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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
3章 都会は楽しい?それとも…
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18 バザー

 


 父さんが宿に帰ってきたのは昼を過ぎてしばらくたってからだった。


 かなり歓待を受け上機嫌だ。


 昼食をご馳走になり、ワインもご相伴に預かりかなり酔っぱらっている。


 本当にちょろい人だ。


 ユリウス兄も興奮気味で昼食の御馳走のことを嬉々として語っている。


 ビアンカ姉はことさら一緒に行けなかったことを悔しがったが、流石に二歳児では無理と言われてむくれている。


 父さんとユリウス兄は戻ってきて早々に、目を覚ました俺のところにやってきて抱き上げ喜んでくれたのだが…


「ジーク!男は家族を守れるように強くなければいかん!あれしきの魔物に慄き五日も寝込むようでは将来が心配だ!少し大きくなったら厳しく鍛えねばな!」


 それに続くようにユリウス兄が


「ジークは虚弱だなぁ。俺が一緒に鍛えてやる!」と父さんと同じことを言う。


 ママンの方をジト目で見ると肩をすくめていた。


「報告はどうだったの?」とママンが聞くと


「熊の魔物との戦闘は詳しく語ってきたよ。マリーの活躍もちゃんと話しておいたからね。吟遊詩人が歌にしてくれるそうだよ。わっはっはっは!」


「そうではなくて、一連の魔物の移動の原因とか…熊の魔物のランク付けとか…同等の魔物が出現する可能性とか…確認することは山ほどあるでしょう?」


「しらん!聴かれたことに答えたまでだ!それにあのような魔物が早々現れるわけがないだろう。マリーは心配性だなぁ。明日、家族でお会いすることになっているから、気になるならその時に聞けばいいじゃないか。」


「そうですね。そうしますわ。ところでこの後のご予定は?」


「特にないが、疲れたので宿で休むことにするよ。」


「それでは私達はバザーなどを見てきますわ。」


「ああ。好きにするといいよ。ただ無理はするなよ。」


「お気遣いありがとうございます。」


「皆さんはどうしますか?」


 子供たちとメイド達に同行するか聞くとユリウス兄以外は一緒にいくということになった。


 オットーに父さんのことを任せ、従士からケインとアナベルを連れて馬車ででかける。


 ママンは冒険者ギルドに向かいたいみたいだが子供も連れているのでバザーへ向かうことにした。


 ◇◇◇


 ケルンブルグ街には東西南北に城門があり街の中心からそれぞれの門に向かい片側三車線ぐらいの大通りが繋がっている。


 街の東側に市場やバザーなどの庶民の台所があり、西は高級商店街、南は下町、北には領主館を含めた、富裕層の住宅街というようなすみ分けになっている。


 王都からの街道が繋がっている東門が最も交通量が多く通りも賑やかだ。


 宿屋なども多く、東門がケルンブルグの玄関的な場所になっている。


 大通りの途中には数ヶ所大きな広場があり、そこは商業ギルドによって区分されバザーが出店できるようになっている。


 色々な屋台がありパンや串焼き肉、スープに果実のジュースなど軽食を食べられるようになっていた。


 周辺の村落から野菜や猟でとれたウサギや鳥などの食材なども並んでいたりする。


 また、距離はあるがケルナー辺境伯領は海に面しているため、魚介類の干物などの海産物なども売られており大変に賑わっている。


 中には帝国や、共和国からやってくる行商人などもおり、珍しい作物や、妖しげな薬や魔道具なども売っている。


 ある種の混沌を生み出しているのだが、冷やかして歩くには非常に楽しめる場所である。


 そんな中をミュラー家一行の子供たちは嬉々として歩き回り屋台の食べ物をせがんだりするのであった。


「ママンあの果物食べたいの!水気が多くて美味しそうなの!」


 ビアンカ姉がいち早くおねだりをする。


 ママンやメリザはそれが何か知らなかったみたいで店主に聞いてみる。


『緑に黒い縞模様の入った果実で、赤い果肉に汁気が多く甘いので夏の暑い時期に井戸で冷やして食べるおいしい、瓜の一種です』と教えてもらったのだが、完全にスイカそのものだった。 


 それを切り売りしているみたいなので早速全員で食べることになった。


「甘くておいしいの!」


「ホント瑞々しいですわ!」


「甘くておいしいですぅ!」


 ビアンカ姉、リーゼ姉、ニーナに大好評で三人ともお代わりをしていた。


 ママンとメリザは、「瑞々しくて美味しいのですが、人前で種を出すのが…」と言っていたが満更ではなさそうだった。


「ママン食べた種を取っといてね。来年育ててみるから。」


 お願いすると、ママンが一玉丸々買ってくれた。宿に帰って食べるそうだ。


 他にも、なし、トマト、カボチャなどがあったのでその都度ママンにお願いして買って貰った。


 鑑定を使うと名前が日本語表記なので間違うことがなく結構便利だ。


 あと、甜菜を売っている行商人がいた。


 蕪みたいだなーと思って鑑定してみたら甜菜だったのはラッキーだ。


 北の帝国から来た野菜で本来は家畜の飼料らしい。


 ほのかに甘いので露店で売っているそうだ。


 種は売っていないか聞いてもらうと少量持っているそうなので十本の甜菜と一緒に売ってもらった。


 ママンはお願いするたびに、興味深そうにしていたが、子供たちも一緒なので詳しく説明できなかった。


 あと、バザーにはなかったが豚と鶏は一般的に飼育しているらしいので、ケインとアナベルに頼んで馬や牛と一緒に購入しておいてもらうことにした。


 その時に馬や牛などの家畜も血が濃くなりすぎると子供が生まれにくくなり、虚弱なものが増えるので出来れば雌雄で購入するのがいいとか、血統によって特徴が変わるので用途に応じて購入し交配させた方がいいとかも伝えておいた。


 ケインとアベルはなるほど「人と同じなんですな。」と納得してくれたみたいだ。


 市場の次にお願いして木工所に行ってもらった。


 まず、正方形の板に八×八の升目を書いてもらう。


 次に薄い板で升目に入る大きさの丸いコインを六十四枚作ってもらい、裏表を白黒に塗り分けてもらう。


 お馴染み『リバーシ』である。細工もそんな難しくないので明日の夕方までに作ってくれるそうだ。


 ママンが何に使うのか聞いてきたが、子供の玩具だと言うとすんなり納得してくれた。


 使い方はできてから説明することで納得してくれた。


 これで、馬車の中でも子供たちは退屈しないですむだろう。


 下手すると大人の方がはまってしまうかもしれない。


 宿への帰り道にママンとメリザに甜菜の調理方法を話した。


 甜菜を洗い、皮をむいて小さく賽の目上に切る。


 鍋に入れてそこにお湯を甜菜が浸かるくらいいれて、煮立たないように温めてから、毛布にくるんで温度が下がりにくくして一晩寝かせる。


 甜菜を引き上げ、水分を絞る。


 残った汁をゆっくり煮立たないよう温め、スプーンに一杯の木灰を三から五回に分けて入れ、不純物が沈殿するのを待つ。


 その後上澄み液を別の小さい鍋に移し水分を飛ばしてゆけば甘い蜜になるはず。


 するとメリザが今夜、甜菜をお湯につけて、明日煮詰める作業をしてくれるそうだ。


 宿の人間には何をしているか解らない様にして欲しいというと「もちろん承知しております。」とのことだった。


 ◇◇◇


 宿に帰ると父さんとユリウス兄は裏庭で剣を振っていた。


 みんなが市場へ出かけた後、眠くなってお昼寝をしたのだが、一時間位眠ると起きてしまいすることもないので剣を振っていたそうだ。


 いい汗がかけたと喜んでいた。


 暫くすると食事の時間になり宿の食堂で食事をとることになった。


 村とは違った少し贅沢な食事が出てきて、大人の男たちは当然酒を飲み陽気にうかれていた。


 スイカとトマトは宿でたらいを借りて井戸水を入れママンの魔法で氷を出しキンキンに冷やして夕食時に食べることになった。


 その時種はきちんと取っておいてもらっている。


 やはり夏は石畳や石壁が多い街中では夜でも生暖かい。


 よく冷えた、酸味のあるトマトは酒のあてにもちょうどよく、大人に人気があった。


 マヨネーズとかあるとさらにいんだけどその辺はまた次回かな。


 スイカは初めて食べるユリウス兄も喜んでがっつき、もちろん女性陣も嬉々として食べ、あっという間になくなってしまった。


 ママンとメリザから期待の眼差しが刺さるようで、残った種でなんとか上手く村で栽培できないか必死になって考えなければいけなくなってしまった。


 一人でコソコソ実験した方がよかったのかなと今更ながら後悔した。


『自業自得ながら、やっぱり人生はままならない。』と思いながらねむるのだった。


読んでくださってありがとうございます。

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