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  作者: zaku
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レストラン

 レストランのオーナーは、カズの来店に少し驚いたようだったが、やはり音楽で繋がっていた人間同士、時間を埋めるのは思いのほか簡単だった。

 彼とはライブハウスで何度か一緒になったが、当時はパンクロックのギタリストで、髪を染め、年中皮ジャンを着ているような少しヤンチャな男だった。今でこそ髪を染める若者は多くいるが、昔は、特に田舎ではいわゆるヤンキーとロック少年くらいしかいなかっただろう。

 そんな男が上品に口ひげをたくわえ、いかにもといった風貌で迎えてくれたことに、人間変われば変わるものだとカズはなんだか可笑しくなった。

 レストランは、カズが通っている居酒屋とは正反対ともいえるお洒落な雰囲気の洋食店だ。カズにとっては、こんなきっかけでもなければ、まず扉を開けるような店ではないだろう。

 席に案内されて店を見渡すと、壁には少し傷の入った古いギブソンのレスポールが飾られていた。彼が当時愛用していたギターだ。 

 そしてBGMには、この店の雰囲気には似合わないようなパンクロック。彼のこだわりなのだろう。バンドを辞めても好きな音楽とかかわっていける、そんな彼をカズは羨ましく思った。


 カズはメニューを開いて、なんとなくカクテルのページを見ていた。

 こないだ美和が飲んでいたのは…

 急にカズは村上と恵理に隠し事をしているような妙な罪悪感を覚えて、慌ててメニューを閉じた。

 もちろん、村上と恵理はそんなカズの様子に気付くはずもなかった。

 カズは、楽しそうに会話を交わす二人を見て、高校のときに四人で遊んだ日のことをなんとなく思い出していた。

 あのときは、ここに美和もいたんだ。


 しばらくすると、見た目も上品な料理が順に運ばれてきた。

 普段口にすることはないような料理を味わいながら、久しぶりに三人で楽しい時間を過ごすことができた。軽い同窓会といった感じだ。ただ、車で来ていたため、ビールが飲めなかったことだけが残念だったが。

 食事の途中で何度か美和の話をしようかと思ったが、カズは、どうしてもこないだの村上の態度や表情が気にかかり、話を切り出すことができなかった。

 もちろん、村上か恵理のどちらかが美和の話題を出せば、それに乗じる心の準備はしていたのだが、結局、カズの希望がかなうことはなかった。



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