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第12話 お話

 「おかえりなさい、お母様。」


「ただいま。」


夕食が終わった少し後。

そろそろ風呂に入ろうかというときにお母様が帰ってきた。


「リリス、後で話があるから、入浴後に私の部屋に来なさい。」


私はこくりと頷き、浴室へと向かった。




 「へー、奥様に呼び出されたんだー。」


私は湯船に浸かりながら、クレにお母様のお話、について相談していた。

なんだかんだ言って、今までお母様から呼び出されたことは数回のみ。

それも、お父様がいるときだけなのだ。

しかし、今日、お父様は研究で少し遠出をしている。

私はどことなくもやもやしたものを胸にかかえていた。


「大丈夫じゃない?だって、リリスはなんにも悪い事してないんでしょ?」


こくりと頷くと、髪についた泡を流すためにザバリとお湯をかけられる。

思わず目をつぶる。

そして、目をこすりながら開くと、目の前にクレの顔があった。


「ほら、リリス、最近頑張ってたから褒めてもらえるのかもしれないよ!」


ニヤリとイタズラっぽく笑うクレを数秒眺め、お風呂の湯をパシャリとかけた。

クレは「やったなー?」と言いながら楽しげに笑う。

風呂場には暫くの間、楽しげな声が響いていた。




 髪を乾かし終え、お母様の部屋へ向かう。


クレはああ言っていたけど、なんのお話かしら。


そんなことを悶々と考えつつも歩を進める。


数分後、私はお母様の部屋の扉の前に立っていた。

ふぅ、と息を吐きだして扉を叩く。


「はい。」そんな、いつもどおりの声とともに、お母様が出てきた。

先程までお風呂に入っていたのだろう。

髪が若干湿り、頬がわずかに上気していた。


「座りなさい。」


そう言いながら、ベッドに腰掛け、隣に座るように示す。

私はそれに従って、素直に腰を下ろした。


「ねえ、リリス。あなたは将来何になりたいの?」


お母様は私の髪を撫でながら柔らかく微笑む。

私は思ってもみなかった言葉に、少し緊張が解ける。

そして、少し悩みつつも口を開いた。


「お母様みたいに強くなりたい、です。」


「なぜ?」


「昔の私みたいに、つらい思いをしている人を救いたいから。お母様とお父様みたいに。」


私のその答えに、お母様は少し不思議そうに眉を寄せる。


「べつに、軍人にならなくても・・・強くならなくても、いいんじゃない?」


「じゃあ、逆に質問させてください。お母様がもし、なんの力も持たない一般人なら、苦しんでいる人に気づけますか?そして、その人が一般人では立ち入ることのできない場所にいても、救うことができますか?」


お母様は少し思案するように腕を組み、静かに首を横に振った。


「確かに、一般人ならそうね。でも、あなたは貴族令嬢よ。孤児院を支援するなり、そういう組合を立ち上げるなりできるわ。」


「でも、それではお母様に迷惑がかかってしまいます。それは嫌です。」


間髪入れずにそう告げ、お母様を見上げた。

お母様は降参だ、とばかりに両手を上げて苦笑する。


「わかったわ。それなら応援しましょう。」


私がコクリと頷くと、お母様も頷いて笑う。


「用事はそれだけよ。おやすみなさい、リリス。」


その言葉を聞き、立ち上がって扉へと向かう。


「あぁ、いい忘れていたわ。マノンからの課題、急がなくてもいいわよ。ゆっくりと試して、探っていきなさい。」


私はお母様を振り返って頷き、今度こそ部屋を出たのだった。




 「まったく、誰に似たんだか。」


リリスが出ていった部屋にはセレストのそんな言葉が響いた。

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