第3話 買い物②
お母様を見送ってからぼんやりと人の流れを眺める。
背の高い女の人、エルフの男の人、先ほどの人と同じ軍服を着た人。
そして・・・
「おいおい。金払ってもらわなきゃ。こっちだって商売やってんだから。」
「で、でも・・・お金、ないんです・・・。」
「あぁ!?なめてんの!?」
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」
少し遠くの屋台で女の人に背の低い女の子が怒鳴られている。
女の子の服は泥だらけ、髪はぼさぼさ。
お金を持っていないのだろう。
そんな光景を見ても、私の心は動かない・・・はずだった。
私はその屋台に駆け寄り、女の人にお金を渡す。
そして、女の子の手を引き、屋台から離れた。
さっきまでいたベンチに戻ってきて、女の子を振り返る。
おどおどしている女の子を見て、自然と口を開いた。
「な、まえ。」
前に声を出してから数年。
喉から出された音はたどたどしく、かすれていた。
「あ・・・わ、わたしはクレール・モローです。あ、あの!さっきは、ありがとう・・・。」
「あら、その子は?」
その時、おかあさまとおとうさまが帰ってきた。
クレールはおびえたように体をこわばらせ、私の後ろに隠れる。
「この、こ、クレール。」
私が声を出した瞬間、おかあさまはそのまま固まり、おとうさまは口をあんぐりと開け、持っていた料理を落とした。
数秒後、2人ともボロボロと泣き崩れた。
・・・広場のど真ん中で。
クレールは屋敷で私専属の侍女として雇うことになった。
「リリスが、リリスが・・・。」
「よかった・・・。」
2人とも、この日はずっとこの調子。
屋敷のみんなも祝福してくれた。
ただ、声は出せるけど、表情はやはり変わらないまま。
「ありがとう!これから頑張る!」
クレールの満面の笑みに、私はこくりとうなずいて応えた。
その後、
「まずは、敬語を覚えましょうね?」
クレールは執事に拳骨を落とされたらしい。




