表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
3章 都会は楽しい?それとも…
34/87

28 ママンの悩み



「どうしてこんな事になってしまったの?」


 目の前で乱舞する魔法を見ながら私は呟いていた。


「あらあら、うふふ」なんて余裕かませない!


 全部ジークのせいって言うのは確かなんだけど、それでもこれは酷過ぎない?


 あれほどジークに「常識をわきまえてね!」と念押ししたのに…


 魔法の本も渡して勉強しているはずなのに…


「はっ魔法の本を与えたのが間違いだった?」


 思わず独り言を呟いてしまったら、隣にいたメリザに突っ込まれてしまった。


「そう。マリーのせいよ!」


 ガーン後頭部を棒で叩かれたような衝撃が走る。


 リアルで四つん這いになって項垂れることってあるのね。


 今の自分の姿を見てわかったわ。


 カールは能天気に「家の子供達すごいぞ!」と興奮しているし。


 ユリウスに身体強化のコツまで教えてしまっているのにはあきれたわ。


 あ~私の、のんびりライフは何処に行ってしまったの?


『あらあら、人生ってままならないものなのね。うふふ』


 ◇◇◇


 ジークが生まれた時は吃驚したわ。生まれたばかりで目が開いたんですもの。さらにその目がとても悲しそうだったんですもの…


 色々変わったところはてんこ盛りだったけど、私のかわいい子供には変わりありません。


 すくすく育っていくのが楽しみでした。


 いつの間にか魔力操作を行なっていたり、魔力量が異常に多くなっていたり、人の話を盗み聞きしていたり、私とカールの立ち合いの動きをきちんと見切っていたり、領政を理解している節があったりと数えればきりがありませんが、それでも『天才来た~』的な乗りで済んでいました。


 あの悪夢のようなギラン山脈越えまでは…


 ◇◇◇


 この度の王都までの旅程でギラン山脈越えは想定を超える異常事態でした。


 魔物が毎日のように襲ってくるんです。それもB、Cランクの魔物が…最後にAランクの魔物が出てきた時は少し漏らしてしいました。本当に地獄の山脈越えでしたわ。


 普通なら、戦力的に魔物の餌になっていて当たり前なのでが今回はある意味幸運に恵まれました。天使の降臨です。


 賢いジークならケルンブルクや王都に早めに連れて行けばそれだけ経験が付くと思って、非常識にも赤ん坊を長旅に同行させたのです。


 そのおかげでジークという名のかわいい天使が、魔物を倒して私たちを守ってくれたのですから幸運以外の何物でもありません。


 神に感謝しました。しかし喜んでばかりもいられませんでした。


 ジークが魔力枯渇の影響で五日も眠ったままだったのです。


 魔力は生命力です。無理に使うと命を落とします。知っていたことです。なのに…


 心配しました。後悔しました。自分を責めました。


 ジークが目を覚ました時は安堵しました。もう二度とこんな思いはしないと誓いました。


 ジークにも自重をお願いしました。


 でも、やっちゃったのです。辺境伯邸で…


 ◇◇◇


 私も調子に乗っていたのです。かわいいし、賢いし、強いし、アンナやヒルデ先輩に自慢したかったのです。「いいの!親バカと言われても。」その通りなのですから。


 ケルンブルクのバザーも甜菜とか云う不思議な蕪から糖蜜を作っちゃうし、ギルドでもジークが話したようにうまく言質が取れました。全て上手く行っていたのです。


 慢心していた私が悪いんです。


 それでもヒルデ先輩は酷いです。いきなり寝てるジークに、魔力にとてつもない殺気を込めてぶつけるんですよ!


 普通の子供ならショック死するか発狂しますよ!それをまあ平然とやってのけるんですから…


 それを受けといて、平然と泣き真似すジークもおかしいんですけど…


 この時本当に思いました。ジークをこの人に合わすんじゃなかったと…


 そして、ジークの演技力の下手さを…


 普通の人なら先入観もあるでしょうから騙せるんでしょうけど、ヒルデ先輩クラスになると泣き真似が見え見えすぎて余裕でバレバレです。


 上手くリーゼが中に入ってくれて私は命拾いしました。


 食事会は上手く乗り越えたんですよ。


 その後です。なぜヒルデ先輩は知っているんです?


 魔物討伐の真相を…ジークが全ての黒幕だと言うことを…


 ジークをべた褒めして婿に欲しいと言われた時はうれしかったですわ!


 天下の西の辺境伯からのご指名ですから出世街道まっしぐら。


 これで喜ばない親が居たら教えて欲しいものです。


 でも、裏がありそうで怖いんです。家は貧乏男爵家です。家格が合いません。


 わたし完全に石になりかけていました。


 それを救てくれたのはジークです。


 ジークが言うには、

「ママン辺境伯さまは一種の化け物!魔力量も多いけど、魔力感知が異常にすごい。多分心の声が何となく聞こえてるんじゃないかな?隠し事はよほどの人じゃないと出来ないよ!僕はもう降参!」


 なんですって!人の心が読める?いつからですか?


 あ~学生時代のヒルデ先輩、妙に察しが良かったことを思い出します。


 もしかして、カールに対する思いや、あの時の悪口や、誰にも知られない様にBL小説を書いてバイトしていた事までばれていたの?


 顔が赤くなり青くなりしている最中もジークとヒルデ先輩は会話しています。


 精神的に話を聞いているゆとりがないのにドンドン、ドンドン。


 ただ、ジークが褒められているみたいだから取り敢えず思考を魔力でブロックして自慢しておきます。


 ふー嵐が去って行きました。落ち着いてお乳をあげ終ると、ジークが呟きます。


「それと辺境伯にちょっとお返しするからね!びっくりしないでね」


 いやーこれ以上、場をかき混ぜないで~心の中で絶叫します。


 言うより早く、無属性の魔法攻撃をかけたジーク。


 挙句の果てに変なことを言い出す始末。


「さあ、ママン。ヒルデ小母さんの顔を見に行くよ!あと使用人や騎士の反応もしっかり見ておいてね!慌てている人ほど魔力に長けた人だから…」


 いやいやジークあなたが魔力で攻撃したのだから魔法使いは皆反応するって…


 灰になりかけた私をジークがせかすのですが、食堂の周りはすでに辺境伯家の凄腕に包囲されている始末。


 ヒルデ先輩は引き攣り笑いで許してくれましたけど、これからのことを考えるとオチオチ寝てもいられません。


 教育をきっちりせずにつれ出した私が悪いのでしょうけど…


 早速魔法の本を渡して常識を学びなさいと、きっちりその夜は叱っておきました。


 ◇◇◇


 それから一週間ジークは自重してくれていました。


 陰で土魔法を使ってコソコソ遊んでいたみたいですが、概ね大人しかったのです。


 それがゴブリンに遭遇するや否やいきなり自重をかなぐり捨てました。


 確かにリーゼを参戦させた大人も悪いんです。


 でも、ちょっとは大人のメンツを立ててウインドシールドで防御するなんてやめて欲しいわ。


 挙句の果てにこれ見よがしに魔法を使って洗礼式が終わってないユリウスとビアンカが真似するような事やめなさい!


 さらに初級魔法で地形を変えて冒険者達をビビらすなんて言語道断です。


 こっそり叱ったのですけど、魔物が現れると説得力がなくなるんです。


 あ~なんで王都近くになってこんなに魔物が出て来るんですか?


 王国軍はきちんと仕事をしているんですか?


 そのせいでユリウスとビアンカまで魔法でゴブリンを倒してしまったじゃないですか!


 あ~能天気にカールは喜んでいますねぇ。


 どうしましょうもうじき王都ですよ!


 嫌な予感しかしません。やっぱりジークを連れてきたのは間違いだったのでしょうか?


 神様どうか平穏な日々をお返しください。


 あやとりと言う遊びをやって楽しんでいたころが懐かしいです。


読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ