銀杏
運良く時間がなぜかあいたので投稿します
かといって次の投稿が早いのか、と言えばそうでもないあたり、
作者の無計画性が明らかになってお恥ずかしい限りです
月歌は訳が分らなかった。当たり前である。至極当たり前。
『理由』を聞いたはずなのに帰ってきたのは『目的』だ。
月歌「おいおい、答えになってねえぜ、俺が聞きてーのはたった三日ほど寝込んだだけで何故知らねえやつの家にお世話になっているのかってことだ」
月歌「(まぁ、さっきの答えも気にはなるのだが・・・)」
『勇者』とはなんなのか、聞きなれない言葉を聞き、興味を少々ひかれる月歌。
クレア「知らないやつでもないでしょ、今更他人面もどうかと思うわよ?」
月歌「なんだ?どこかで会っt」
?「なんだ、起きたのか・・・?」
月歌「ん・・・?」
先程の少女が起きていた。
クレア「こら、『シホ』、淑女としてあるまじき態度ですよ、せめて髪を直してから人には顔を見せなさい」
少女「べつにいい、そんなの気にしてない」
クレア「もー!」
月歌「『シホ』・・・?」
少女「ん、ああ、自己紹介してなかったっけ?」
少女は猫のような顔で笑い、告げた。
少女「私の名前は『留目シホ(とまりめしほ)』『シホ』でいいよ?」
月歌「了解した。じゃあシホ、一つ聞きたいんだが、」
シホ「何?」
月歌「何故おれはここにいる?さっきクレアには聞いたんだがいまいち要領を得なかったんだ」
シホ「クレア、あんたどんな説明したの?」
クレア「勇者になるからって言ったけど?」
シホは顔に手をあて、溜め息をはいた。
シホ「あんた阿保なのか?そんなので理解できる訳無いだろう」
シホは月歌の方にむきなおした。
シホ「あんたがここにいる理由は簡単、私達に負けたからだ」
月歌「負けた?俺が、お前等に…?」
心当たりは一つしかないが。
シホ「お?何だ?思い出せないのか?」
シホは不思議そうな顔をしていた。が、すぐに何か思い付いたような顔になり
シホ「ちょっと待ってて」
というと、別の部屋に引っ込んで行った。
月歌「クレア」
クレア「何かしら」
月歌「何してるんだ、お前?」
クレアは壁際で逆立ちをしていた。プルプル震える腕がキツさをうったえていた。
クレア「美容体操よ。乙女には必須のスキルね」
…正直あまり効果がないように思える。
シホ「お待たせ」
シホの声がして振り返る月歌。
そこにいたのは
月歌「!?」
あの闘技場で戦った者達のうちの一人だった。
あの時は厚手のローブを頭から被っており、すぐには気付けなかったのだ。
月歌「やっぱりお前、あの時の奴、というかお前女だったのか…」
シホ「言うに事欠いてそれか、おい」
月歌「ってことはこいつも…」
クレア「はぁーい♪大正解!!」
そこにはやはりもうひとりが立っていた。
月歌「ってことはなにか?俺はよりにもよって女に負けたのか?」
クレア「そういうことね、でも女だから弱いって偏見よ?それ」
そういうと二人はまたローブを脱ぎ、元の恰好へと戻る。
シホ「というわけであなたはあの時負けた。だからここにいるのよ」
月歌「成程ね、『俺が地下闘技場にいない理由』は分かった。
だが、『何故俺がここにいるのか』はまだ納得がいかねえ。言い換えれば、『何故お前等が俺を買ったのか』が気になって仕方がねえボディーガードを雇いたいんなら俺では無くても色々いたはずだ。何故俺なんだ」
シホ「何故あんたなのかってのは簡単な話。あんたが強かったからだ。ここ数日あそこに忍び込んではあんたの試合を見ていたけど、実に見事だった。正直今回も勝てるかどうかはとても不安だったよ。それと、『なぜあんたを買ったか』だったね。それについてはまだ秘密」
月歌「は?」
クレア「私達にはやりたいことがあるの。それをあなたに手伝ってほしいんだけど、何しろ内容が内容だからまだ言いたくないのよ。だから秘密」
月歌「あぁ、そういうことか…まぁそういうことなら深くは追究しねえが、あと一つ質問してもいいか?」
シホ「何?」
月歌「この部屋なんでこんなに臭いんだ?」
シホ「あー、それあたしも思ったー!!クレア何かしてんのー!?」
クレア「いっけない、銀杏チンしてたんだった。持って来ないと!」
そういうと、クレアは出て来たドアを開け、また奥へと引っ込んで行ってしまった。
月歌「ギンナン?」
シホ「銀杏だよ。イチョウの実で、臭いけど美味しいんだ」
月歌「イチョウの実?あれ食べれたのか…」
シホ「あれ?結構常識じゃない?」
月歌「幼い頃から刑務所暮らしだったからな…」
シホ「あっちゃー何か悪いこと聞いちゃった?」
月歌「別に構わん、俺にとってこれは名誉なことだと思っているからな」
シホ「そう…」
静まる空気。そのまま5分ほど過ぎる。
不意に月歌が口を開いた。
月歌「お前の能力…」
クレア「お待たせー!!」
"バン!"
勢いよくドアを開けて入ってくるクレア
月歌「(タイミングが悪いな・・・)」
月歌「チッ!」
クレア「ええええええ!!なにゆえ舌打ちぃ!?」
シホ「タイミングがわるいのよ、あんた」
クレア「あうぅ…ごめんなさ~い」
怒られて少ししずんだクレアだったが、すぐに気を戻した。
クレア「そうだ!銀杏持ってきたんだった!」
そう言ってクレアが取り出したのは茶色の封筒だった。
月歌「なんだこれ?」
クレア「銀杏よこれにつけて食べるの私の好物なのよ」
渡されたのは塩。
月歌「へんなものが好きなんだな」
クレア「変?そうかしら?」
月歌「あぁ」
シホ「クレアはへんなもの好きだからね」
クレア「失礼ね!スライムと虫が好きで何がわるいのよ!」
月歌「確かに変だな…」
クレア「もー!あなたまでー!!」
一時の間穏やかな時が流れて行った。
月歌「改めて自己紹介しよう。『虹城月歌』だ、歳は17。
犯罪者ランク『S』で地下闘技場の『元』王者だ」
犯罪者ランクとはその名の通り、犯罪者のランクを
表す数値で、S・A・B・C・D・Eの順に高い。
ランク『E・D・C』に関してはただの万引きや引ったくり、痴漢など、被害者には悪いがしょうもない犯罪者に付けられる。
ランク『B』は人殺しやテロなど、人命や政治に関わる犯罪をおかした犯罪者に付けられる。
ランク『A』は宗教的犯罪、強姦、詐欺、などの人の心や人生に大きな傷を残す犯罪、その中でも更に悪質な犯罪者に付けられる。
そしてランク『S』は超大量殺人、歴史的建造物の破壊、
国潰し、戦犯など、国際単位で、多大なる損害を与えた犯罪者に付けられる。
その中で月歌はランクSを付けられている。
月歌にSが付いたのは5歳の時、警察、一般市民を合わせ
約一億人、目につく人間を片っ端から殺して行き、
『超大量殺人犯』としてSを付けられた。
クレア「『能力』もしくは『魔法』は…?」
月歌「俺はまだお前等を信用している訳じゃねぇ、負けた者の最低限の礼儀として多少の自己紹介ぐらいはしたが、
自分の『モード』を明かさないようなようなやつに教えることは何もねぇ」
『モード』とは己の力のタイプを指し示す言葉だ。
要するに、『能力』『魔法』『体術』のいずれを戦いの際に用いるか、そういうことである。
シホ「それは困ったな…あんたの『モード』を知らないと…」
月歌「俺は『あんた』じゃねぇぜ?さっき自己紹介したろ?」
シホ「失礼。月歌のモードを知らないと私達の計画、作戦が練れないんだ」
月歌「そんな事俺が知るか、あんた等がそれぞれのモードを俺に教えてくれりゃあいい。そしたら俺も教えてやるし、計画とやらも順調に進むってわけだ。簡単な話だろう?」
クレア「…シホ」
シホ「………」
普通、強者に生まれたものは自分のモードはおろか、強者であるかどうかも他人には教えない。何故ならそうすることで、相手も迂闊な一手を出さなくなる、尚且つ、自分を知られるということは己の弱点を知られるということ。誰が好き好んで、自分の弱点を曝すだろうか、強者なら尚更だ。
月歌「これでこそ平等というものだろう」
シホ「…違うな」
クレア「…シホ?」
月歌「何?何が違うというのだ?」
シホ「月歌が知ることが出来るのは月歌とクレアの能力の計二つ。言うならば月歌は二つも有益があるんだ」
月歌「それがどうした?たしかに俺には二つも有益な情報がはいってくるかもしれない。しかし、あんたらは二人。有益な情報を二人が得たから、情報1のかける2でほら、平等じゃないか。」
シホ「違うな。むしろ薄まるんだ。」
月歌「薄まる?」
シホ「そうさ。薄まる。1割る2で二分の一が正解。つまり月歌には1と二分の一の分の条件を聞いてもらわなければ割に合わないという計算になる」
月歌「おいおいなんだそりゃ。そんな自分勝手な計算があるかよ。」
シホ「お互い様だ。双方が平等を目指した際に起きるいざこざは解決のしようがない。それこそどちらかが折れない限りな」
月歌「俺に折れろ、と、そういいたいのか」
シホ「その通りだ。月歌に折れてもらわなきゃ何も始まらないんでね。」
月歌「そこで俺がその条件をのむメリットは何だ?」
シホ「勿論私達の能力を知れるとこよ」
月歌「そんなもの、大体の見当はついている。それじゃあ俺にとってメリットにはならない」
シホ「では、楽しい冒険付きならどうだ?」
月歌「冒険?」
シホ「そうだ。冒険だ。もともと我々がこの王都に来たのは観光目的などではない。もっとでかいことをしにきた」
月歌「ほう…。でかいこと、と…」
シホ「そう、でかいこと。そのためには月歌が必要だし、月歌が邪魔だったんだ。」
月歌「?邪魔だったのに必要なのか?」
シホ「そう、おかしな話しでしょ?」
月歌「まぁ、そりゃおかしい話だが、で?そのおかしさが冒険にどう繋がるんだ?」
シホ「この王都にきた目的を『第一フェイズ』とよぶなら、その第一フェイズの後にもうひとつでかい目的がある。その目的を『第二フェイズ』と呼ぶなら、その第二フェイズの鍵が
『冒険』と『月歌』のふたつなんだ」
月歌「俺?どういうことだ。どうしてその第二フェイズとやらの鍵が俺になるんだ?」
シホ「悪いけど、月歌が協力してくれない事には第二フェイズについて話すことは出来ない。」
月歌「…」
シホ「しかしお願いだ。確かに不釣り合いな条件ではあるかもしれない、だが、我々にも事情があるのだ。約束はちゃんと守る。冒険には行けるし、能力も正しく伝えよう。
頼む!我等に力を貸してくれ!」
月歌「………」
シホ「頼む!月歌!」
月歌「その冒険に『飯』と『スリル』はちゃんとあるんだろうな?」
シホ「あ、あぁ。それは私が保証しよう。」
月歌「ハァ…、モードはお前等から先に言えよ?」
シホ「!…と言うことは」
月歌「あぁ、」
シホ「あぁ!分かっている!有難う、月k」
"ゴボボボボボボ!ジャーー!!"
クレア「あー!すっきりした!」
シホ「いないと思ったらトイレに行ってたのか…」
月歌「(ホントにタイミングわりいな)」
クレア「交渉終わったー?」
シホ「あぁ、来てくれるそうだ」
月歌「交渉の時ぐらいその場にいろよ。」
クレア「だぁってー、私口下手だから絶対交渉決裂して喧嘩沙汰に成るしー!いないほうがいいかなぁって思ったからー!」
月歌「ったく」
クレア「あー、でもどうせもうすぐここもなくなっちゃうし、それでもよかったかもなー」
月歌「ん?取り壊し予定でもあるのか?ここ」
クレア「あれ?もしかしてシホまだ第一フェイズについて話してないの?」
シホ「あぁ、仲間になったら話すということだったし、俺らのモードについても話してなかったしな」
月歌「そういえば結局第一フェイズとは何のことだ?」
シホ「第一フェイズ、それは…」
クレア「国潰しよ」
クレアが先程までとはうって代わって真面目な顔をしていた。
思いつきで書いている分、伏線もはれないし、
話の展開や、人物のキャラ設定、会話等の不自然さが目立っています。
今、書きだめのほうでは23話まで行っているのですが、今回の部分を読み直し、「ここをこうすればよかった」だの「ここは読んでて恥ずかしい」だの
PCの前で悶えています。(いつかそんなことがなくなるくらい文章力をつけたいです)