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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
2章 はじめての旅行
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13 戦の鐘

 


 従士たちが気合の入った、いい顔で一斉に準備にかかる。


 忙しなく走り回る従士を後に、ママンは子供たちの所に行って話をするみたいだ。


 子供たち三人と、ニーナを前に話始める。


「やはり大きな熊の魔物がこの先にいました。リーゼ、ユリウス、ビアンカ、念のためあなたたちは幌馬車に乗って一度村の方に戻りなさい。大きな熊なので突っ込まれて荷物を台無しにされるととても困るの。私たちは熊を倒しに行きます。その間大事な荷物を守ってね!よろしくて?」


「うん、にもつまもるの。」


「任せてください母上」


「お母様、大丈夫ですの?」


 片手をハイと上げるビアンカ姉、ユリウス兄は平常運転だが、リーゼ姉はやっぱり心配そうにママンを見上げる。


「うちには『百人斬』のカールがいますから大丈夫!心配いらないわ!」


 笑ってママンが返すとリーゼ姉もすこしホッとして笑った。大丈夫みたいだ。


 子供たちから少し離れてニーナに話す。


「ニーナ、馬に乗れましたよね?」


「はい、乗れますぅ」


「では、一頭渡しますので幌馬車と一緒に村に向かってください。いざと言うときはリーゼとビアンカのことをよろしくお願いしますね!」


「若奥様ぁ」泣きそうな顔でママンを見るニーナ。


「大丈夫ですよ、少し時間はかかるかもしれませんが、すぐに迎えに行きます。念のためです。わかりますか?」


「はいぃ、若奥様ぁ」


「早く終わらせて、王都にいきますよ!」


「はい!若奥様!」


 ものすごく楽しみにしている王都見物を思い浮かべたのか元気が出たみたいだ。


 5分後幌馬車の準備が終わり、子供たちは元来た道を戻り始めるのだった。


 ◇◇◇


 箱馬車は野営地に置き、馬七頭に鞍を乗せ槍や盾、弓矢、食糧など荷物になるものを馬に乗せる。


 基本全員歩きだ。そして、俺はママンの後ろにおんぶされている。


 父さんがママンに突っ込んだ。


「なぜジークが残っている?」


「だって、ジークですから。」


 いけしゃあしゃあとママンは言ってのけた。


「いや、答になってないだろ」


 胡乱げにママンを見つめる父さん


「ジークは強いですし…頼りになりますよ!」


「赤ん坊だぞ!」


 父さんが怒鳴りつけた。今にも切れそうだ。


「ママン、まんま」


 ちょいと助け船を…


「あ~困ったわねぇ~防具をつけてるから……ごめんなさいちょっと我慢してくれる?」


 うまく乗ってくれた。


「あ~い」俺が返事をする。


「なるほど、マリーがいないとミルクがあげられないんだな!解った。解った。それならそうと言ってくれよ!」


 ちょっと父さんがむくれながら歩いて行った。


 ママンがサムズアップしていい笑顔だ!


 おちゃめだよなぁ~


 父さんは一人一人に声を掛けきっちり最後の確認を行っている。


 やるな父さん!こういう所はきちんと見習わないとね。


 ◇◇◇


 さーて、魔物退治の時間だ!


 隊列を組んで山道を下っていく。


 父さん、オットーを先頭に若い従士三人がついて行く。


 真ん中にママンとメリザその後に怪我をした従士三人が続きケインとアナベルは殿を歩く。


 ママン以降は皆馬を引いている。


 父さんの武器は大剣、オットーは盾とロングソード、それ以外は盾と投擲槍だ。一応背中に普通の槍も背負っている。


 ママンとメリザはもちろん弓矢を装備している。


 ママンに一つ確認しておく。


「ママン、こおりまおうできう(こおりまほうできる)?」


「ええ、ジークが使うアイスニードルは撃てるわよ。そんなに本数は撃てないけど…」


 うん十分です。助かります。


あいるしたあ(あいずしたら)くまのかおにうってぇ(くまのかおにうって)


「わかったわ!ママンもがんばる!」にっこり微笑んでくれた。


 皆身内と言っても流石に衆人環視の中で、赤ん坊が氷魔法使うのはまずいでしょう。


 一応ママンを隠れ蓑に使わせてもらおう。


 山道を三キロメートル程下っていくと、眼下に森を見下ろせる場所に出てきた。


 一箇所大きく木がなぎ倒されて広場になっているところがある。


 そこには麓から木をなぎ倒して一本の道が繋がっており、そのど真ん中に奴はいた。


 まるでアオ○シラ


 分っていたよ!魔力がでかいことは一キロメートル手前から…


 ただ信じたくなかったんだ…オオカミ二十頭合わせたよりでかいって…


 体がブルブル震える。歯がガタガタなってる!(ちっこい歯しか生えてないけど)


 あっおしっこちびった。まじ怖い!こいつやばい!


『逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ…』


「ジーク?こわいの?」ママンが俺の方を窺う。


「………」


「あなたは死なないは…私が守るもの」


 ぽかんと口を開けママンの顔を見つめる。


 あ~面と向かって言われると…


 顔が熱い!なんかドキドキする。


 ふっなんか吹っ切れた。これなら大丈夫だ。


「ママン、ちびっちゃった…」


「あらあら、ジークでも怖がるのね。うふふ」


 うむ、平常運転に戻った。


 名言に恐怖も吹き飛んでしまった…


 ◇◇◇


 とりあえず父さんはガンガン進むみたいだ。さすが肝が据わっている。


 父さん分っているのかな?奴の強さ…


 接敵まであと五百メートル、馬が進まなくなった。


 嘶きはあげないが、完全に脅えきって限界だ。


 この先にいる奴の怖さが解るのだろう。


 手綱を木に結んで馬はここに置いて行く。


 いざという時、大分戻らないといけないが仕方がない。


 そして山道から森の中に入り込む。


 案外下草が生えてなく、足元は悪いものの普通に歩けるので助かる。


 鉈とかで草を刈りながらなんて、あっという間に奴に気付かれてしまう。


 あと二百メートル、熊の魔物(アオ○シラ)が寝転がっているのが分かる。


 そばに猪の魔物の喰い残しが転がっている。


 昨日倒したのより一回り大きい。


 もしこいつがここで犠牲になっていなかったら今頃は…


 思わずぞっとする。


 ママンとメリザも同じことを思ったのか、目と目を合わせて「ふぅー」と息を吐いた。


 父さんたちは構わずガンガン足を進めていく。


 そして、たぶん気づかれた。奴の魔力が膨れ上がった。


 あと百メートル熊の魔物(アオ○シラ)はまだ寝転がっている。


 父さんが従士達に散開の命令を出した。


 あんなデカ物相手に纏まって掛かるなんて自殺行為だ。


 各個にヒット&アウェーで的を絞らせない様にしないと、突っ込まれて一撃で終わってしまう。


 奴の姿がはっきり見えた。


 で、でかい中型(四トン)トラックぐらいの大きさがある。


 全身覆われた毛がすごい。


 皮膚も分厚そう、皮下脂肪も厚そうだ。


 刃物通るのか?片手剣で攻撃しても剛毛にはじかれてしまいそうだ。


 突きなら通りそう?


 槍で突いても急所じゃないとダメージが入らないかもしれない。


 あと五十メートル、熊の魔物(アオ○シラ)が徐に起きあがり始めた。


 ゆっくりと首をもたげこちらを見る。


「ニヤリ」奴が笑った。


 笑ったように見えただけ、でも完全に獲物認定された。


 あと三十メートル、父さんとオットーが一気に走りだした。


 ママンとメリザは立ち止まり矢を番え、弓を引き絞る。


 あと十五メートル、熊の魔物(アオ○シラ)が立ち上がり両前足を持ち上げ威嚇する。


「グワァァオオォーー」


 威圧が乗った大音響が響き渡った。


 若い従士達が怯んで足が止まってしまった。


 顔が引き攣り完全に飲まれ固まってしまう。


 しかし父さんは怯まない。


 獰猛な獲物を狙う眼差しで、奴を下から睨みあげる。


 大剣を引きぬいた。


 それに合わせて、オットーは盾を構えロングソードを抜いく。


 さらに、まだ突っ込む!何か策があるの?


 あと十メートル、熊の魔物(アオ○シラ)が上げた右前足を大きく振りかぶり薙ぎ払うように振り回す。


 剛爪が父さんを襲う。


 父さんが回避……しない?


 そのまま左横から爪が迫るのもお構いなしに大剣を振りかぶる?


 オットーが盾ごと父さんの前に出た!


 ガァッキーン盾に爪が食い込み大きな音と共にオットーと盾が吹き飛んだ。


 しかし、巧く爪は受け流した。


 流れて伸びきった熊の魔物(アオ○シラ)の右腕が父さんの前に…


「うおおおおおぉー」


 大きな雄叫びをあげ、気合いもろとも振り上げた剣を右腕に叩きつけた。


「ガッキーン」


 大きな音が響き渡り、闘いの鐘が鳴り響いた。





読んでくださってありがとうございます。

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