42 魔物討伐作戦
目が覚めるとどこかのお屋敷の客室みたいなところだった。
結構よく眠っていたようだ。完全に日が昇っている。
籠ベッドから這い出すと、ママンにすぐに捕まった。
ちょうどいいのでママンに甘える。
「ママン。お乳飲みたい。」
「もうご飯食べられるでしょう?」
あれ?ママンがお乳くれない?どうしたのかな?怒ってる?
「やだ!やだ!お乳!おちちぃ!」
子供っぽく地団太を踏んでしまった。やばい幼児退行してる?
「あらあら、ジークは甘えん坊ね!うふふ。」
何時ものように乳首を含ませて貰って「ちゅう、ちゅう、ちゅう」
なんだか久しぶりにゆっくりママンにお乳を飲まして貰っている感じだ。
満足のいくまでママンのお乳を堪能した。
「ごちそうさま」笑顔で言うと、
「どういたしまして」とママンも笑顔で返してくれる。
ママンにひっしと抱き着いて大きく深呼吸する。
ママンのいい匂いが体いっぱいにしみわたり安心する。
あ~ママンの子供でよかったぁ。
顔をママンの胸に擦りつけるとママンが優しく、ポンポンと背中を叩いてくれる。
まったりとした時間を久しぶりに楽しんでいると、急に扉が開いて声をかけられた。
「ジークはまだ起きないのか?」
父さんの声だ。
顔を上げて父さんを見つめると、きちんと装備を着けて準備が終わった状態だ。
「な~に~」
間延びした返事をしてしまった。
父さんは少し苛としたのか急かす様に言う。
「みんな食堂で待っている。起きているならさっさと食堂に来なさい。」
そうして部屋から出て行ってしまった。
ママンも準備は出来ているみたいなので直ぐに食堂に行く。
宿屋じゃなく何処かのお屋敷の中だった。
ママンに抱かれて席に着くとみんなが挨拶してくれる。
「おはよう。ジークよく眠れた?」
「おおージーク今日は頼むぞ」
「「おはよう。ジーク」」
声を掛けられて、返事をする。
「おはようございます。ゆっくりねむれたよ」
みんなニッコリ微笑んで朝食に集中し始める。
ママンもごはん食べないとだから、下ろして貰おうとすると
ママンが器用に俺を抱いたまま食事をする。
たまに、俺用の離乳食をスプーンで口元に持ってきてくれるのでパックンして、ニッコリ微笑む。
嬉しそうに微笑み返してくれるママン。
あ~しあわせだなぁ~ぼくはもうママンを離さないよ!
幼児退行しながら、おっさんが入ってしまった。
◇◇◇
朝食が済むと早速今日の作戦会議が始まった。
今回の作戦の目的は魔物の包囲を緩めて脱出しやすくすること。
殲滅は出来ないということだった。
草原や森から魔物が集まり続けているらしく殲滅するには時間がかかり過ぎるということだ。
ヤーコプが報告してくれた。
「オーガキング、オークキング、ハイ・コボルド、ゴブリンキングの位置は大体わかりました。まずは出来るだけ頭を叩きましょう。」
祖父ちゃんが話を続ける。
「頭を潰して怯んだ所を叩く訳じゃな。上手くいけばいったん森へ逃げ帰るやもしれんな。」
「逃げられても、また集まるんでしょうが時間稼ぎにはなりますね。場内の兵力で対応できるぐらいまで間引けるといいんですが…」
父さんが普通のことを言っていた。うん、うん、いい感じだ!
騎士団長が纏めに入る。
「とにかく東門から脱出できるぐらいに魔物を間引く。領軍や衛兵に街を守れることを自覚させ、魔物と戦う意思を取り戻させる。冒険者は勝手に稼ぐだろう。明日はこの街を出発し王都に戻る。一応領主代行の家宰に救援要請を書いてもらい女王陛下に届けるのが我々の役目だ。それを肝に銘じて無理はしないでくれ。それでは詳細に入る。」
紙を広げると、城外の魔物の様子を細かく書いてある。それぞれの種族の頭と思われるものの位置も書いてあった。
昨日夜焼き払った東門と南門の周りは魔物が警戒して、いないみたいだ。
「騎馬が百騎ほどいるから東門を出て一気にオーガキングを叩く。雑魚は馬で踏みつぶせるから巨漢のオーガさえ倒してしまえば何とかなるだろう。北門付近にいるオークキングは歩兵で叩こうと思う。ジーク北門の周りを焼き払ってくれ。歩兵はカールに率いてもらう。いいか?」
父さんが頷く。
「承知しました。」
「出陣まで時間がかかるよね?ヤーコプさんとイリスとエルザとピリス一緒に来て。」
「「「「分った。」」」」
ママンに抱かれてお出かけする。
「ヤーコプさん、近い順に魔物の頭を教えてください。弓矢も用意して。他の人もついて来てね。」
ママンがにやりと笑って聞いてきた?
「ジークあれをやるの?」
「うん。ママンも手伝ってくれる?一人で射れるもんね!」
「あらあら、いいわね!手伝わせてもらうわ。こういう時にメリザが居ないのは残念ね。うふふ」
「そうだね。メリザなら一人で全部殺っちゃうね。あはは」
二人でにんまり思いだし笑いをしてしまった。
そうこうしているとオーガキングの見える位置についた。
「ヤーコプさんここからオーガキングを射殺します。オーガキングを狙えますか?」
「遠見のスキルがあるから急所も狙えるが矢が届かないぞ。」
そう言ってオーガキングに狙いをつけて弓を構える。
ヤーコプさんに触って魔力を通し弓と矢を強化する。
驚いた顔でこちらを見るヤーコプさん
次の瞬間引き絞った弓が放たれ、オーガキングの目から頭蓋を突き破りあっけなくワンキルしてしまう。
「お見事!」
つい声が漏れてしまった俺にヤーコプが声を返す。
「無茶苦茶だねぇ君は…」
ヤーコプさんの声を無視してオーガキングの周りにインフェルノをぶち込む。
あとはエルザにお任せだ。
つぎはハイ・コボルドをイリスに射殺して貰ってインフェルノをぶち込んでピリスに任せる。
ゴブリンキングはママンが一人で射殺した。あとは同じようにインフェルノをぶち込みおまかせする。
最後のオークキングはヤーコプさんに魔力強化をかけて瞬殺してもらい。同様にインフェルノをぶち込む。
「ヤーコプさん団長たちに報告してもらえますか?作戦の修正も必要ですし…北門周りを焼いて掃除したあと仮眠しますので、詳しい作戦説明は出撃前にお願いします。あっそれから僕LV33に為っちゃいました。あははは」
ヤーコプを含めたみんながドン引きしている。
しかたないよね。上手く前衛さん達が煽りに乗ってくれるといいんだけど…
宣言通り北門周りにインフェルノをぶち込んでトルネードで切り刻む。
慣れたものでイリスが手勢を率いて魔石の回収をしてくれた。
それを見た後、俺はママンの腕の中でスヤスヤ眠るのだった。
◇◇◇
「団長!オーガキングを始め、各種族の頭を倒し終わりました。ついでにインフェルノをぶち込まれて統制を失っています。北門周りも焼き尽くされています。さらに、冒険者の荒くれたちが城壁の外の様子を見ていまして、魔物が怯んでいる今が稼ぎ時だから南門を開けてくれと騒いでいます。」
ヤーコプが領軍との作戦会議中に叫びながら飛び込んできた。
寝耳に水とはまさにこのこと。
領軍幹部から離れた所にヤーコプを連れて行き、ヤーコプを囲んでパーティ全員で事情を聴く。
かいつまんで言うとジークが、またやらかしてくれたらしい。
「なんと、ジークはもうLV33になったらしいです。」
最後にヤーコプがぼそりと呟く。
「ぐわっはっはっは。ジークがまたやりよったか!愉快!愉快!」
バルトの爺が大笑いする。なにが愉快。愉快だ。
こっちは不愉快だ!
くっそぉーあの餓鬼、また好き勝手やりやがって!
さらに俺達を煽ってやがる。絶対戻ったら女王陛下に告げ口してやる!
くっそぉー憶えてろぉー
心の中で叫びまくるが取り敢えず落ち着け。
大きく息を吐いてぇー吸ってぇー吐いてー吸ってー
落ち着いてきた。
領軍幹部の所へ行って話す。
「内の魔法使いたちが頑張ってくれた。今魔物たちが怯んでいる。打ち合わせ通り騎馬で東門から、歩兵で北門から打って出る。魔物は狩り放題だ!片端から討ち倒し俺たちの糧にしてやれ!あと、騒いでいる冒険者は南門から出してやれ。俺たちの準備ができるまで精々稼ぐといいさ。万が一押されるようなら騎馬隊で南門から救援に行くのでそのつもりで…分ったな!時が勝負だ。急げ!」
俺も急いで準備をせねば!
あの餓鬼覚えていろ!
お前が起きる前に魔物を一掃してやるわ!
この怒りを魔物にぶつけてやる!皆殺しだ!
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