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eスポーツって、どう思う?

作者: キラービー

 結論から述べると、私は「eスポーツ」という言葉が嫌いだ。


 「eスポーツ」という言葉を初めて見聞きする人が居るかもしれないので、念のため説明しておくと、「eスポーツ」とはエレクトロニック・スポーツの略称であって、コンピューターゲームをスポーツ競技と見なして捉える際の名称であり、近年作られた言葉である。


 皆さんもご存じの通り、「スポーツ」は競技である。もちろん、「スポーツ」はただ単に競技であるだけではなく、楽しみの為に行う遊戯でもあるし、健康の維持・促進の為に行う肉体鍛錬でもある。


 一方、「コンピューターゲーム」その中でも特にメジャーであるビデオゲーム(テレビゲームとも呼ぶが)は、楽しみの為に行う遊戯ではあるが、勝敗や明確なゴール(エンディングやゲームクリア)があるものは、ただ単に遊戯であるだけではなく、自分自身や他人と競うことのできる競技でもあるし、コンピューターゲームの種類によっては、反射神経や知能を鍛える知的鍛錬にもなる。


 そういう意味で、「スポーツ」と「コンピューターゲーム」は似ている点が多い。

 両者ともに、競技となり得るし、遊戯ともなり得る。


 だからこそ、「コンピューターゲーム」を、通信電子技術を利用するスポーツ、つまり「eスポーツ」と呼ぶ人々が現れたのであろう。




 それは、一理ある。




 だが、それが私は気に入らないのだ。


 では、なぜ気に入らないのか。なぜ「eスポーツ」という言葉が嫌いなのか。これについて意見を述べたいと思う。






 結論から述べると、「コンピューターゲーム」が、自らの出自を表す自らの名前を捨てて、「スポーツ」にすり寄っている点が、気に入らないのだ。

 「ゲーム」であるという自らの生まれを捨てて、「スポーツ」の仲間に鞍替えしている点が、許せないのだ。



 それは、まるで、「ゲーム」である事が誇らしくなく、否定すべき恥ずべき事であり、「いえいえ私はゲームではありません、スポーツですから世間の皆さまはスポーツとして扱ってください」と自らを卑下しているかのようで、悲しくも情けなく思えるのだ。



 これは私の考えすぎだろうか? 少なくとも私は、そうは思わない。



 かつて、ゲームは「役に立たないもの」であり「やると頭が馬鹿になるもの」であり「金と時間の無駄」だと大多数の人から思われていた。

 いや、今でもそう思っている人はいるだろう。


 「ゲーム脳」なる単語を、皆さんはご存じだろうか。パズルゲーム等のある特定のジャンルのゲームに熱中している間の脳波の波形が、特殊なパターンを示す事から、ゲームをすると脳の働きが鈍る、これは「ゲーム脳」という悪い状態だ、とイチャモンを付けた人が、かつて居たのだ。


 でも、ゲームに限らず、ある特定の状況において、全てのパターンに習熟し、試行錯誤する必要が無いほどベテランになり、無我無心で手足を動かす事ができるようになれば、脳の特定の部位だけが眠っている様に見えるのは、当たり前であろう。


 マラソン選手がゴールに向けてラストスパートを掛けている場合等と、全く同じ話だ。



 しかし、当時のゲームに無理解な人々は、ここぞとばかりゲームを叩いた。特に、ゲームに熱中する子供を上手くしつけられない親が、これに飛びついたのだ。


 ゲームをやり過ぎると馬鹿になるぞ、と。



 そりゃあ、何でもやり過ぎは良くない。当たり前の事だ。ゲームは1日1時間、と名人さまも仰ってます。

 運動も、食事も、睡眠も。

 勉強も、セックスも、仕事も。


 何事もやり過ぎは良くない。ただ、それだけだ。




 しかし、何ぶんにもゲームは昔からよく叩かれた。

 インベーダーブームの頃も、ゲーム賭博のせいで風営法がゲームセンターに適用された頃も、ドラクエの発売に学生がゲームソフトを万引きした時も、アメリカで銃乱射事件を起こした学生が暴力ゲームの愛好者であると判明した時も。


 ゲームそのものが叩かれた。まぁ、これはゲームに限らず、小説が初めて世に出た時も、マンガが初めて世に出た時も、映画が初めて世に出た時も、同じ様な事があった。

 新しいメディアが生まれた時には、多々ある事だ。


 まぁ、それはいい。まだ我慢できる。いつかは乗り越えられるし、乗り越えるべき事だ。



 我慢ならないのは、「ゲーム」と名乗る事を自ら止めて、「スポーツ」だと言い張る事。

 これが私は、我慢ならない。



 そんなに、「ゲーム」だと名乗ることが、嫌なのか。

 そんなに、「スポーツ」づらして、世間に媚びたいのか。

 そんなに、「オリンピック」の競技に採用されて、金儲けがしたいのか。


 恥を知れ、と言いたい。




 でもまぁ、まぁここまでは、我慢できる。我慢したくないが、我慢しよう。お金と、パブリックイメージは大切だ。

 ゲーム業界も、プロゲーマーも、霞を食って生きていく訳にもいかないし。






 私が、一番嫌なのは、私の大好きな「ゲーム」が、私の大嫌いな「スポーツ」に、仲間に入れさせてもらおうと媚びて無理をしている点。


 それが、一番気に喰わない。




 正直言って、私はインドア派だ。身体を動かすことは苦手だ。幼い頃から、スポーツは苦手て、苦痛だった。


 バッターボックスに立てば、三振か、せいぜいピッチャーゴロ。

 スキーでは、カーブですぐ転ぶ。

 マラソンでは、「がんばれー、かんばれー!」と最後に皆からの視線と嘲笑を浴びる。


 スポーツは、私にとって、敵であった。


 

 そういう私にとって、ゲームは救世主だった。


 運動が苦手な私でも、ゲームではプロ野球選手や、プロスキーヤーや、F1レーサーに成れた。

 勇者に、冒険家に、探偵に、戦国武将になれた。


 私にとって、少なくとも幼い頃の私にとっては、スポーツは敵であり、ゲームは味方だった。




 その、大切な味方が、敵側に回るなんて!


 これは、重大な裏切りだ!

  



 無論、これは私怨であり、個人的な反感だ。

 それでも、私と同じような気持ちの人は、少しは居るかもしれない。


 少なくとも、「eスポーツ」と聞いて違和感を覚える人は、少なくはないはず。




 いやだって、どう見ても「コンピューターゲーム」は「スポーツ」じゃないじゃんか。


 そう思い、このエッセーを書いてみた。これでスッキリした。異論は認めます。




 ここまでご覧いただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言]  スポーツの語源って「気晴らし」なので、ゲームは充分スポーツなのでは。
[良い点] 以前読ませて頂いてランキングにあったので再読させて頂きました。 個人的にはオリンピックに採用されることが反対ですかね。 オリンピック自体にだいぶ疑問がある私ですが、特定のゲーム企業のプロ…
[良い点] ご自身がスポーツが嫌いでゲームは好きという思いからの エッセイで、そこから「みんなだってそうだろ?」の いわゆる主語を大きくすることがなかったのは好ましいです。 私は読書やゲームが好き…
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