犬
能力や魔法は説明がないと意味が分らないと思ったので
今回からたまにあとがきに人物紹介をいれていこうかと思います
月歌「国潰しだぁ?」
クレア「そう、国潰し。まずはこの国からかかるわ」
月歌「おいおい、いくら俺が『S』ランクの犯罪者でもその冗談はいただけねえぜ、俺は『国潰し』で『S』になったんじゃねぇ、『超一級大量殺人』で『S』になったんだ。『国潰し』なんかやったことないし、知識もねえ、専門外だぜ」
クレア「冗談じゃないし、あんたが大量殺人犯であることなんか百も承知よ。それは私達がやる。あなたにはサポートをお願いするわ」
月歌「サポート?」
クレア「えぇ、色んな所に奴隷に行った貴方にはこの国にいる善良な人も分かるでしょうし、生かしておきたい人もいるでしょうから…そんな人たちの避難や、勿論国潰しそのものの手伝いもお願いしたいわ」
月歌「そんなに派手にやるのか?」
クレア「えぇ、とびっきりド派手に…」
月歌「そうか…善良な人間…」
クレア「えぇ、私達は何もこの国の住人達を皆殺しにしたいわけじゃないし」
月歌「方法は?どうやってその計画を実行するんだ?」
クレア「それについてはモードに関わるから取り合えず後回し。
あ、理由についても後でまとめて話すから」
シホ「月歌、この国のどれくらいが善良な人間なんだ?」
月歌「情報屋でもない一介の囚人であるこの俺がこの国の住人一人一人の素性を全て知っているとでも?」
シホ「あぁ!いや、すまない」
月歌「フフフ、冗談だよ。大体分かる。初めての奴でも目を見りゃあなぁ、そうだなぁ、約6割…ってところかな」
クレア「そんなに少ないの…」
月歌「そうだな、この国のスラム街に住んでいるやつらはそのぐらいの割合だから、まず間違いないだろう。」
クレア「!」
シホ「…そんなにこの国の『核』には希望がないのか?」
月歌「そうさ。やつら『信用する』っていう言葉をしらねぇとみえる。………今回もほら」
月歌はおもむろに、近くにあった銀杏を右手で掴むと、それを凄まじいスピードで左の壁に投げ付けた。
"ボゴォン!"
壁に穴が開く。刺さった銀杏を中心に壁に亀裂が入っていた。
銀杏のすぐそばには藍色のローブを纏い、杖を持ち、白髭を
こんもりとたくわえたいかにも魔法使い、といわんばかりの男がいた。
月歌「な?」
魔法使い風の男「な…!」
クレア「…」
シホ「やっぱなんかいたか…」
月歌「人を信用できないようなやつにろくなやつはいねぇよ、こんな見張りまでつけていやがる」
シホ「地下闘技場からの刺客か?」
月歌「たぶんな、俺が帰って来ないとあそこのスター選手がいなくなる。それだと奴隷の売り上げが落ちる。主催者側がそれを恐れて追手を放ったんだろう」
月歌は追手の方へと向き直す。
月歌「道理で一人も殺したことがないのに『主人殺し』と言われ始めたんだな。納得だぜ」
クレア「主人を殺したことがないのか?」
月歌「厳密にいえば『主人になる前』に殺したことはあるがなあれはノーカンだな」
シホ「…ところでさっきから無視してるけど、この男あたしたちを『始末しに』来た『殺し屋』なんだよね、この状況、まずくない?」
シホがそう言った瞬間飛んで来る火の玉。それを紙一重で避けるシホ。
魔法使い「その子の言う通りだ。あまり私を待たせないでほしいね」
魔法使い「【焔咲き】(ほむらさき)」
杖の先から炎の塊がシホに向けてとんでくる。
シホ「【スティール・スター】」
炎の塊を打ち払う。
クレア「家の中を燃やさないでよ?」
シホ「分かってる!」
シホ「【DO!】」
魔法使い「【風塵の壁】(ふうじんのへき)」
"………"
スティール・スターの拳は魔法使いの目の前で音をたてずぴたりと止まる。
シホ「風のガードか」
魔法使い「【炎円】(えんえん)」
複数の炎の球が渦を巻く様にしてとんでくる。
シホ「邪魔くさい!」
シホ「【DO】【DO】【DO】」
シホ「チッ!数が多い!クレア!」
クレア「分かってるわよ!」
クレア「【AIR】(エアー)」
月歌「!?」
今まで激しく燃えていた炎がクレアを中心に消えていく。
落ちた燃えカスは畳の上に落ちるが、一切燃え移らない。
クレアが何かしたのは明白だが、一見座っているようにしか見えない。
クレアが立ち上がる。
クレア「【空銃】(エアガン)」
"パァン!""パァン!"
魔法使い「うぐっ!」
魔法使いの胸に一瞬穴があき、すぐに肉と血によって赤く塞がる。
魔法使い「…まさか風塵の壁が突き破られるとはな」
魔法使い「【回復】(ヒール)」
魔法使いの傷口が見る見る塞がっていく。
月歌「『基本の5指様』…典型的な魔法系」
『基本の5指様』とは魔法系における属性の中で『火』『水』
『木』『土』『風』のことである。ここに軽い『回復の魔法』
を加えたものはどの魔法使いにも使えるということで
『基本の六魔』とよぶ。
月歌「俺を倒したような奴を相手取っているのに
『基本の六魔』を使用するとは、俺らをなめているのか、
それともこの程度なのか…」
魔法使い「《木》【草結び】」
月歌「!?」
月歌の足に畳から伸びた草が絡み付く。
月歌「ほう?」
魔法使い「ないとは思うが逃げられても困るのでな」
月歌「だからこのような草でしばったと?」
魔法使い「その通りだ。待ってろ俺はプロだ。すぐにおわる」
魔法使い「《水》【水泡山】(すいほうざん)」
何処からとも無く泡が現れだし、クレアとシホを取り囲む。
シホ「【スティール・スター】」
クレア「【AIR】(エアー)」
"バキバキィ"
クレア「固い…」
シホ「邪魔な…!」
その時一つの水泡が割れる。
水泡が割れるとどうなるだろうか、当然水飛沫が飛び散るはずだが、問題なのはその固さである。クレアが述べたように、この水泡はとても固く出来ていた。その状態で水泡が割れ、水飛沫が飛び散るとどうなるだろうか?
木の破片が飛び散るイメージをしてほしい。
クレア「痛っ!」
シホ「!大丈夫か?」
魔法使い「はっはっはっは!どうだ!この『正義』の魔法は痛かろう?辛かろう?」
月歌「『正義』ねぇ…」
魔法使い「そうとも!考えてもみろ、この国の王は『礼儀正しく正義感が強い王』で通っている。ということは彼のやることはこの国では絶対。『正義』なんだ。ならば俺のこの作業は彼の意思。則ち『正義』とよぶべきだろう!」
月歌「それに刃向かう俺らは『悪』と」
魔法使い「その通りだ!だがお前は運がいい。再び国王の元で飼ってもらえる。再び『正義』となれる。普通はこんな事は有り得ない!お前は本当に運がいい!」
月歌「ククククククク、滑稽だな犬畜生めが…」
魔法使い「何?」
月歌「滑稽だ、といったんだ。偉そうに踏ん反り返りやがって、
所詮貴様等は犬、お前に至っては犬の末端の末端そのカスみてえな奴じゃねえか。」
魔法使い「なんだと!貴様、もう一度言ってみろ!」
月歌「お望みとあらば何度でも言ってやるぞ。お前等は犬だ。肥えた犬。貧民という骨から、旨味を吸い取り付くし、それでも満足できず、遂にはない旨味を探し出そうとし、今だに噛みつづけ、かみ砕こうとしている犬。己が繋いだリードで逃げ出せなくなっている、哀れなアホ犬だ。」
魔法使い「ふざけるな、私が犬だと?冗談も休み休み言え、私は人間だ。正義だ。犬なんて言う下等生物と一緒にするな!
狂犬め!貴様こそ今俺の魔法によって檻に繋げられている狂犬ではないか!」
月歌「檻とは…なんのことだ?まさかこれとは言わないよな?」
"ブチブチィ!"
魔法使い「な、何!?私の魔法が破られただと!?」
月歌「ククク、さぁ、どうする?貴様の言う『狂犬』が『檻』から放たれたぞ。そのままでは殺されてしまうぞ?さぁ、どうする?」
魔法使い「ぐっ!」
魔法使いが後ずさる。
"ミシリ"
少しほつれている畳が音を立てた。
[人物紹介]
名前:留目詩穂〔16〕
性別:女
使用技能【スティール・スター】(静止星)
モード…『能力』
身長:154㎝
体重:"ピーーーー"キログラム
頭髪:明るい赤・短め
趣味:ボードゲーム、頭を使うパズル
嫌いな物:ヌメッとしているもの
能力の詳細:人型をしており、強力なパワーと精巧な動きが出来ることが特徴。攻撃範囲は使用者の腕二本分。対象者に『カウンター』を取り付けることができる。カウンターを取り付けられた者は十秒間の間『バランス』と『タイミング』を奪われる。
備考:『陽国』出身。『α軍』の一員。身長が低いことを気にしている。4才の頃まで陽国の孤児院ですごしており、そこから
陽国の国王に引き取られたことで大恩を感じている。