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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
3章 都会は楽しい?それとも…
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25 宿場町での噂



 ケルンブルグの街を出ると麦畑が広がり、それが草原になり、丘が見えたり、森の中を通ったり徐々に景色が変わって行った。


 街道は石畳で舗装され山道とはかなり違ってスピードを出さなければまだましだった。


 しかしサスペンションがないのでかなり揺れる。スプリングやゴムタイヤが欲しくなる。


 知識チートで一攫千金と行く前にこれから何度も王都まで往復することを考えると早々にサスペンション開発をする必要がありそうだ。


 まだ赤ん坊だけど…


 たまに舗装されていない側道があり、入って行くと村があったり他領に続いているらしい。


 宿場町は賑やかで千人以上の人が生活していそうだ。


 宿屋、酒場、雑貨屋、武器屋、服屋、鍛冶屋、色々な店がそろっている。


 街道を通っていても何度も商隊や旅人とすれ違うので人通りが多いのだろう。


「盗賊とかいないの?」とママンに聞いたら、


「いたらすぐに討伐隊が捕まえに行くわ。治安が悪いと商人の往来が減るから領の運営に直ぐに影響が出るの。そんな事ヒルデ先輩が許す訳ないじゃないの!」ごもっともですと頷いた。


 ケルなー辺境伯領と国王直轄領の領界には小さな町があり一応往来を監視する関所があった。道に門の様なものがあるのだが周りが草原だけに何とも奇妙なものがあった。


 関所の町を三日目の朝に出発して、国王直轄領に入っても代り映えしない風景が続く。


 直轄領を四日進んで泊まった町は、アーベレ男爵領内だった。領の境が何処なのかさえ解らなかったのだがそんなものらしい。


 アーベレ男爵領から東西南北に街道が伸びており東は王都へ、南はキュプナー子爵領を経由してガイエス辺境伯領へ、北は幾つかの領地を経由してヒンター辺境伯領に続いている。


 何を言いたいのかというとアーベレ男爵領は交通の要所であるということだ。


 毎晩男達と冒険者は宿で夕食を取った後、酒場にくり出して飲んでいる。


 飯と一緒に飲めばいいのにと思っていたがそうじゃないらしい。


 アーベレ男爵領で泊まった翌日の昼飯はかなり賑やかだった。


 冒険者の五人が酒場で聞いた話をしたからだ。


「キュプナー子爵領が酷い状況らしいですよ。」神妙な顔で話し始めたモース。


「聞いていますわ。カールハインツ様がブラディーグリズリーを討伐された話は…」


 エリザが父さんに向かって尊敬の眼差しを込めて言った。


「キュプナー子爵領が酷い状況らしいと、私達が討伐した魔物がどう結び付くんだい?」


 父さんが興味深そうに話を促す。


「昨日、皆で飲み屋にくり出したんでさぁ。まあ、毎日のことなんですが…そこで妙な話を聞きやして…何でもガイエス辺境伯領から多数の魔物がキュプナー子爵領に押し寄せて、村や町を荒らしまわっているそうなんでさぁ。」アストが答える。


「キュプナー子爵はガイスト派じゃないですか?それで救援をガイエス辺境伯に求めたんですけど、無しの礫でガイエス辺境伯からは返事すら帰ってこない。しかたなくアーベレ男爵領のギルドをはじめ、周辺領のギルドに討伐依頼を出して挙句の果てには王都のギルドまで声かけているそうですよ。」モースが答える。


「それで、ケルナー辺境伯領で同じように暴れた魔物を、カールハインツ様が討伐されたのが噂になっていまして、その討伐された魔物がブラディーグリズリーだった。と昨日聞いたのですわ。」エルザが続けた。


「ブラディーグリズリーの他にBランクのファングボアやブラックウルフが率いる二十頭以上のCランク魔物のシルバーウルフの群れも討伐したとか…キュプナー子爵領の領民なんてカールハインツ様が居てくだされば…とか噂しているみたいですよ。」最後にイリスが締めくくる。


「確かに熊と猪と二十六頭の狼の魔物は討伐したけどレッドグリズリー以外はたいしたことなかったよ。猪なんてオレが討ち漏らしたのをあっさりマリーが弓矢一撃で倒したし、狼のリーダー格も『ファイアーボール』三発で倒したみたいだよ。BやCランクの魔物のはずがないよ。」


 父さんがあっさりと冒険者の言うことを否定した。


 冒険者達は納得していない様子でコソコソと話している。


「そんなに弱い魔物にあれだけの被害は出さないわよね。」


「いやいや素材下ろしているのを見たから間違いないよな。」


 完全にバレテーラー。


 オットーの顔がどんどん真っ青になっていく。


 ママンは完全すっ呆けモードだ。


「それじゃあ、この辺の冒険者はみなさん南に行かれているのですか?」


 メリザが話を逸らしにかかった。


 心の中でサムズアップする俺たち三人。


「ランクCの上位以上の奴らは結構行ったみたいですぜ。ただ、Dランク以下は残ってまさあ。流石に命が惜しいみたいでさぁ。」アストが答えた。


「キュプナー子爵領は今いるアーベレ男爵領のすぐ南でしたよね?この辺まで魔物は来ないのかしら?」ママンが聞くと。


「昨日聞いた話によるとゴブリンやオークの群れが流れてきているみたいです。少し慎重に進みますので宜しくお願いします。」とモースが答えた。


 オットーも疑問を口にする。


「そんなに酷いのなら、王国に救援要請は出してないのかい?」


「それが不思議なことにキュプナー子爵領から来たものは王国に救援要請を出しても無視されていると言っていますが…」モースが途中まで話してイリスが続きを引き継ぐ。


「王国の上層部、ぶっちゃけると女王様にはキュプナー子爵から救援要請が届いてないらしいんですよ」


「なもんで、軍は動いていないって感じでさ―」アストがまとめて食事をつづけるのだった。


 流石冒険者だ!情報収取に余念がない。


 しかし、一方で俺は、あーあフラグ立てちゃった。それも二つも…


 魔物が出るってフラグに王都に着いてからのフラグも…


 胡散臭い話てんこ盛りである。


 これからのことを考えげんなりするのだった。


『平和な日々は長くは続かない?人生はままならないのだから…』



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