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都内のとある小学校にて。


1人のベテラン教師が熱心に教鞭を執っていた。


ベテランと言っても、彼はまだ35。

21からこの仕事を始めたのでまあ、それなりに慣れてきているためベテランと称した。


だが、相手はまだ小学生。

教師の話など真面目に聞く訳が無かった。



1人の活発な雰囲気を漂わせる少女がわざわざ起立して発言した。


「突然ですけど、先生が先生になろうと思った瞬間ってのはいつだったんですか?」


生徒達は一気にざわつき始めた。



「おいおい、森下。今は国語の授業だぞ」

「ですから、面白い話し方ってのを教えてほしいんです」


森下と呼ばれた女生徒は現在勉強している『走れメロス』をそっちのけで別のページに乗っている『語るとは何か』のページを開いて教師へと見せる。

教師は困惑したような表情をしばらく浮かべていたが、やがて観念したかのように苦々しく笑った。



「分かった分かった。森下、お前には負けたよ」


その一言で生徒達は更に騒ぎ始めた。



教師は「静かにー」と一声叫び、生徒達を黙らせた。


「じゃあ、話す前に言っておくが実は先生は昔ヤンキーだったんだよ。・・・信じられないって顔してるな。

あれは、中3の夏に入る前だったかな・・・」




教師・・・村田むらた智樹ともきは淡々と自らの体験談を語り始めた。










「・・・ふー」


智樹は廃病院の元はナース・ステーションだった場所に置いてある椅子に座り、一息ついていた。

行儀悪く両足をデスクの上に乗せており、口には煙草が。

髪をツンツンに逆立て、実は胸ポケットにジャックナイフを忍ばせている。


典型的な不良のスタイルである。



もちろん、格好に負けない程の悪事を智樹は行っていた。


喧嘩に万引き、煙草、最近はシンナーにまで手を出している。




だが、彼にとっての悪事はいわば暇つぶしのような物であって、本心からの行動ではない。


何となく面白そうだから。



そう思って始めた煙草をきっかけに、調子に乗っていると不良の先輩方に目をつけられ、そのままズルズルと色々なものを引き連れ、こんな風になってしまった。



両親も至って普通の人格の持ち主であり、どこをどう間違えればこうなってしまうのか。


周囲の人々も常々不思議がっていた。





そして、短い小休止は終わりを告げた。



智樹と似たような感じの雰囲気を漂わせる少年が3人、ナースステーションの扉を開けて中へと入ってきた。



「あっ、見つけたぞ四中の村田!」


智樹の姿を見つけると、3人は智樹を取り囲むように円を作った。


そして、その後の言葉を続けようとした時。



智樹の拳が不良の一人の腹に入った。


「えぐ・・・」



腹を押さえ、苦しんでいる不良の鼻っ面に今度は膝が飛んできた。


唖然としてそれを見ていた残りの二人の顔面にも一発ずつ拳が飛んだ。





3人の不良たちは悲鳴か泣き声かよく分からない声を上げながら、その場を去って行った。


また静かになったところで智樹の頭に一つの考えが浮かんだ。



「そういえば、この中の探検という最も面白そうなことをするのを忘れていたな」



言うが早いか智樹は歩き出していた。

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