契約者
──契約者。
世界の魔術師たちが初めてその名を使ったのは、今からちょうど二年前のことだった。
きっかけはとある魔術師見習の発言である。
「教会から魔術師が消えている」と。
はじめは皆、その言葉の意味が分からず、「また見習いのバカが訳の分からないことを口走っていやがる」くらいの反応だったが、時が経つにつれ他の魔術師たちもやがて気づき始める。
確かに、消えている。比喩ではなく、辻褄が合わないのだ。
任務のために殉職する魔術師の数、教会を追放される、または逃亡する魔術師の数。その度に教会が調整のために補充する魔術師の数。どうしても数が釣り合わない。
謎が謎を呼び、遂に噂は教会の上層部の知るところとなったが、この奇妙な事態を誰も説明できない。そのまま数か月の月日が流れ、教会七不思議にでも加えられようかという時に、ふと、誰かがこんな仮説を立てたのだ。
人の存在を全く消してしまう魔術師がいたとすれば。
もちろん、そんな魔術は存在しない。あったとしてそれは魔術ではない何かだ。
だから、何かと契約したもの。その力の突拍子のなさから、魔術師たちはその存在Xを〝契約者〟と名付けた。それが契約した何かとは、悪魔だと言う者もいれば、神だと言う者もいる。
問題は、そう名付けた途端、行方不明になっていた魔術師の存在が次から次に確認されたことだ。最終的に魔術師たちは、契約者についてこう結論付けた。
一、契約者は人をその存在ごと消すことが出来る。
二、契約者に消された人間は、それが契約者の仕業と知る者にしか認識されない。
三、そして、その存在は極東──日本にいる。




