんに丸投げしたらしい。


「祖父ちゃんに主食の穀物類を買占めといた方がいいよと云っといてね。」


「どうしてなの?」


「南部一帯が魔物騒動で農作業できてないんだよ!秋の収穫量は間違いなく減るよね。すると穀物の値段が上がる。冬を越せない者も出る。復旧のための資材も上がるから今から買い占めとくのも手だよね。もう価格は高騰しているかな?セバスどう?」


「穀物や木材などの資材が値上がり傾向にありますがまださほど気になりません。今のうちに買い占めた方がいいのでしょうか?」


「あまり相場には手を出したくないんだけど、今は買いだね!冬には様子見に帝国も動くだろうしね。兵糧、資材を買い占めとけばいいよ。どの途キュプナー子爵領はバルト家が治めることになるんだし準備しといたほうがいいよ。」


「そうだな。父上に明日話しておこう。他にないか?」


 父さんが真剣に聞いてきた。


「そろそろ難民が王都周辺に流れてくるころだからその対策が必要かな?家の領内に移住してくれる人を募集するのもいいと思うよ。セバスだけだと厳しいから人を雇うのと領内から従士を派遣する必要があるね。受け入れる世帯数だけ家もいるだろうし帰ったら三の村を本格的に立ち上げた方がいのかな?その為にも農具や工具、釘なんかの鉄製品も買っとく必要があるのかな?」


「分った。この度の魔物素材の買取り益と報奨金は全てそちらに回そう。」


「村に帰ったら森の伐採を手伝うからね。今の住民との根回しをお願いするね。ちょっと気が早いかな?」


「いやいや、今のうちから動いておいた方がいいな。今後のこともあるし検討しておこう。」


 そんな話をしてその日の夕食は終わり、ゆっくり眠りに着くのだった。


 翌日はノーラ姉がお仕事なのでどうしようかと考えていたらママンに買い物に誘われた。


 図書館で写本したいというとがっかりされたが、メリザがお付き合いしてくれることになった。むっちゃ助かる。


 買い物ついでに錬金術に使う道具を頼むとリーゼ姉が食いついた。本屋にもよるらしいのでギラン山脈の冒険話や、紀行文があったら買っといてもらう。


 俺とメリザは図書館に行って、昨日写本できなかった分と、新しく神代文字に関する本と錬金術に関する本を持て来てもらって、軽く目を通し必要な部分を写本していく。


 昼を過ぎてしばらくすると早く帰って来いと連絡が来た。


 しかたないで帰るとバルト一家がそろっていた。


 詳しく話を聴くとキュプナー子爵領の拝領が正式に内示されたので、早速引き継ぎ作業と現状確認、救援物資の洗い出しにフリッツ伯父さん以外の人が一緒にキュプフェルトに行くことになったそうだ。


 それの挨拶と、今回の陞爵および拝領のお礼に来たらしい。


 祖母ちゃんとロジーネ伯母さんがすごくうれしそうに抱き上げてくれた。


 今日の夕食も一昨日の昼食と同じメニューにするそうでみんな大喜びだ。


 そろそろ肉の在庫も切れるので早く魔物狩りに行かなくちゃね。


 ただ、写本の予定が狂ったのが非常に残念だ。


 暫く王都に居たくなったのだが、厄介ごとが降ってくる意外考えられないので仕方が無い。


『人生はままならないのだから。』


読んでくださってありがとうございます。


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