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第4話 優しい日々

 クレールが屋敷に来てから数か月。

私の生活は、一変した。

相変わらず両親はいないことが多いけど、前より顔を合わせる機会が増えた気がする。

おかあさまは部隊司令官、おとうさまは植物学者として、あちこちを駆け回っている。

ちょっと寂しいけど、それ以上に誇らしい。


「おはようございます。リリス様!」


クレールは今日も元気いっぱいで、ニコニコしている。

屋敷の使用人たちにもすっかり馴染み、可愛がられているようだ。


「今日はどうしますか?」


「さ、んぽ」


「じゃあ、ついて行きますね!」


いまだに私の発する声はたどたどしいまま。

医師によると、たくさん話せばだんだん治って来るらしい。


 「今日はいい散歩日和!」


そう言ってクレールは伸びをする。

私が返事をしなくても、表情を変えなくても、彼女は態度を変えない。

それは、私にとって新鮮で、少し驚きだった。


「ほら、リリス!綺麗な花がいっぱい咲いてるよ!」


「くれは、どれ、すき?」


「うーん・・・全部!どれもきれいだもん。」


「そっか。」


私はクレールと友達になった。

これが、数か月で一番変わったことだろう。

2人だけの時はリリス、クレと呼び合う。

最初から、クレールは2人だけの時は敬語を使わない。

いろんなことを話すうちに、自然と距離が縮まっていった。


「おや、お嬢様とクレールちゃん。今日はお散歩かい?」


図書室にこもらなくなったことで、屋敷のいろんな人と関わるようになった。

この人は庭師のジャンさん。

おとうさまの魔法植物の管理もしている。


「そうなの!前みたいにブーケ作って!リリスの部屋に飾るの。」


「はいはい。」


そう言ってきれいに咲いている花を見繕い、手早くブーケを作った。

そして、2本のバラをクレールに手渡す。


「また来てくれ。」


そう言ってまた仕事に戻っていった。

クレールは貰ったバラを私と自身の髪に挿す。


「うん!かわいい!」


「あり、がと。くれも、かわいい。」


「えへへぇ。」


くれは頬を染め、ごまかすように「早く行こ!」といった。


 午後からは前と同じように勉強の時間。

実は、すでに基礎教養が終わっている。

今は10歳から教わる、魔法について勉強している。


 勉強が終わり、夕食と入浴を済ませた後はベッドに寝そべり、クレと話す。

勉強のこと。

仕事のこと。

これからのこと。


「アルフォンスさん、厳しいよぉ。」


「がんばれ。」


クレは、私の専属侍女として必要なことを教わっている。

敬語、読み書き、計算。

今はこれらの簡単なことを勉強しているらしい。


「リリスー。勉強教えてよぉ。」


「・・・がんばれ。」


「うぅ・・・。」


クレは勉強が苦手だ。

勉強時間の後に会うと、私でもわかるくらい疲れ切っている。

私には頑張れとしか言えない。

前、勉強を教えていた時、アルフォンスに見つかった。


「クレール?今日、そこは何度も教えましたよね・・・?リリス様も、こやつの教育は我々の仕事ですぞ。」


こんな風にお叱りを受けたので、それ以来、クレの勉強を手伝っていない。

いまだに枕に突っ伏しているクレにもう一度だけ「がんばれ。」と言って私は目を閉じた。

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