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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
1章 転生と新しい家族
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8 初めての野営で

 


 オオカミの魔物を倒したあと、一時間程進んで野営を張る予定の河川敷に到着した。


 大きな岩がごろごろしているので川の側に馬車で乗り入れることができないが、馬車を止められるところに、馬車をバリケードにするように四方を囲んで中心に天幕を張ったり、煮炊きができる竈を作ったりした。


 他にも馬に飼葉を与えたり、水を与えたりと皆忙しそうである。子供たちも水汲みに行ったり野菜スープの具材を刻んだりお手伝いをしている。


 俺は一足先にママンに食事を貰って、ベビー籠の中でお休みだ。


 日が暮れたころ何とか、天幕を張り終え、食事の準備が終わった。


 夕食は焼しめたパンと竈で作った野菜スープ、干し肉にドライフルーツだ。


 お腹もすいていたのだろう子供たちは、ぱくぱくと一生懸命に御飯を食べた。


 食べ終わるとすぐに馬車に乗り込み、早々に寝てしまった。


 俺もベビー籠ごと馬車の中に連れて行かれそうになったが、ママンの手を握ってぐずったらそばで寝てもいいことになった。


 落ち着いて空を見上げると満点の星空が迫ってきた。


 そして、周囲に広がる闇に驚いた。


 焚火の炎以外何も光ってないのだ。


 この闇の中じゃまったく身動きが取れない。


 普通のオオカミに襲われただけでもパニックになりそうだ。


 ましてや魔物なんかに襲われた日にゃ…ぶるぶる……おしっこちびっちゃったorz


 初めて泣いておしめを換えてもらった。orz


 周りの様子に聞き耳を立ててみると案外リラックスして焚火を囲んで話し込んでいる。


 子供自慢に嫁の愚痴、年寄衆の愚痴がひと段落ついたころで、数人の若い従士が村の年頃の娘の話をはじめだした。


 あ~分る~この年代は、頭そのことしかないよね~


 そのうちサラがかわいいと言い始める奴がいた。


『当たり前のことを言うな!』ふんす、ふんすと俺の鼻息は荒くなるが誰も気づかない。


 挙句の果てにニーナに、サラの話をしろと迫っている。


 かなりむかつくが一方で自分の若いころを思い出してしまい。


『あ~若いっていいなぁ~』思わずおっさんが入ってしまった。


 和やかな雰囲気の側でママンと父さん、オットー、メリザは今後の魔物対策を話していた。


 メリザが「子供たちがいるので一度引き返した方がいいのでは…」と言った時は、かなり驚いた。


 日暮れから一時間ぐらい経ったのだろうか、東の空に大きな月が浮かんでいた。


 満月ではないが木立が薄っすらと確認できるくらいに明るくなったので少し安心したが、真っ赤な色を見て吸血鬼でも出て来るんじゃないかと変に不安になった。


 ところで、この世界には吸血鬼とかオオカミ男とかいるんだろうかとぼんやり考えているうちに眠りに落ちていた。


 ◇◇◇


 『びくん!』


 俺が赤ん坊じゃなければ飛び起きてすぐに武器を取っただろう。


『やばい、やばい、やばい』冷や汗が背中を伝い、手がぶるぶる震えている。


 見張りの二人を見ると何も感じずに何か楽しそうに話をしている。


 みんな毛布にくるまって眠っている。


『何もないのか?いや、何か近付いて来ている。絶対やばい!』


 力いっぱい泣き叫んだ!


 東側五百メートル位から薄っすらとした魔力が、一斉に大きくなった。


 昼間襲ってきたオオカミの魔物だ。その数、十五頭?


 ママンと父さんが飛び起きた。


 見張りもびくっとするが、にこやかにこっちを見ただけ。


 オットーとメリザが目を覚ました。


 他の従士は?


 毛布を被り直してまだ寝るきだorz


 『バカヤロー早く起きろ!』激しく泣いても起きないうすのろたち。


 ママンが心配そうに抱き上げる。


 『やばいんだよーとにかく叩き起こす方法は?魔法でも使えれば……』


 とにかくやってみる。


 丹田に魔力を圧縮。


 手のひらに移動させる。


 イメージはド○クエのメ○ミのような火の玉。


 暗闇を照らしたいので光が長続きするように、燃焼剤の水素と酸素を水分から分解する。


 土中の金属酸化物を抽出。金属から酸素を還元する。


 できた純金属、水素、酸素を手のひらに魔力と一緒に圧縮して展開する。


 圧縮弾を魔物が接近中の東側上空三十メートルに打上る。


 『ファイアーボール』と叫んで着火した。


 『ドドーン』派手な音と共にまばゆい光が当たりを照らす。


 うすのろ従士が飛び起きた。


 ママン、父さん、オットー、メリザが炎の方を素早く確認する。魔物の群れに気が付いた。


 魔物もいきなりの攻撃にひるんだ様子で立ち止まり、遠吠えををあげて威嚇している。


 少し時間が稼げたか?


 「多数の魔物が東より接近中、武器を携帯、魔物の数は十頭以上、槍と盾にて応戦、防衛戦闘用意。陣形組めぇー」


 「魔法戦の用意もしておけ!」


 父さんが矢継ぎ早に号令をかけると従士たちがそれに合わせて慌てて武器を持って隊列を組む。


 しばらく、状況を観察していた父さんが再度声を発した。


 「敵数二十、昼間のオオカミの三倍以上だ。前衛盾持ち七人が防衛線を築け、左右と後方一名ずつ奇襲に備えろ、マリーは馬車の上より魔法で牽制。メリザはニーナと一緒に馬車で子供たちの護衛。俺とオットーは陣よりでて遊撃する。危なくなったら声をあげて助けを呼べ。わかったな!」


 父さんの指示に全員「おお!」と了解の声をあげる。


 あっという間にオオカミたちが迫ってくる。


 前衛に体当たりをかまし陣形を突破しようとする。


 それを槍で突き返し、盾で殴り飛ばす。


 回り込もうとするオオカミを馬車の上からママンが炎の魔法で牽制し葬っている。


 父さんとオットーも左右から突撃するが、数が多くて前衛が対応しきれない。


 前衛が突破される!


 『魔力は少ないけど牽制なら……』


 さっきの要領で今度は金属じゃなく木片を炭素にしてオオカミの二列目後方に向けて、フレンドリーファイアーを起こさないようにちょっと離して『ファイヤーボール』をぶっ放す。


 三発ぶっ放したところで意識が飛んだ。


 ◇◇◇


 「ひぃふぁぁひぃ(しらない)へぇんひょーはぁ(てんじょうだ)。」


 気が付くと心配そうにママンが俺の顔をのぞいていた。


 そらー心配するよねぇ。夜中に赤ん坊が泣き始めて、魔法ぶっ放して、魔物が襲ってきて、さらに魔法ぶっ放して、気を失ったんだもん。


 「ジーク大丈夫?」ほっぺたをツンツンと突くママン。


 「あう、おああうーあぁ(うん、おなかすいた)


 「あらあら、お腹すいたの?おっぱいのむ?」


 呆れた顔でこっちを睨みながら聞いてくるママン。


 「あいいー」にぱっと笑う俺。まさに平常運転である。


 周りの状況は気になるけれど、とりあえず腹ごしらえを優先する。


 辺りも薄明るくなっているし、喧騒も聞こえてこない。


 とりあえず魔物は撃退できたのだろう。


 「ちゅう、ちゅう、ちゅう」といつもより多めのもぐもぐタイム。


 「さっきは頑張ったもんねぇ~いっぱい食べてゆっくり眠りなさい。」


 優しく頭をなでられた。


 バレテーラー。気まずくて目を逸らす。


 相変わらず優しく頭をなでられる。


 やっぱママンにはかなわないや。


 「おいおうああー(ごちそうさまー)


 お腹がいっぱいになったので口を話す。


 ママンは身支度をして、俺を抱き上げ天幕の外につれだした。


 父さんとオットーを探して俺を連れて行く。


 父さんにガシガシ頭をなでられ「よくやった!」とニカッとサムズアップされた。


 『あんたはビ○―隊長かい!ビシッ』心の中で突っ込んでおく。


 周りを見回すと、姉兄たちはメリザに見守られて馬車の中で眠っているらしい。


 擦り傷程度は皆おっており、命に別状はないが結構ひどい怪我人が三人ほどいるらしい。


 太腿に食いつかれて肉を抉られたもの。


 肩口に爪をたてられ肉を抉られたもの。


 体当たりされた時に肋骨を何本か折られたもの。一応肋骨が内臓に刺さることはなくの整復は終わっているらしい。


 ママンに抱かれたまま様子を見に行く。


 そう言えば前世でかあさんが死にそうになり苦しんでいた時。


 自分が死んでもいいので生命力を与えられないか?


 苦しみを俺が代わりに引き受けられないか?


 癌が俺に移ってこないか?


 一日中腹式呼吸しながら祈ってたなぁ~


 こっちじゃぁー魔力があるからもしかして…


 太腿を怪我した人の側にハイハイして近づき、体に触りながら肉の抉れた部分に細胞と魔力を集めるイメージで傷を縫合し、治るように祈ってみる。


 大丈夫そうに感じたので、


 次は、肩口の傷の人を同じように触って治るように祈り、骨折の人は肋骨がカルシウムでコーティングされ繋がるイメージで祈ってみた。


 三人とも大丈夫そうなのでママンの側に行ってコテンと横になった。


 結構疲れたので寝ることにする。


 『ママンおやすみ』


 『前世で魔力が使えたらかあさんを助けられたのかな?』


 意識を手放す寸前に考えて、目頭から水が一粒零れ落ちた。


 『やっぱり人生はままならないよね』


読んでくださってありがとうございます。

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