コンビニ
土曜日。とうとうこの日が来た。
美和と会う日だ。
十五年前、高校を卒業して以来一度も会っていない。空白は埋まるのだろうか。不安と期待が入り混じる。
会う時間や待ち合わせの場所など、具体的なことは何も決めていない。
いつ連絡があってもいいよう、早目に着替えて準備をして待つ。
なんだか落ち着かない。
古いCDを聴きながら、はやる気持ちを抑える。
だが、午後になっても美和からの連絡はない。
こっちからかけてみる。
「おかけになった電話は、電源が入っていないか、電波の届かない…」
もう一度かけてみた。
繋がらない。
急用が入ったのか。
それとも忘れているのか。
何度も時計を見る。
もう夕方になる。
何かあったのか。
妙な胸騒ぎがする。
静寂の中でふいに携帯が鳴った。
カズは驚いて体をビクつかせた。
美和だ。
一度大きく息を吐いて、落ち着いたフリをして電話に出る。
「もしもし」
「もしもし。カズ?ごめんね。ビックリした?」
「いや…」
「今駅前のコンビニにいるんだけど、今から来れる?」
「わかった。すぐ行くよ」
「じゃあ待ってるね」
一方的に電話は切れた。
世界は美和を中心に回っているのか。
しかしカズは、なんとなくそれが心地よかった。
いつの間にか外は雨が降っていた。
カズはジーンズの裾が濡れるのを少し気にしながら、駅前のコンビニに急いだ。
せめて服の色とか髪型とか、美和の目印になるような特徴を聞いておけばよかった。
急に降り出した雨のせいか、駅前のコンビニは思いのほか混んでいる。おそらく雨やどりやビニール傘を買いに入った客が多いのだろう。
ここで十五年ぶりに会う女性をうまく見つけることができるだろうか。
コンビニの外から店の中を眺めていると、携帯が鳴った。
「カズ、こっちだよ」
「え?」
「ここだよ」
「どこだよ?」
電話が切れた。
まったく何やってんだよ。
カズが電話をかけなおそうとしたそのとき「わっ!」と突然後ろから声がした。
驚いて振り返ると、ブルーのワンピースを着た女性が立っていた。手には少し型の古い淡いピンクの携帯電話。カズと同い歳というより、少し若く見える。
「ビックリした?」
美和か?
「久しぶり」
美和は笑った。




