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第41話 Sクラス

 私たちは、人の流れに乗って第1校舎3階に来ていた。

階段を上り切ると、遠くに教官が立っているのが見えた。


石造りの校舎に温かい陽光が差し込んでいる。

いくつかの教室を通り過ぎ、私たちは教官が立っているところに到着した。


「こんにちは。」


優し気な若い女性。

金の髪を低い位置で束ねている。


「こんにちは!」


「こんにちはー。」


リュシエンヌとエリーヌが元気に挨拶を返し、3人は会釈をする。


「Sクラス担任のエレオノール・ロランです。5人はSクラスの生徒ですか?」


柔らかい口調でそう尋ねる。


「そうです。」


エレオノール先生が金色の鳥が描かれた扉を軽く押す。

私たちは、彼女の後について入室した。


 「それでは、この席に座ってください。」


教室にある机は10。

すでに半数が埋まっており、リリスたちで全員揃うようだった。

5人が空いている席に座ると、エレオノール先生が口を開いた。


「皆さん、ご入学おめでとうございます。このSクラス担任のエレオノール・ロランです。1年間よろしくお願いしますね。」


柔らかな笑みを浮かべ、全員と目を合わせるように話す。


「魔法学校はS、A、B、C、Dの5つのクラスに分かれています。一学年150人で、Sクラスは10人、A~Dクラスは35人ずつで構成されています。あなたたちは特筆すべき部分があった生徒たち、ということになりますね。ですが――」


彼女はそこで少し間を置く。


「私は、あなたたちを特別扱いする気は毛頭ありませんので、よろしくお願いします。」


手をパンッと叩き、全体を見渡す。


「それでは、まずは自己紹介から始めてもらいましょう――名前と得意属性。それから、何か一言あればお願いしますね。」


穏やかな声。

けれど、その金の瞳はしっかりと生徒たちに向けられていた。


「名簿順にいきましょうか。」


先生の目が最前列に向けられた。


淡いピンクベージュのツインテールがふわり揺れる。


「クロエ・ヴェルナールだよぉ。」


桃色のネクタイが揺れる。


「得意属性は光!みんなと仲良くできたらうれしいなぁ。」


少し高めの声が響く。

ニコニコと花が咲くような笑みを浮かべ、全員を見た。



 次に、ガタリと音を立てて立ち上がったのは、真っ白な髪を無造作にお団子にしている少女。

小さい。

双子よりも少し大きいくらいだった。


「アルノー・ブランだよ。得意属性は・・・ないかな。魔法が好きだよ。」


彼女は少しだけ考えるように天井へと目を向ける。


「みんなの魔法も見せてくれると嬉しいよ。」


そこで一呼吸置き、先ほどまでの穏やかな目を嘘のようにギラギラとさせてリリスとラヴィエンヌに目を向ける。


「入学式の魔法はどうやってやってるのかな!?植物の幹を凍らせて葉や炎を付与させてたよね?氷が解けている様子はないし、木も燃えてなかった!魔力の膜で覆ってるの?それとも――」


ものすごい勢いで話し始めた彼女を先生が止めた。


「アルノーさん、まだまだ自己紹介がありますから、あとでにしてください。」


アルノーは渋々といったふうに席に着いた。



 次に立ち上がったのは、マルグリットだ。


「マルグリット・デシャンです。水属性を得意としています。皆さんと協力しながら頑張っていきたいです。」


綺麗な挨拶。


「よろしくお願いします。」


彼女は丁寧に頭を下げた。


「うわ、真面目。」


どこからか、そんな声が漏れる。

それに対して、ラヴィエンヌがぼそりと「うるさい。」とこぼしていた。



 次は、私の番。

私は静かに立ち上がった。


「リリス・デュポワです。」


緑のネクタイにそっと触れる。


「緑属性が得意よ。よろしくね。」


短く言葉を終える。


それだけなのに、教室は不思議と静かだった。



 「ラヴィエンヌ・フォルヴァラン。」


黒髪を揺らしながら立ち上がる。

いつも通りの鋭い目つきで全員を一瞥した。


「氷と水属性が得意。足引っ張る奴は嫌いだから。」


「ラヴィ、怖いよぉ?」


「うるさい。」


クロエがくすくす笑った。



 「キリアン・メルシア。」


少しくすんだ金髪の少年が椅子に座ったまま片手を上げる。


「風と雷。ま、適当によろしく?」


どこか気怠げな口調だ。


「全員、趣向違ってて面白そうなんだよなぁ、このクラス。」


女子数名が、ちらりと彼を見る。

男。

それだけで、ここでは目立つのだ。


「・・・以上ですか?」


先生が首を傾げる。


「十分っしょ。」


キリアンは腕を組み、自信満々にそう言った。



 続いて、薄藤色の髪をした少女が立ち上がる。


「ミレル・ルソー。得意属性は闇と精霊。」


彼女は私とラヴィエンヌの方を、おさげを揺らして振り向いた。

細く、閉じたような目がまっすぐにこちらを見つめているように感じた。


「負けない。」


それだけ言い、彼女は席に着いた。



 彼女が座ると同時に、リュシエンヌがぴょんっと勢いをつけて立ち上がった。


「リュシエンヌ・セルヴァンだよ!火属性が得意。よろしく、よろしく!」


きらきらと目を輝かせるリュシエンヌの隣にエリーヌが並ぶ。


「妹の、エリーヌだよー。風属性が得意。よろしくー。」


エリーヌもほわほわとした口調で自己紹介をし、2人同時に椅子に飛び乗った。



 次が最後だ。

立ち上がったのは、ラヴィエンヌと同じく黒髪の少女。

長い前髪の奥から金の瞳がのぞいた。

しかし、その瞳は誰にも向けられていない。


「ノワール・ヴァレンヌ。・・・土。」


彼女は最低限のみを口にし、静かに座った。



 自己紹介を終えた面々を見渡し、エレオノール先生が笑みを浮かべる。


「楽しい一年になりそうですね。それでは、今日のホームルームはこれで終了です。大講堂に向かいましょう。」


私たちは、一斉に立ち上がったのだった。

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