29 王都に着くなり…
やはり王都だけあってでかい!城壁の端がよくわからない。
城門に入るために並んだ人の列が半端じゃないGWのU○J並みだ。TD○並みとも言う。
しかし、俺たちは貴族様。サクッと顔パスとはいかないが速攻門をくぐれた。
住民もギルドカードや通行証があればサクッと入れるらしい。
並んでいるのは、行商人や商人などの積み荷を抱えた者たちで、税関や入国管理が目的。あと、初めて王都を訪れる者に対する説明なども含まれるため時間がかかるそうだ。
王都に入って向かうのはシュタート男爵家の別邸だ。
辺境の貧乏貴族とは言え年に1度は数週間から数か月、10歳から15歳までは学園に通わなければいけないので一応別邸はあるのだ。
当然管理も必要だし、情報収集や冠婚葬祭などの付き合いなどもあるので家宰とメイドが三人常駐している。
あとママンの妹のエレオノーラ・フォン・ミュラー(十八歳)も住んでいる。
騎士なので宿舎もあるのだが、実家通いも許されている。
当然当直とかもあるので色々制約はあるそうだ。
場所は貴族街の下級貴族の邸宅が集まる一角だがさすがに領地持ちなのでそれなりの大きさはある。
冒険者達とは城門を潜ってすぐに別れており、今度は帰る前にギルドを通して待ち合わせになる。
彼等も王都にいる時、遊んで居る訳にもいかないので、短期の依頼があればこなすのだろう。
別れる前に念のため定宿を告げていた。
王都に入ったのは昼過ぎで夕方には早いがそれなりに人が行き交い賑やかだった。
大通りを通って貴族街に向かうだけなので繁華街は通っていない筈なのだが、馬車が行き交い人でにぎわっている。
通り沿いは、石造り、レンガ造りの建物が並んでおり、三階建、四階建の建物もあるのだから少し驚いた。
貴族街に入ってしばらくするとそこそこの庭付き一戸建て、石造り二階建ての邸宅に馬車が入っていった。
玄関口に馬車を止めると、来客に気付いたのか中から人が三人の使用人出てきて出迎えられる。
家宰のセバスとメイド長のイルマ、メイドのペトラだ。
セバスとイルマは夫婦でメリザの叔父、叔母に当たる。
ペトラはノーラ叔母さん付きのメイドらしいが人出もないので家事を色々やっているそうだ。
ノーラ叔母さんは仕事で不在だが夜には帰るらしい。
どたばたと、旅の荷卸しをして馬を厩舎にいれ、馬車を片付ける大人たち。
主人もへったくれもない。貧乏貴族なのだからやれることは自分でやる。という感じで、ママンも父さんも動いている。
リーゼ姉がビアンカ姉の手を引いてユリウス兄を先頭に屋敷のリビングに入って行く。
俺はニーナに抱かれてリーゼ姉の後をついてリビングに入っていった。
王都の邸宅について人を手配して親類縁者に連絡をし終わると、父の実家から大至急来るように連絡が来た。
取り敢えず旅の垢を落としたい女性陣はいい顔をしなかったので父さんだけで実家に向かうことになった。オットーは一緒に行ったが…
◇◇◇
【カール視点】
「父上お久しぶりです。」
「おおー来たか。元気そうで何より。」
「父上もお元気そうで…次男のジークフリードを連れてきましたよ。来年はユリウスも洗礼式ですので、その準備に王都に戻ってきました。」
「おおージークフリードは春に生まれたのではなかったのか?王都までの長旅は大丈夫なのか?」
「ええ、元気なものですよ!大分変った子でしてね…明日にでもお連れいたします。」
「そうかそうか。楽しみじゃな。リーゼやビアンカも元気かな?」
「ええ二人とも元気ですよ。王都に来る途中もゴブリン退治をしたぐらいですから…」
「なんと、ビアンカは赤子ではなかったか?どうやってゴブリンを…」
「ビアンカも大きくなりましたよ。最近魔法を覚えましてね。火魔法で遠距離から攻撃して倒しておりました。リーゼは魔法も使うのですが弓が上達しましてね。オークぐらいなら一撃で倒しますよ」
「ほほーそれはすごいなー流石マリーの娘じゃわい。会うのが楽しみじゃな。」
「みな、立派に成長しております。ところで急なお呼び出しとは何事ですか?」
「いやいや、すまんな。長旅で疲れておるのに…実はなキュプナー子爵領が今酷い有様での王都から軍を動かすことになった。」
「旅の途中噂には聞いておりましたが、軍が動くほどとは…やはりガイエス辺境伯の長男が元凶なのですか?」
「うむ、そのようじゃ。王女に懸想して手柄を立てたいのじゃろう。魔獣の森に千の兵で押し込み獣王に潰されたそうじゃ。その時の余波で魔物が大移動しての、周辺は酷い有様のようじゃ。」
「やはりそうなのですか。迷惑な話ですね。私たちも命を落としかけました。」
「そうじゃった。そうじゃった。ブラッディーグリズリーを討伐したそうじゃな!王都でも話題になっておるぞ。その件で軍務卿から話があってな。この度の出陣に手を貸して貰えんかと頼まれてしまっての…「他家の者ですので…」と断ってはいるのだが、何せ寄り親殿の言葉ゆえな…取り急ぎ話して置かねばまずいだろうと思い悪いと思ったが呼びつけてしまったのじゃ」
「そうですか…困りましたねぇ。ユリウスの洗礼の準備を終えたらすぐに帰るつもりなのですが…」
「そうじゃろうな。しかし軍務卿はお前の近衛復帰を望んでおるようじゃぞ。」
「義兄上もいらっしゃいますし、派閥的に不味いのでは…」
「実はの軍内部はどいつもこいつもボンクラばかりでな。今帝国と戦になったら国軍は使い物にならん有様じゃ。そういやお前の義妹はやりおるのぉ。流石ラインハルト殿の娘じゃわい。」
「あははは。ノーラはお転婆ですからね。」
「そうじゃ!嫁御殿も一緒に従軍してはどうじゃ?ルーデ殿は領地を見るくらい容易かろう。こっちで早馬の手配をしておくから明日来た時にでも返事をきかせてくれればよいぞ。実はの女王陛下の御意向もあるらしいからのよろしくたのむぞ。」
「な、なんですか!女王陛下って…絶対断れないじゃないですか!」
「お主等夫婦が出ておる間、儂等が孫の面倒を見させてもらうから心配いらんぞ。わっはっはっは。」
完全にはめられた…カールはうな垂れるしかなかった。
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