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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
2章 はじめての旅行
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閑話 メイドは見たⅣ

メリザ視点です。

夜空が白み始めた頃、ようやく魔物全てを討伐することが出来ました。


 馬車に様子を見に行くと、ユリウスとビアンカは相変わらず寝ています。


 リーゼとニーナに魔物を倒したことを教えると、全身で「ほぉー」と息を吐き、椅子に座ってだらしなく背もたれにもたれ掛け全身の力を抜いて、魂が抜けたように呆けてしまいました。


 相当緊張していたのでしょう。再起動までは少し時間が掛かりそうです。


 ジークはというといつもの籠の中でかわいい顔で寝ています。


「こうやっていると普通の赤ん坊なのにね♡」鼻の頭をツンツンと突きます。


 ちょっと顔を顰めて手で顔の前を払います。


 危ない。危ない。この度の英雄を起こしてしまう所でした。


 暫くここで子供達の様子を見ておくことにします。


 するとマリーが様子を見に来ました。さぞ心配だったことでしょう。


 そのころにはリーゼとニーナもウトウトと舟をこいていました。


 それを見てマリーは安心したようです。


 ただ、ジークのことを話すと心配そうにジークの顔を覗き込んでいました。


 外の状況は従士が三人傷を負ったそうです。


 命に別状はないようですがかなり肉を抉られているので一度村に戻ってしっかりと手当てをした方がいい状態です。


 これで、いったん村に戻れます。わたくしはホッとしました。


 マリーはとりあえずジークを籠に寝かせたまま指揮をしている天幕に連れていきました。


 ◇◇◇


 夜が明けたので昨日のスープを温め直し、堅パンを出して朝食の用意をしておきます。


 全員疲労の色は見えますがガツガツ朝食を食べていました。


 その中に戦闘で負傷したものが居たので大丈夫か聞いてみますと、


「神の奇跡ですよ!見てください抉られた肩の傷がふさがっています。」


「俺なんか太腿食われて歩けなかったのにこの通りです。」と言いながら普通に歩いたり飛び跳ねたりしています。


「肋骨を数本持って行かれた筈なんですが痛みが治まりました。神に感謝です!」


 そんな従士の後からマリーが眠っているジークを抱きしめて食事を食べに来ました。


 マリーはジークの分もしっかり食べなければいけませんので、食事にも気を使っています。


 マリーと話をするとジークは一度目覚め怪我人の様子を見に行った後、また気を失ったようです。


 そんなことがこの赤ん坊に出来るかどうかわかりませんが、マリーの様子から、ジークが怪我を治したのでしょう。


 相当の魔力がいるはずですが、魔力枯渇で倒れた数時間後にまた魔力枯渇で倒れるなんて自殺行為です。


 これ以上ジークに無理をさせてはいけません。


 本当に不甲斐ない!悔しさで胸が一杯になります。


 取り敢えず村へ帰りましょう。そう思って準備をしているとカール様とオットーが来て先に進むと言うではありませんか。


 従士の怪我が治ったことは僥倖で、神が前に進めと言っているのだと抜かします。


 あんたら馬鹿ですか?脳筋とは思っていましたが…


「シルバーウルフの群れなんてこの辺にいなかったでしょう?北から来たに違いありません!」わたくしが怒鳴ります。


「それにシルバーウルフは余程のことがない限り縄張りから離れないのですよ!この先にシルバーウルフを追いたてた魔物がいるかもしれないのですよ!」わたくしは続けます。


「昨夜の戦闘で三人も負傷者が出たのです。運良く死人がでなかっただけなのです!とにかくいったん村に引きましょう!」マリーも必死です。


「子供達がいるのです。無理は控えてください。お願いします。」

 最後にわたくしは懇願しました。


 それを聞いてカールが一言


「子供達は俺が守る。先に進むぞ!」


 マリーとわたくしは絶句しました。カールに守れないと思うから撤退を進めているのですがそれさえ解ってもらえないようです。


 わたくしとマリーはガックリと肩を落として出発の準備をするのでした。


 ◇◇◇


 その後順調にケルナー辺境伯領を目指して山道を進みます。山道の半分を消化し、ちょうど下り坂になってからしばらくして猪の魔物に出くわします。


 Bランクのファングボアですね。


 カールの剣は歯が立たなかったのですがマリーとわたくしの矢は見事両目を捉え、マリーの矢が脳まで届き一撃で倒してしまいました。


 マリーはジークをおんぶして戦いに参加したのですが、弓と矢を魔力で強化するという方法を取ってのけました。それもジークの魔力で…


 また、ジークに助けられた…


 ジークの規格外のすごさに、もう大人の矜持なんて言うのはどっかに吹っ飛んでしまいました。


 ただ幼さゆえにどこまでも突っ走ってしまうジークを、守らねばと思う気持ちが強くなります。


 ジークを暴走させちゃだめです。ジークを魔物に合わせちゃだめだと心から思います。


 ◇◇◇


 能天気に男たちが猪の魔物の解体をしています。ファングボアの肉は高級品です。


 当然今夜は串焼き肉と肉入りスープを作る予定です。


 男たちはそれを肴に宴会をするのでしょう。


 暢気なものです。


 所でマリーとジークは何処へ行ったのでしょうか?


 周りを見回していると眠ったジークを抱いて帰ってくるマリーがいました。


「マリーどこに行っていたのですか?ジークにこれ以上負担をかけてはいけません。」


「分っているのですが…止められないのです。」肩を落として苦虫を噛み潰したような顏で呻く様に答えました。


「ジークは利口な子です。きちんと魔力枯渇の恐ろしさを教えてあげましょう。少しは自重してくれるかもしれません。」


「そうですね。きちんと話しますわ。メリザ姉さまありがとうございます。」


「いえいえ、わたくしもジークが心配なのです。多分ジークは家族に何かあったら自重なしに魔力を使うのでしょうが…それでも…」


 二人で沈痛な顔をしていると出発するという声が聞こえてきました。


 さて、また夕食の下ごしらえをしながら野営地まで馬車に揺られましょうか。


 ◇◇◇


 予定通り野営地について夕食の準備をします。


 ファングボアの肉祭りです。


 子供達が喜んでいます。微笑ましいです。でもそこにジークはいません。


 男達が騒いでいます。ウザイです。自分で狩ってから浮かれてください。


 マリーがジークの様子を見に行きジークと一緒に帰ってきました。


 カール、オットー、わたくしを呼んで話し始めます。


 要約すると、この先に強力な魔物がいる可能性があるから村に戻ろうということです。


 わたくしも、その意見に賛成です。マリーの言う通りだと思います。


 しかし、話をするタイミングが悪かったです。男たちはことごとく魔物を討伐し気が大きくなっています。


 さらに酒を飲んでいます。これでは無理です。説得できません。


 死人が出るかもしれませんね。子供達は何としても逃がさなければいけません。


 思案に耽っていると、マリーとジークがどこかに行こうとしています。


 わたくしは弓矢を二セット持って後をついて行きます。


 どうも岩を的に何かの練習をするみたいです。


 持ってきた弓矢の一セットをマリーに渡し、わたくしも魔力を弓矢に纏わせて強化する練習をします。


 ジークにばかり頼っていては自分を許せません。


 何とかコツをつかんできたころ、ジークが魔法を発動させます。


 風の円盤を自由自在に動かして、大岩を切り刻んでいくではないですか。


 マリーもわたくしも目が点です。完全にフリーズ状態です。


「ジーク様がいれば強力な魔物が来ても大丈夫なのでは……」わたくしの口から思わず言葉がこぼれてしまいました。本当に情けないです。


  その後もアイスニードルを無数に打ち込んでいます。


 本当に規格外です。


 まだ、ギリギリ魔力が残っているところで練習を終えてくれたみたいなのでほっと安心しました。


 マリーが何か騒いでいます。「ジークがママンと呼んでくれた!」


 あ~母としてうれしいのは分ります。でも今更…


 そんな事より、ジークは疲れているようなので早々に寝かせまましょう。


 ジーク、ゆっくりおやすみなさい。

読んでくださってありがとうございます。


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