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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
4章王都は怖い?怖い!
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33 家族会議の後 前篇

 


 ジークがセバスを連れて小さな体でトテトテと歩いて食堂を出て行くと、大人たちは一つ大きな溜め息を吐いた。


 オットーはノーラに呼び止められて何か話していたが、そそくさと食堂を出て行く。


 暫くの沈黙を破ったのは祖母ちゃんのサブリーナだった。


 リーナはオイゲンを睨みながらオイゲンに言葉を投げた。


「あなた、今日の話はどういうことなの?王都に着いたとたんにカールに軍務卿からの話をするってことは聞いてたけど…説明してもらえますか?」


 オイゲンは一つ溜め息を吐いて呟き始めた。


「カールがもう一度来て派兵の様子を教えろ!兵の数は?指揮官は?勝利条件は?根掘り葉掘り聞かれて驚いたわい。最後に儂とフリッツも家族会議に同席しろと言われた時はいやーな汗をかいた。軍務卿から言われたことを軽く見ておった儂じゃが、再度問い直されると胡散臭さや危険な臭いがぷんぷんする。儂も息子が危険な目に合うのは嫌じゃから軍務卿に問い合わせに行ったわい。」


 キョトンとした顔でカールが問い返す。


「え?父上そうなのですか?そんな素振りを全然見せていませんでしたよ。」


 オイゲンは少し肩をすぼめて話を続ける。


「当たり前じゃろう。そんな恥ずかしい事言えるかよ!軍務卿に確認すると、ま~いい加減なこと。いい加減なこと。女王陛下にキュプナー子爵領に誰か派遣しろと言われて、噂のカールを思いついたらしい。自分に動かせる兵力がないもんじゃから訓練中の騎士見習いをと言われた時は、寄り親である軍務卿を怒鳴りつけてしまったわい。とりあえず軍務卿の所を辞去して、リーナとフリッツを強引に連れて、ミュラー家を訪れ孫に癒され一息ついやんじゃ。じゃが、マリーにどうやって謝ろうかとずっと思案していて生きた心地がせなんだわい。」


 祖母ちゃんのリーナが胡乱げな視線でオイゲンに突っ込んだ。


「あーそれで急にミュラー家に孫の顔見に行こうなんて誘ったのね。自分の失敗を少しでもごまかそうとして…」


 オイゲンはあたふたと言い繕う。


「孫の顔を見に誘ったのは本心からじゃて、ジークの顔も早く見たがっていたではないか?」


 リーナはオイゲンにさらに突っ込みを入れる。


「ええ楽しみにしてたわ。初めてジークの顔を見た時はなんてかわいらしいと思ったものよ。でもすぐに怒ったジークの話を聞けるとは思ってもみなかったけど…」


 キッとオイゲンを睨みつけてリーナが続ける。続けて孫自慢を始めてしまった。


「あなたが迂闊すぎるわよ!今の話じゃ全てジークが言ったことそのまんまじゃない。あなたの間抜け加減が際立ったわ!それにしてもジークは賢いわねぇ~度胸も据わっているし、普通Aランク魔物をまとめて狩りに行くなんて自殺行為Aランク冒険者でも口にしないわよ!ねえマリーもしかしてブラッディーグリズリーを倒したのってジーク?」


 オイゲンは少し顔色を変えて聞き直す。


「まさかそんなことはなかろう?」


 マリーがリーナの言葉を肯定する。


「いえ、いえ、そのまさかですよ。お義父さん、お義母さん。」


 慌てて聞き返すカール。


「ちょっと待て!マリー。ブラッディ―グリズリーってあのレッドグリズリーか?あいつなら俺が腹に剣を突き立て首を刎ねたではないか!」


 マリーがとうとうカールに真実を語る。


「そうです。政治的にレッドグリズリーと言っていた。熊の魔物で正式にはブラッディ―グリズリーです。そしてあなたが剣を腹に突き立て本気で怒って暴れようとしたところを私の魔法を隠れ蓑にしてジークの魔法が倒したのです。止めはカールが刺しましたが、ジークが気を使っていなければ、あの魔物はジークに瞬殺されていましたね。」


 呆然とするカール。まだ現実が受け入れられないみたいだ。


「そんな馬鹿な…ジークは赤ん坊だぞ!」


 マリーはさらに真実を語りカールに追い打ちをかける。丁寧にメリザに同意まで求めた。


「だってブラックウルフをファイアーボールで倒したのもジークですし、ファングボアを倒したのも実質ジークですわ。私の弓の腕ではあの距離で目に矢を当てることは無理ですもの。そうよねメリザ」


 メリザは残酷にもあり得た現実を突きつける。


「マリー様の仰る通りです。魔物の探知からジーク様が行ってくださっていました。ジーク様がいなければわたくし達は今頃魔物の餌でございます。」


 カールは愕然とし、完全に放心状態である。頭は垂れ肩を落とし何とか椅子に座っている状態だ。


 マリーは意気消沈したカールの意識を持ち上げようと奮起を促す言葉を続けた。


「そう云うことよ!カール。そんなに肩を落とさないの!それだけジークが桁違いなの!それに私達はジークの親なのよ。色々なものからジークを守ってやらなければいけないのよ!」


 オイゲンも呆然として吐き出すように呟いた。


「そうか~Aランク魔物を瞬殺か~言葉が出んわい」


 リーナ逆にニコニコしながらマリーに子供達が執った食事中の振る舞いを褒めちぎった。


「それは、それは、先が楽しみですわね。しっかり育ててくださいね。マリー。でもリーゼもユリウスもビアンカも大きくなって…私驚きましたわ。カールを庇ったあの子達の言動。もう祖母として胸がキュンキュンしましたよ。」


 マリーもリーナの言葉に同意し、親としての責任を思い返す。


「そうなんですよ。お義母さん。いつの間にか立派な行いが出来ているんですもの親として情けない姿は見せられませんわ。」


 そんな親子の会話をノーラがぶった切った。


「マリー盛り上がっているとこ悪いんだけど女王陛下へのお手紙さっさと書いてもらえないかな?私も近衛騎士団に休み貰いに行かなきゃなんないし…お義父さんも軍務卿に根回しに行かないといけないんじゃないですか?オットーはさっさと冒険者の依頼に行きましたよ。ジークに怒鳴られるのはいやだって!」


 オイゲンは心底ビビった様に顔を引きつらせる。


「そうだった。危ない。危ない。確かにジークに怒鳴られるのは嫌じゃわい。」


 伯父のフランツがオイゲンに同行の許しを請う。


「お義父さん私もご一緒して宜しいですか?」


 オイゲンは同行を促し、ふとした疑問をつぶやいた。


「おおー助かる。儂がいない間フランツに任せることになるからな。しかしなぜジークはフランツを一緒に連れて行かなんだんじゃ?」


 オイゲンと同様の疑問をノーラは抱いていたみたいだ。


「そうですね。私より現役の第一師団千人長を選んだ方が戦力になると思うんですが…」


 肩を落としてフランツが呟いた。


「私が弱いのがばれてしまいましたか?」


 マリーがフォローになっていないフォローをする。


「いえ、いえ、ジークは一応鑑定持ちなのです。まだ熟練度が低くてLVぐらいしか分らないと言っていましたけど…それでではないかしら?」


 さらに肩を落とすフランツ。


「なるほど、LV38ですからそれでですかね?ちょっと傷つきますね。この遠征で鍛えないとだめですね!」


 失敗したと顔を引きつらせるマリーだが、すぐに新しいフォローを入れる。


「レベルだけじゃないと思いますよ。ジークが指名した冒険者ですがCランク上位です。お義兄さんが弱いってことではないと思います。多分ですけど、軍務卿との根回しや、第一師団や第二師団の派兵の根回しを期待してるのではないでしょうか?あの子は結構、根回しや準備に気を使います。特に今回は危険な橋を渡っていることを自覚していますから最後の砦としてお義兄さんに期待しているのかもしれません。」


 それを聞いたフランツはにんまりして俄然やる気が出たみたいだ。もともとフランツは後方支援や根回しに定評がある。かなり嬉しそうだ。


「最後の砦、ですか?いやー責任重大ですね!お義父さん早速軍務卿の所に向かいましょう!」


 フランツの勢いに押されるオイゲン。


「お、おう。では行くか。リーナ行こうか。」


 そこでマリーが気を利かせる。


「お義父さん、お義母さんは家の馬車でお送りしますわ。その方がゆっくりできるでしょう。」


 オイゲンも助かると快諾する。


「そうか。それでは頼むぞ。」


 マリーはまだ肩を落として固まっているカールに声をかけた。


「カール。セバスと一緒にお義母さんをお送りして。」


 カールは呆然としながら答える。


「あっ、ああ、分った。行こうか、母さん。」


 リーナも席を立ち明日遠征に出かけるマリーに声をかける。


「そうだね。お願いするわ。マリーくれぐれも気を付けてね。無理するんじゃありませんよ!当主は生き残るのが務めですからね。」


 マリーは頷いた。


「はい。肝に銘じます。」




読んでくださってありがとうございます。

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