26 ゴブリン退治
昼食を食べた後ものんびりした旅は続く。
周りを見回すと木、木、木で森の中だ。
大きい街道の割に周りの見通しが悪い。
いかにも魔物や盗賊が出てきそう。
フラグも立ったし、そろそろ襲われている馬車とかを見つけて助けると王女様だったり、上級貴族の令嬢だったり…
助けたお礼に私を貰って…
『キャー』ハーレム展開来た!
って、無いから!俺赤ちゃんだから…
赤ん坊で王都に行くのは早すぎるでしょ!
せめて自立移動ができる五歳とか七歳とかでしょう?
妄想しながら見えない誰かに愚痴っていると、来た~お約束。
前方二時の方向に敵影発見。ミノフ○キー粒子散布。総員戦闘配備に移れ。
ブラ○ト艦長敵識別信号来ました。ゴブリン十体です。内訳はノーマルゴブリン5、ゴブリンアーチャー1、ゴブリンライダー1、ゴブリンメイジ1、ゴブリンナイト1、えっホブゴブリンもいます。
ア○ロよろしくて上位種もいますがあなたならやれるわ!
気休めはやめてください!セ○ラさん
ぼくが一番ガ○ダムをうまく使えるんだ。
ア○ロ行きまーす。
って妄想してる場合じゃなかった。
「ママン、八百メートル先の南の森にゴブリン十体いるよ。種類がノーマルゴブリン5、ゴブリンアーチャー1、ゴブリンライダー1、ゴブリンメイジ1、ゴブリンナイト1、ホブゴブリンもいるよ。」
狼の魔物より全然よわっちい。
冒険者たちだけで十分かな?
「エリザさん、八百メートル先の南の森にゴブリン十体いるわ。種類はノーマルゴブリン5、ゴブリンアーチャー1、ゴブリンライダー1、ゴブリンメイジ1、ゴブリンナイト1、ホブゴブリンもいるようよ。」ママンがそのまんまエリザに伝える。
エリザが馬車を止めるように指示し、冒険者たちが馬車を降りて行った。
前の馬車も止まって冒険者と父さんで何か話をしている。
イリスとアストが道を歩き出し、しばらくすると森に入って行った。
斥候ですね。そして、皆が馬車に戻ってくる。
御者は前の馬車を父さんが後ろの馬車をオットーがするのね。
しばらく進み、あと三百メートル位の所で斥候さんが戻ってきた。
今度は大人皆で相談。うん?ママンと父さんが話している?
あっリーゼ姉が馬車から降りてきて何か話してる。
解散してそれぞれ準備を始めた。
ユリウス兄とニーナがこっちの馬車に来た。
あれ?おかしいなぁ~ママンが俺をおんぶしようとしてるぞ。
「あのね、リーゼが一緒に戦うって言うの。熊の魔物の死骸を見て気絶したことを恥じているみたい。弓で攻撃するみたいだからとりあえずジークも来て。」
心配そうな表情でお願いされては仕方ない。
というよりリーゼ姉が心配だ。言われなくてもついていく。
「ママン当然ついていく。リーゼ姉が心配だし、なんかあった時傍にいたい。」
「それじゃあ、よろしくね。」
馬車の御者はオットーとメリザがするみたいだ。
「リーゼ無理しなくていいのよ。許可できるのは矢を射かけるだけ。危なくなったら下がらせるからね。ジークに良いとこ見せてあげなさい。」
ママンに声をかけられ「コクン」と大きく頷くリーゼ姉。
暫く歩くと森の中からゴブリンがゾロゾロ現れる。
普通のゴブリンが「キーキー」「グギャグギャ」騒ぎながら武器を掲げて走ってくる。
その後ろからアーチャーが矢を射かけて来るがまだ射程に入っていない。
メイジは後ろで詠唱始めているみたいだがいつの間にか距離を詰めていたイリスによって眉間を射ぬかれて絶命した。
狼に騎乗したライダーが森を縫って接近してくる。狙いはリーゼ姉だな。
「ママン。ライダーが森からリーゼ姉を狙ってる方向はこっち。」
移動しているライダーを指さす。
ママンがリーゼ姉に方向を教える。
リーゼ姉も狩りの練習のお蔭で弓を構える姿もなかなか様になっている。
少し緊張しているみたいだが大丈夫そうだ。
俺もできることをしよう。
位置を確認しながら、こないだ読んだ風魔法の詠唱文を唱えてみる。
「数多を廻りし聖なる風の聖霊よ…見えざる鎧となりて彼の者を守れ…ウインドウォール」
なかなか厨二心をくすぐる詠唱だ。
お!リーゼ姉の周りに風の壁が出来た。
「ジーク何してんのよ!」と言うとジトーとした眼差しでママンがこっちを睨んでくる。
がとりあえず無視。
「くるよ!3,2,1、撃てー」叫んだらリーゼ姉がびっくりして矢を放つ。
「ヒュッ―――ドス」飛び出したライダーの胸に当たり狼から転げ落ちた。
結果オーラーイ!!
あっけにとられているリーゼ姉にママンがささやく。
「もう一射して止めを…」
素早い動きでもう一射してきっちり止めを刺すリーゼ姉。
前方ではモースが壁役としてゴブリン二体とナイトを牽制しながら戦っている。
アストはホブゴブリンをもうじき倒しそうだ。
イリスはアーチャーに止めを刺した。
魔法使い二人は後方から支援している。
「リーゼ姉!次、前のゴブリン!」声をかけると反射的に矢を番えるリーゼ姉。
「モースの横を抜けようとするゴブリン」ママンが叫ぶと
「ハイ!」一声上げて迷いなく矢を放つ。
「ヒュッ―――ドス」今度は顔面に突き刺さる。
一撃で仕留めてしまった。
金髪を靡かせながら真剣な表情で矢を放ち続けるリーゼ姉。
ふっと、アルテミスって女神の名が浮かんだがどっちかっていうと戦乙女のような気もするし…とにかくかわゆつくしいのだ。
頬をわずかに赤く染め、テンション上げ上げである。
結局最後の一体を射倒してしまった。
ライダー1、ゴブリン2の戦果は冒険者も真っ青である。
「お母様!わたし…わたしやりました!魔物を倒せました!」
頬を上気させて喜ぶリーゼ姉を優しく抱きしめてママンがささやく。
「よく頑張りましたね。リーゼあなたはやればできるんです。もっと自信を持ってもいいんですよ。でも自信を持つのと油断をすることを間違えてはいけませんよ。今日の戦果で調子に乗らず、何時ものリーゼの様にしっかり努力してください。」
「ハイ、お母様これからも努力していきます!」うんリーゼ姉のいいお返事だ!
「ところで、お母様、先ほどジークが叫んでませんでしたか?ライダーが出てくるときに『くるよ!3,2,1、撃てー』と教えてくれたように思ったのですが…あと、『リーゼ姉!次、前のゴブリン!』という声もジークですよね?」
やばい覚えてた。冷たいものが背中を流れる。
そして冷ややかな眼差しでママンが睨んでくる。
「そうですか?私には何も聞こえませんでしたわ。ジークの心の声が聞こえたのかもしれませんね。あなた達は仲の良い姉弟ですから…」
く、苦しい…苦しいがママンが何とかごまかしてくれた。
しかしリーゼ姉が追い打ちをかける。
「お母様、ウインドウォールをかけていただきありがとうございました。私初めてでしたので少し驚きましたが、安心して戦えましたわ!お母様は本当に凄いですわ!」
満面の笑みでお礼を言うリーゼ姉に優しい笑顔で笑いかけるママン。絵になるなーとか思って気を抜いていると、
振り返ったママンの顔が般若に変わる。
「ジーク!後でいーい?」蛇に睨まれたカエルの気持ちが分かった気がする。
とにかくリーゼ姉の初魔物討伐が無事終わったことに安堵するのだった。
その後もゴブリンやオークが五~十体くらいで度々襲ってくる。
しかし、こちらも同じフォーメイションで難無く倒していった。
もちろんリーゼ姉も討伐に参加し鑑定するとLV3に上がっているほどだ。
ただ残念なのがお約束の王女様や上級貴族のご令嬢の馬車は襲われていなかった。
『残念、やっぱり人生はままならない。』
拙い文章を読んでいただきありがとうございます。
途中お休みもしましたが連載を初めて一ヶ月になります。
アクセス数が増えるのが楽しくて、
ブックマークや評価や感想がいただけるのがうれしくて、
一ヶ月続けることができました。
これからも詰まった時や忙しい時は、
お休みを頂くかもしれませんが、
続けて行けるよう精進いたしますので
今後ともよろしくお願いします。




