プロローグ
第壱話などを本当に1つとして、更新していきます。そのため多少編集します。
ただただ、つまらなかった。
別に、フィクションの中のような現実離れしたシチュエーションに遭遇したいわけではない。怪我だってできればしたくないし、もちろん死にたいわけでもない。
ただそれでも、特別生きたいとも思わなかった。
なんのために生きているのだろう?この自問自答に解答がないことくらい理解しているが、それでも考えざるをえない。
「なんのために?そうねぇ……やりたいことがあるからじゃない?だって死んじゃったら、やりたいことも出来ないじゃない?美味しいもの食べるとか、めいいっぱい遊ぶとか、……幸せな家庭を築くとか……」
彼女、天河 遙音はそう言った。ただ、何故最後に言いよどんでいたのか、刻城 悠太には分からなかった。
「生きる理由?……私にはやらなきゃいけないことがある。少なくとも、それを終えるまでは私は死ねない」
彼女、五十嵐 玲はそう答えた。
願望と義務。形は違えど、なんらかの意義を2人は見出していた。自分が今生きていることに、疑問を持ってはいなかった。
「……俺は何で生きているのだろうな」
したいことがあるわけではないし、しなきゃいけないことがあるわけでもない。自分の人生に俺は、価値を見出せてはいなかった。
けれど、今は……。
「悠太〜〜!帰るわよ〜〜!」
「なにぼぉっとしてるの?さっさと来なさい」
「……あぁ」
この何の面白みのない日常も、割りかしいいものなのかもしれない。この2人を含めた日常は掛け替えのないもの、そう思える。
確かにつまらない、退屈、ありきたりだと。けど、そんな毎日が一番幸せなものなのかもしれない。こいつらを見ていると、そんな風に思う。
「悠太ぁ?夕飯何食べたい?」
「食えるものならなんでも」
「…そういうのが一番困るんだって。玲は?」
「そうね……遙音のならなんでもいいのだけれど、強いて言えば和食かしら?」
「オーケー。じゃあ定番に焼き魚に味噌汁とかでいい?悠太」
「俺は構わん。食えるなら」
「…あんたはもうちょい欲を出しなさい。つまらないわね」
「俺に面白さを求められても困る」
「悠太に何を言っても無駄よ?」
「まあ、それは分かってるけどねぇ」
時間を有効に使っているか?
おそらくその質問の答えになるとしたら、今の状況はNOだろう。
けど、こういう無駄な時間が何よりも幸せに感じるのだ。
こういうなんとも息苦しいこの世界では。
次回からですが。