リフェン
~in【『日出国・陽国』『王宮』『王室』】~
陽国は平和なことで有名な国である。
その国では魚達が舞い踊り、動物が食物連鎖の関係を受けず戯れ、人々の笑顔がたえない。
正に『楽園』である。
と、いう評判が出回っている。
噂が本当なのかどうかはともかく、そんな噂が出回ること自体でこの国の平和さがわかるようなものである。
が、しかし、今日に限ってこの国にはピリピリとした空気が充満していた。水面からは魚が見えず動物達は住家へと帰り、町は軒並み何かから身を守るかのようにシャッターを閉じている。
そんな異様。
その原因は王室にあった。
フェアリー「…んで?」
フェアリーの護衛についていたAとBは身を一瞬震わせた。
A「(この人達が言葉を発する度に空気が重くなって行くような錯覚がするっ…!)」
B「(何と言う重い空気だっ…!)」
AとBは任務とは言え、逃げ出したい気分だった。
気持ちの震え、怯えにそのまま任せ、膝をつき、己の身を抱き、まるで胎児のような姿でガタガタと震え出したい、そんな気分だった。
それは恐らくあの二人も同じだろう…と奥に控える二人を見やるAとB。
今日フェアリーを訪ねてきた客人、その護衛についている二人のことである。
フェアリー「『日没国・陰国』の国王が何のようですか…?」
フェアリーが頬杖をつく長机、銀製の食器やグラスに入った料理やワインの向かい側、そこには陰国の王が座っている。
フェアリー「こんな暑い日にわざわざそんな黒いマントを羽織り、鎧を着込んで、仮面まで…なんの用事ですか?まさかこの私の首でも取りに来ましたか?」
首をトントン、と叩きながら聞くフェアリー。
目は笑っていない。
フェアリー「応えなさい、『リフェン』…」
リフェン「…『日の光の降り注ぐ祝福の国』と名高い陽国、その国の王に久し振りに会いにきた・・・ただそれだけだ」
刹那。
"ダァンッ!!!!!!!!!!!!!!"
フェアリー「とぼけるなっ!!!!!!!!!!」
フェアリーの僅かに浮いた手が机を強打する。
???「っ!!」
"ギィンッ"
次の一瞬、フェアリーに攻撃を仕掛けたリフェンの護衛達。
その刀がAとBの刀に止められる。
リフェン「『キング』、『クイーン』下がれ」
キングと呼び掛けられた男が戸惑いの表情を浮かべる。
キング「し、しかし…」
リフェン「私の命令が聞けないのか?」
クイーン「!失礼しました!」
すぐに元の位置にもどる『キング』と『クイーン』
同時にAとBも元の位置へと帰る。
フェアリー「…本当の用事は何ですか?さっさと応えなさい」
リフェン「『メギラ』『シュミール』『ペンゲア』の滅亡について聞きたいことがあってね、ついてはその…」
リフェンはまるで邪魔だ、といわんばかりにAとBをみた。
フェアリー「A、B、席を外してください」
A・B「はっ」
フェアリーの後ろにある扉から出て行く二人。
リフェン「キング、クイーン、お前等もだ」
キング「っえ」
クイーン「了解しました。行くぞ、キング」
キング「ちょ、ちょっと待ってください!国王様!」
リフェン「…何だ」
キング「危険です!フェアリーは」
リフェン「『フェアリー様』」
キング「失礼、フェアリー様は先程、八つ当たりを机にされました。・・・そんな狂暴性、野蛮性が彼女には存在するのです!」
フェアリー「…」
リフェン「…キング、口が過ぎるぞ」
キング「いいえ!そんなことはありません!国王様を守るのが今の我々の仕事です!それなのに二人っきりなどと…いけません!私はそんなこと許可出来ませんっ!」
リフェン「何故俺がお前如きに許可を貰わなければならんのだ」
キング「それは我々が…」
"ガンッ"
キング「ッ!」
"ドサッ"
クイーンの手刀を首に受け、倒れたキングをかつぐと、クイーンはリフェンにむかって頭を下げた。
クイーン「失礼します。国王様」
リフェン「あぁ」
そしてフェアリーの方を向くと、また頭を下げた。
クイーン「キングの無礼な発言の数々、大変失礼致しました。」
フェアリー「…AとBから客間の場所をきき、そこで待っててください、…部屋は好きに使っても構いません」
クイーン「ありがとうございます、それでは…」
"ギィー…バタン"
扉の閉まる音を背中に受け、フェアリーはため息を吐いた。
リフェン「…」
"カタッ"
フェアリー「!」
"カツ…カツ…"
突然リフェンが立ち上がり、ゆっくりとフェアリーの方へと歩いていく。
"カツ、カツ、カツカツカツカツカツッ!"
段々とその速度を増していくリフェンに思わずフェアリーは身構えた。
そして
"ガバッ"
勢いよくフェアリーに抱き着くリフェン。
リフェン「お久しぶりですっ!!おねぇ様っ!」
フェアリー「フゥー…」
フェアリー「(まったく、この『妹』は…)」
呆れながらもリフェンの頭を撫でるフェアリー
リフェン「おねぇ様が本当に怒っていらっしゃるのかと思って、私、私…」
フェアリー「あー、はいはい、悪かったよ」
陽国の王、フェアリーと陰国の王、リフェンは実の姉と妹という関係である。が、その立場上中々会えないため、よくリフェンはこうしたときに甘える、という行動をとる。
リフェン「♪」
フェアリー「…それで?別にわざわざ『これ』だけの為に来たわけじゃないでしょ?何の用よ」
リフェン「…さっきいったことに偽りはありませんわ。四大国の内、三つも潰れた。これはおねぇ様が関わっているのではありませんの?」
フェアリー「…何故そう思ったの?」
リフェン「この『人間界』において四大国を潰す『動機』、そして『力』を兼ね備えているのは私とおねぇ様ぐらいなものですわ、私じゃないならおねぇ様。簡単な理屈ですわ」
フェアリー「…『α軍』」
リフェン「…おねぇ様の所有する、人間界最強最大の暗殺部隊ですわ」
フェアリー「『K』にシュミールを、『D』と『X』にペンゲアを、『S』と『V』にメギラを潰させた」
リフェン「認めるのですね?」
フェアリー「うん、…私を攻める?」
リフェン「とんでもありませんわっ!」
リフェンはかぶりをふった。
リフェン「ただ…何故今更なのかと、…そう思ったのですわ」
フェアリー「…」
リフェン「『私達の国』、そして『彼等』を救い出すのは既に不可能、諦めるが最善の選択。それなのに、どうして…」
フェアリー「…・・・『七人目』が見つかったのよ」
リフェン「!…それって」
"コンコン"
リフェン・フェアリー「!」
扉の叩かれる音を聞いたリフェンは、急いでフェアリーから離れ、自分の席についた。
フェアリー「どうぞ」
"バタァッ…ンッ!"
扉がひらいた。